15話「二人の少女と変わりゆく未来」
クラーケンを撃破した当日は、さすがに龍機兵たちは全員が必死に食べた後、ぐっすりと眠るはめになった。
まだ半竜体の兵士たちは個人個人で訓練をしていたが。
それはともかくとして、翌日、鈴とライラは丈太郎の執務室に呼び出された。
「たっ!」
「くっ!」
ここんっ、と頭を叩かれる二人。
もっともたいしたダメージなどないのだが、丈太郎があからさまに怒っているという表情をしているため、しゅんと気落ちしてしまう。
「命令違反の罰だ。示しがつかねぇかんな」
「実際、あの場は本当に危険だったからね。わがままがいつもいい結果を出すとは思わないでほしい」
そう、誠吾が言葉を加えてくる。
その場には丈太郎や誠吾以外にも苦笑する義隆や、呆れた表情の諒兵もいた。
「この先も俺らの仲間でいてぇなら、ちゃんと聞き分けろや。まぁ、これからぁ置いてきぼりゃぁねぇがな」
「そだっ、蛮兄っ、何で私たち真竜体になれたのっ?!」
「私が知る限り、半竜体から訓練を経てようやくなれるものであったはずだ。なれたことは嬉しいが納得がいかない」
「本題ぁその話だ。まず、ライラが知ってるのは男の龍機兵の場合になる」
通常、龍機兵になったばかりの者はたいてい身体の一部のみ変化させる半竜体となる。
期間に差はあるが、そこから訓練を経て成竜体になる。
早いものは数日、遅い者は何ヶ月もかかる。
「初っ端から伝承竜を引き寄せたヤツは早ぇみてぇだ。諒兵や井波がそのタイプだな。そうじゃねぇヤツぁ時間がかかる」
「俺がそうだ。五頭竜の力は一ヶ月くらい前にようやく手に入れた」
そう義隆が付け加えると、鈴とライラはなるほどと納得したように肯いた。
だが、いきなり成竜体になれる者はいない。
これは丈太郎や誠吾、諒兵も同じだ。
竜化の訓練を経て、成竜体へと成長するというプロセスが必要になる。
「タイプで言やぁ、おめぇら二人ゃぁ井波や諒兵と同じなんだが、その先が違う」
「先?」と、ライラ。
「はっきり言やぁ性別だ。その違いが竜の血の反応の違いになってんだ」
「そう言えば、蛮兄言ってたよね?私たち、生身の部分が残ってるって」
「それは何処になる?そこに理由があるのだろう?」
そういった鈴とライラに対し、丈太郎はどこか困ったような苦笑いを見せる。
「僕たちも聞いてませんね」
「てかよ、生身の部分残ってて平気なのか?」
と、誠吾と諒兵が疑問の声を上げる。
ただ、人生経験の違いか、どうやら義隆は察したらしく、丈太郎と同じような苦笑いを見せる。
それを見て、丈太郎はため息まじりに答えた。
「男にゃぁなくて女にゃぁある臓器だ」
「「は?」」
「はっきり言えば『子宮』、そういうことだな蛮場?」
助け舟のつもりなのか、義隆がそう告げると丈太郎は再び苦笑いを見せた。
それで思いついたのか、ライラがお腹のあたりを撫でながら呟く。
「そういえば、真竜体に化身しても胸部と腹部は変化しなかった……」
「しきゅうって、あの子宮っ?!」
さすがにそんな話が出るとは思わなかったのか、鈴の顔が真っ赤になった。
まさか保健体育の話になるとは思わなかったのである。
「正確にゃぁ子宮と卵巣だ。つまり、赤ん坊作って育てる場所だぁな」
「それは、確かに男にはありませんね」
と、誠吾も苦笑していた。
諒兵はというと、恥ずかしいのかそっぽを向いてしまっている。
「これがあんとき『希望』って言った理由だ」
「あ、あの……赤ちゃん作るところが残ってることがなの?」
知らないわけにはいかないため、必死に質問する鈴だが、生々しい上に恋愛にも絡んでくる場所でもあるため、既に真っ赤っ赤であったりする。
