第12話 それって「呪いの男の娘」ってことだよね?
「それでは、改めて自己紹介といこうか。」
ノイルの言葉にみんなが頷く。
「まずは俺から。名前はノイル。魔力属性は無能で魔力数値は0だ。魔法は全く使えないが、剣術には自信がある。実際に、模擬戦でも剣術のみで勝利し入学した。職業としては、攻撃職が向いていると思っている。よろしくな。」
ノイルに拍手が贈られ、続いてフィアが自己紹介をした。
「私はフィア。ノイルの妹です。魔力属性は全能で魔力数値は1896です。魔眼も開眼しています。攻撃魔法に自信があるので、攻撃職を希望します。どうぞ、よろしくお願いします。」
新たに加わった3人も続く。
「私の名前はリンテ。魔力属性は地で魔力数値は2883、攻撃魔法が得意よ。だから多分、攻撃職ね。あ、魔眼は開眼してないわ。よろしく。」
「僕はロスタです。魔力属性は無能で魔力数値も0です。魔眼も無いです。すみません、お役に立てそうになくて…。」
「僕はガイス。魔力属性は炎、地、闇の三能で、得意なのは防御魔法だぞっ。魔眼は開眼してないぞっ!よって、防御職を希望するぞっ!」
一通り、自己紹介が終わった。
その中で、ノイルには1つ気になる点があった。
ロスタだ。
-無能の魔力0?
とてもそうは見えないな。
真眼で見ると、ロスタの周りには確かに青色と黄色、つまり水属性と光属性の円があった。
円の大きさからして、魔力数値もかなり高いはずだ。
さらにノイルが目を凝らすと、ロスタの体内に紫色の魔力が見えた。
-何だ…これは?
「お兄様、ロスタさんをあまりじろじろ見ないでください!」
フィアがふくれっ面をして言う。
その声で、ノイルは我に返った。
「すまない。ところでロスタ。魔力属性が無能で、魔力0というのは本当か?」
「本当です…」
-嘘をついているようには見えないな。
ただ、ロスタに魔力属性があるのは事実だ。
となると、やはりこの闇属性の魔力が気になるな。
ふと、ノイルの頭に1つの考えが浮かんだ。
-試してみるか…。
「ロスタ。少し確かめたいことがある。他のみんなも、少しついてきてくれ。」
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5人は中庭にやってきた。
昼休みも終わりに近づいているため、人は5人以外にいない。
ロスタを距離のやや離れた位置に立たせると、ノイルは剣を抜いた。
「お、お兄様!?何をするつもりですか!?」
「ロスタを斬ったりはしない。安心しろ。」
そう言って、ロスタに向けて剣を構える。
フィアもあとの2人も、もちろんロスタも不安そうな顔をした。
「ロスタ、絶対にそこから動くな。」
「な、何をするの…?」
ロスタが震える声で言う。
-やはり、説明した方が良いか。
怖がられるかと思ったが、やむを得ない。
「良いかロスタ。君は決して、無能などではない。水属性と光属性の二能だ。」
ロスタが驚く。
「そ、そんな訳ないよ。」
「いや、確かだ。だが、君の体内に闇属性の魔法が埋め込まれている。おそらくは、魔力を発動させない呪いの類だろう。」
ノイルは魔法が使えないが、魔法筆記の勉強を必死にしたため知識だけは豊富だ。
呪いの魔法に関しても、しっかり学んでいた。
それで、ロスタの体内の魔法が呪いだと見抜けたのだ。
「そんな…でも、どうしてそれが分かったの?」
「そうだな。説明したいが、やや時間が足りない。昼休みが終わってしまうからな。とりあえず今は、その呪いを取り除くところまでやってしまいたい。詳しい解説は後だ。いいか?」
「う、うん…。呪いが取り除ければ、僕は魔法が使えるようになる?」
「もちろんだ。」
「分かった。ノイル君を信じるよ。」
ロスタが覚悟を決めた。
それを確認し、ノイルが改めて剣を構える。
ノイルの考えはこうだ。
魔滅剣と不斬剣の合わせ技。
これによって、ロスタを斬らずに体内の魔法だけを消滅させる。
初めての技だが、ノイルには不思議と自信があった。
「行くぞ!空滅剣!」
まず、空滅剣で一気に距離を詰める。
瞬間移動したノイルに、他の4人が目を見開いた。
「魔滅剣&不斬剣!」
ノイルの剣が、ロスタの体を確かに捉える。
ノイルは、その手に確かな手応えを感じた。
