15話余話「赤い竜と老執事の戯言」
ライラとの通信を終えたアーサーは一つ、ため息をついた。
もう自分たちを追いかけるだけの少女ではない。
自分の足で自分の選んだ道を歩けるようになった。
嬉しくもあるが、寂しくもある。
「自らの誓いを果たすか。ライラは巻き込まれてしまった者たちの希望と成り得るだろうか……」
「わかりませぬが、少なくともご主人様のようにすべてを終わらせるために戦っているのではないのでしょうな」
傍に控えていたバーナードがそう答える。
それだけでも違う。
終わらせるためだけに戦っているアーサーや五人の龍機兵たちは、その果てにあるのは死のみだ。
だが、ライラは違うと感じた。
未来を掴もうとしている。
未来は生ある者にしか訪れない。
ライラは龍機兵として生きようとしているのだと、アーサーは思う。
近衛兵の件を告げたとき、ライラはこう答えた。
イギリスには戻る。
もっと強くなってから。
「私はこの地で得た友と共に前に進みます。その先に我が国の未来もあります」
そう告げたライラの瞳に、強い意志が宿っていることがアーサーには理解できた。
故郷を捨てるわけではない。
だが、異国の地で得た誓いは必ず果たさなければならないのだという。
今ではなく、未来を見据えた言葉にアーサーは何も言い返せなかった。
それがとても誇らしい。
「バトラー、私たちはライラが帰る地を是が非でも守らねばならなくなってしまったぞ」
「まったく困ったものです。死を待つばかりの老骨になお生きよと仰せられるのですから」
そう言いながらも、バーナードは笑っている。
それほど、小気味良い言葉だったのだ。
ただ、バーナードのちょっとした一言で見せた表情は、ライラが別の意味でも成長したことを教えてくれた。
「とりあえず、バンの弟分はいずれ一発殴るとしよう」
「そのときは某めもお供致しましょうぞ」
そのとき、遠い極東の島国で、諒兵がくしゃみをしたとかしないとか。