実はライラもかなり赤い。
微笑ましいというか、初々しいことこのうえない。
そんな二人に苦笑いしつつ、丈太郎は肯いた。
「おめぇらぁな、普通に一般人と結婚してもちゃんと子どもが産めるんだ。生まれてくるのは普通の人間の子だ」
「龍機兵になったことの影響はないのかドクター?」
「子宮と卵巣に関しちゃぁねぇみてぇだ。それどころか竜の血が人間だったころの機能を維持してやがる。だから、人間の臓器のままなんだよ」
つまり、丈太郎が言いたいのは、鈴とライラは龍機兵になった今でも戻ろうと思えば平穏な日常に戻れるということだ。
無論、食事量などの影響はあるが、恋愛や結婚に関しては今までどおりにすることができる。
「そうすると、以前僕たちが聞いた話は、この子たちには当てはまらないということなんですね?」
「まぁな」
「なんですか、それ?」と鈴が誠吾に尋ねると、少し困ったような表情を見せる。
仕方がないので再び義隆がフォローに入った。
「俺たち男の龍機兵は、子どもに影響が出る。龍機兵の子は龍機兵になるんだ」
其処こそが、男と女の最大の違いだった。
女の龍機兵の場合、子どもは男の状態に依存する。
一般人ならば普通の子。
龍機兵ならば龍機兵となる。
しかし、男の龍機兵の場合、女と関係した場合、相手が一般人でも、その子どもは必ず龍機兵となる。
龍機兵ならばいい。竜になってしまう可能性もあるということだ。
丈太郎たち五人の龍機兵にとって、それが一番の悩みだった。
死を覚悟していた自分たちはいい。
しかし、巻き込まれてしまった者たちが愛した女と関係した場合、その子どもまで巻き込む。
だから死を覚悟し、後の人生まで考えない者を丈太郎は集めていた。
これに関してはアーサーを含めた他の四人も同じだった。
「俺たちゃぁ、竜を増やす可能性があんだよ。だから結婚や子育てなんざ考えちゃぁいなかった」
「それは龍機兵になるときに言われるんだ」と、誠吾。
「だからなライラ、アーサーもバーナードも丸薬渡すときは相当悩んだっつってたぞ。おめぇにこんな重荷背負わせたくねぇってな」
「すみません……」
「俺に謝ってもしゃぁねぇよ。それにだ、この話ぃ伝えたらえらく喜んでたしな」
「あっ……」
自分のわがままに答えるかたちで丸薬を分けてくれた兄アーサーやバーナードに申し訳ないと思うライラだったが、今の話で喜んでくれていると聞いてホッとする。
自分の将来のことを真剣に考えてくれていたからこそ、彼らは深く悩み心から喜んでくれた。
今のライラには、そのことがよく理解できた。
「んで、今の話から、さらに真竜体になれたのは何でかって話だが、その子宮、生身の部分からおめぇらぁ竜の血を支配してんだよ」
「えぇっ?!」
「支配っ?!」
「だから初っ端からかなり真竜体に近かったんだよ」
最初の覚醒時から、女である鈴とライラは限りなく真竜体に近かった。
そして身体に残っている子宮を通じて竜の血に命令を下すことができたのだ。
ゆえに、男が真竜体まで成長するよりも、早く、さらに言えば確実に真竜体になれる。
「男ぁな、竜の本能が闘争本能に直結するせぇか戦ってるだけでも竜になるリスクがたけぇ。だが女のおめぇらは母性本能につながるみてぇだな。飢餓状態になるリスクぁ俺たち同様にあるが、戦ってるだけなら竜の本能に意識を呑まれる可能性は少ねぇぞ」
それは、鈴とライラが龍機兵の部隊の要になれる力を持つという意味でもある。
丈太郎を含めた五人の龍機兵でも、戦闘が続けば意識を呑まれる可能性がある。
また、現時点で一番、竜の本能に呑まれる可能性が高い龍機兵は他でもない。
「俺か」