そのまま一気に剣を振り抜き、流れのまま鞘にしまった。
「お、お、お、お兄様ぁぁ!?」
突然、ロスタを斬ったノイルにフィアが目を白黒させる。
ノイルは、安心させるために言った。
「そう慌てるな。見ろ、ロスタは無事だ。そうだな?」
「うん。びっくりしたけど、僕は何ともないよ。むしろ、体が軽い気がする。」
ノイルは再び、真眼でロスタを見た。
体内の紫色が消え、体の周りには青色と黄色がより一層の溢れ出している。
成功だ。
ノイルが喜びかけたのもつかの間、チャイムが鳴った。
「まずい!遅刻だぞっ!」
ガイスが駆け出す。
4人も後を追って走り出した。
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午後の授業も、一通り学院説明だった。
明日からは、午前中が座学で午後が実践というようになるらしい。
座学では歴史や魔法理論などを学び、実践では模擬戦や魔法演習を行うそうだ。
放課後になり、ノイルたち5人は学内の図書館にやってきている。
ノイルの目の前には、大量の書物が積まれていた。
「では、お兄様。昼休みの解説をお願いします。」
フィアに促され、ノイルが解説を始める。
「さっきの一件で、ロスタの体内にあった呪いを取り除くことが出来た。これで、ロスタは無能の魔力0などではない。水と光の属性を持つ、立派な二能だ。」
ノイルは続けて、先程の合わせ技の解説と兼ねて六剣を紹介する。
ノイルは慣れすぎていて無自覚だったが、六剣のどれか一つを習得しているだけで十分すごいといえる。
全てをマスターしているノイルは、もはや人間離れしていた。
「すごいなぁ、ノイル君。そんな剣術、聞いたことないぞっ。」
「何、努力すれば誰でも出来るさ。」
「そうなのか。僕も身につけてみたいぞっ!」
ノイルの言う「努力」が396回の死を伴う「努力」であることを、ガイスは知らない。
「まぁ俺の技の話はさておき、今の問題はロスタだ。」
「どうしてよ。呪いは取り除けたんじゃないの?」
「それは確かに取り除けている。だがリンテ、君は魔力に目覚めた途端に魔法が使えたか?」
「それは、無理よね。」
「うむ。ロスタは今日魔力に目覚めたと言っていい。そこで、様々な魔法を学ばなければならない。」
ノイルの言葉に、ロスタが頷いた。
「さて、ロスタ。今から攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法と学んでいくには時間が足りない。君にあった魔法を、一つだけ極めるのが良いだろう。それが何か分かるか?」
ロスタが困った顔をする。
ノイルがヒントを与えた。
「考えてみろ。ロスタの属性は何だ?」
「それは、水と光で…あっ!」
水と光の二能というのは、二能の中でも希少な組み合わせだ。
そしてその希少な組み合わせは、ある職業の最強格になれる素質を秘めている。
「僕は治癒魔法を学べばいいんだね!?」
「その通りだ。」
治癒士の中でも、水属性の治癒士は物理的な魔法攻撃による傷に強く、光属性の治癒士は呪いなどの目に見えにくい攻撃による傷に強いと言われている。
つまり、その2つを併せ持つロスタは最強の治癒士の素質を秘めているのだ。
「ここにある本の貸し出し手続きを、既に済ませてある。この本全てを学びつつ、実践していけば最強の治癒士に近づいていけるだろう。」
そう言って、ノイルは目の前の本の山をぽんぽんと叩いた。
ロスタが早速、上の本を手に取ってめくり始める。
本から顔を上げて、ロスタが言った。
「ノイル、本当にありがとう。僕、一生懸命に勉強するよ!」
「ああ、頑張ってくれ。努力は裏切らないからな。」
ノイルの中の「努力」の基準が、396回の死であることをロスタは知らない。
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図書館から出たところで、リンテがノイルに話しかけた。
「ノイル、ちょっといい?」
「どうした?」
「相談があるのよ。」
リンテはノイルの耳元に口を近づけると、こそこそと言った。
「私、ちゃんとした魔法が使えないの。」
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