「あぁ。おめぇの場合、怒りって感情に直結してっかんな。戦ってて熱くなったり、完全にブチ切れたら『赤の竜』が顕現する」
諒兵が納得したように呟くと、丈太郎はそう答えた。
話が逸れたが、周りの龍機兵が意識を呑まれそうなときでも、正常な意識を保てるのが鈴とライラという女の龍機兵なのだ。
その存在は大きい。
無論のこと、増やしたいとは思わないが、何らかの事故などで増えた場合、龍機兵たちの要として保護する必要性が出てきたのである。
「人として生きられる可能性を残しつつ、俺たち龍機兵の要にもなれる。神様ぁ不公平だなぁ」
そう言って笑う丈太郎に対し、鈴とライラは逆に困った笑みを返した。
「ま、そうは言っても、簡単に強くなれるわけじゃぁねぇ。そこはわかってんな?」
「へ?」
「リン、真竜体になって能力は上昇したが、私たちは戦術知識や経験が足りないんだ」
さすがにライラはちゃんと勉強してきただけあって、丈太郎の言葉を理解していた。
笑いながら肯いた丈太郎はライラの言葉を補足する。
「つまりだ、力ぁ使いこなせちゃぁいねぇんだよ」
「慣れてないってこと?」
「そうだ。真竜体になれるっつっても、今のまんまじゃぁエネルギー消費するだけだ」
「まずは半竜体や成竜体の状態で使える能力を使いこなせるようになるべきだな」
義隆の言葉に、誠吾や諒兵も肯く。
鈴とライラを比べると、この点ではライラに軍配が上がる。
二ヶ月訓練を重ねてきただけあって、創り上げたピストルはかなりの効果を持つ上に射撃能力も高い。
さらに、体術もそれなりのものがある。
だが実戦経験が足りず、とっさの場合の対応能力が低い。
鈴の場合、策敵能力は高く、情報伝達能力も高いので、後方支援型としては十分な実力はある。
しかし、肝心の戦闘力が低い。
単体でブレス攻撃ができる独立機動兵器のようなドラゴン・フェイスを持ちながら、敵に当てる技術がほとんどないのだ。
対して、同い年の諒兵は、とにかく実戦を繰り返してきただけあって戦場での勘働きが良く、とっさの場合の対応力も高い。
以前、古竜五十匹を半竜体で倒している諒兵は、非常に戦い慣れしているのだ。
「日野君だけじゃない。僕や春馬さんも半竜体で古竜四、五十匹くらいは倒せるよ」
無論のこと、丈太郎は言うまでもないレベルだ。
何が違うのかと言えば、経験になる。
そして経験で得た物で一番大事なのは、効率的な戦い方だ。
「おめぇらより、俺らのほうがスタミナがあるってこった。力ぁ無駄遣いすっとすぐに腹ぁ減るかんな」
「つまり、戦えなくなるということですね?」
と、ライラが答えると丈太郎は肯いた。
「おめぇらぁ真竜体まで近道できた。だがな、その分、経験が少ねぇ。能力を過信するとやられるぞ」
「それって、今までより抑えた状態で経験を積めってこと?」
「そういうこった。鈴なら遠距離からドラゴン・フェイスを駆使して戦う。ライラぁレイピアだけで古竜を倒せるようになるのを目標にすんのもいいだろうよ」
制限がある中で工夫することを覚えれば、より強くなる。
今の二人に必要なのは、手に入れた大きな力を振り回すことではなく、必要十分な量の力で戦えるようになる訓練なのだと丈太郎は説明する。
「その点で言えば、むしろ真竜体になれるのはマイナスだな。たいていの敵は簡単に倒せてしまう」
「俺なんか一ヶ月くれえは右腕と両脚だけで戦ってたぜ。人間の姿だと古竜相手でも気い抜くとヤベえからな」
義隆の感想に諒兵がそう愚痴るが、そういった経験がエネルギーの無駄遣いをしなくなるために考える力になっているのだ。
とはいえ、釘を刺し、更なる成長を見込んでの言葉なので、厳しい指導というわけでもないと丈太郎は苦笑する。
「すぐにそうしろってわけじゃぁねぇ。二人ともよく考えな」
「はーい」
「了解した」
「それとライラ」
「何でしょうドクター?」
「今のおめぇならドラゴン・ナイツでもやっていける。アーサーから伝言だ。イギリスでおめぇに合った役目ができるみてぇだぞ」
「えっ……」
突然すぎる話に、ライラは言葉を失ってしまった。
どう答えればいいのだろう。
そう思っていると、丈太郎は気にせず続けてきた。
「返事ぁ自分でやれ。アーサーと通信がつながってる。俺らぁ席外すから久しぶりに兄妹水入らずで話ぃすんだな」
そういうと、丈太郎は他の者たちを急きたてて、執務室から出て行ってしまった。
そのモニターの一つが起動する。
そこに映ったのは、今は懐かしさを感じる、厳しくも優しい兄の姿。
[久しいなライラ。バンから色々と話を聞いている]
「お久しぶりです、兄様……」
今、自分はどんな顔をしているのだろう。
ライラはそんなことを考えていた。
丈太郎はラボに、誠吾と義隆はそれぞれ自室に。
そんな中、鈴は諒兵と共に食堂にいた。
部屋に戻ってすることがあるわけではないし、何よりライラのことが気になるからだ。
「ライラ、イギリス帰っちゃうのかな……」
「故郷に帰るのはおかしなことじゃねえだろ」
「でも、せっかく友だちになれたのに……」
実のところ、友だちだけではなく、諒兵を巡るライバルになってしまったことを理解している鈴だが、ライラのことを嫌いにはなれない。
まっすぐに、真剣に見つめてきたライラが本気だと理解できたからだ。
負けたくない。
そう思えるライバルの存在は、お互いを高める上で大切なものである。
もっとも、目の前の鈍感少年はそんなことには気づいていないが。
「帰る場所があるのは、幸せなことだと思うぜ?」
「そりゃ、いつかは帰る必要があると思うけど、私と同じ女の子の龍機兵ってライラだけなんだもん。もう少しこっちにいてほしいなって思うのよ」
女友だちという点では、鈴にとってライラは希少価値のある存在だ。
逆もまた然り。
イギリスに帰ったとすると、ライラは独りぼっちになる。
アーサーやバーナードといった身内はいるが、同年代の友人はいない。
だが、この点に関しては鈴やライラ、そして諒兵が例外であって、今後増やす予定はないと丈太郎は断言している。
これは他の国でも同様で、基本的に成人した人間でなければ龍機兵にさせる気はないらしい。
「だからさ、もうちょっと一緒に遊んだりしたいなって……」
そう呟く鈴を見ながら、諒兵はため息をつく。
鈴にしてもライラにしても、なりたくて龍機兵になった。
ただ、根本的には普通の女の子なのだ。
諒兵は龍機兵になってからは戦うことが半ば趣味にもなっている。
だから、同年代の友人がいなくてもそれほど気にはならない。
しかし、鈴やライラは龍機兵になった今も普通の部分が無くならない。
それは先ほど丈太郎が説明したことにも絡むことなのだろうと思う。
案外、丈太郎を含めた五人の龍機兵が、龍機兵になる資格を男に限定したのはここに理由があるからなのかもしれないと諒兵は考える。
根本的な部分で女は竜と戦い続ける龍機兵には向いていないのではないか、と。
そんな鈴やライラが心配ではあるのだが、結局答えを出すのは本人たちだ。
何を言ったところでどうしようもない。
ライラがイギリスに帰るというのなら、寂しくても送り出せばいいことだ。
「答えを出すのはバンブリッジだろ。イギリスに家族がいるんだし。帰ることにしたらちゃんと送り出してやれよ」
「いい加減、名前で呼んでくれないかリョウヘイ?」
諒兵の言葉に答えたのは鈴ではなかった。
振り向けば、ライラが苦笑いしている。
「ライラっ、お話終わったの?」
「ああ。久しぶりに兄様とゆっくり話すことができた。ドクターにはもう礼を言ってある」
「それで……」と、鈴は言いよどむ。
ライラが帰るのかどうかが気になるのだが、正直、あまり話題にしたくないのだ。
とはいえ、ライラもキチンと説明するつもりらしく椅子に座る。
「兄様から聞いたのだが、イギリスで私を王室直属の近衛兵にしようという話が出ているそうだ」
「近衛兵……」
「何だそりゃ?」
「わかりやすく言えば要人警護の任務になるか」
王室直属となるとだいぶ話は違うが、ポイントとしてはそれほどズレていないだろう。
この時代でもイギリス王室は残っている。
日本でも天皇家があり、現在は内地にその皇居を構えている。
それぞれ政治等に絡んでくるわけではないが、失いがたい存在ということなのだろう。
それはともかく、ライラがイギリス王室の近衛兵になるという話は、鈴同様に外見の変化が小さいことが上げられる。
さらに、今回、人として女として一般人の中で生きても軋轢が小さいことがわかったためだ。
「言い出した本人は、内心では自分を竜から警護させたかったらしいがな」とライラは苦笑する。
王族ではなく、その周りの人間であり、実際には政治がらみで呼ばれそうだったらしい。
だが、周囲を納得させることができず、王室直属というかたちになったそうだ。
とはいえ。
「王室直属となると、イギリスでも重要な任務だ。名誉なことだと言える。私の家はもともと古くからの貴族であり騎士の家系だからな」
その点から見れば、今回の件、断るどころか、ありがたく拝命すべきものでもある。
つまり、イギリスに戻ってその職務に就くのが、ライラにとっても、バンブリッジ家にとっても正しい選択になるのだろう。
しかし、鈴は複雑そうな表情を見せた。
戻ってほしくないと思うけれども、ライラにとっていいことであるのならば反対するのも憚られる。
「じゃあ、ライラはイギリスに帰るの?」
「ああ。今回の件、私に断る理由はない。仕度をしてイギリスに戻ることになる」
ハッキリとそう言われると鈴としてはショックだ。
諒兵はというと、ため息をついている。
いろいろあったが、王室直属となれば滅多に前線には出ないだろう。
鈴を守るだけでも手一杯なのに、ライラまで近くにいられたら安心して前線に出られないのだ。
そういう意味では安心できる結末だ、と思っていた。
「……三年後に」
「へっ?」
「あ?」
続けてきた言葉に、鈴も諒兵もマヌケな顔を晒してしまう。
対してライラはしてやったりとでも言いたいのか、クスクスと笑っていた。
「年齢制限に引っかかったんだ。任務に就くとしても二十歳以上。私はもうすぐ十六歳になる年齢だ。だからまず日本で戦闘訓練を続け、十九歳になったらイギリスに戻って近衛兵としての訓練をすることになった」
「もーっ、冗談きついよーっ!」
「すまない。でも嘘は言っていないぞ♪」
言葉は怒っていても嬉しそうな鈴。
軽口が言えるほど、気を楽にしている様子のライラ。
それが、納まるところに納まったように見えて、諒兵は苦笑いしてしまう。
「それとリョウヘイ」
「何だバンブリッジ?」
「本当にいい加減、名前で呼んでくれ。あと、お前に言っておきたいことがあるんだ」
それが随分と真剣な表情での言葉だったので、諒兵も居住まいを正す。
すると真剣な眼差しでライラが自分を見つめていることに気づいた。
「私はお前が魔王と化したときは、私の手でお前を倒すと誓った」
「構わねえよ。むしろそうなったときは容赦すんな」
「だから、そうなるな。リンや私がいる限り」
真剣な眼差しを向けてくるライラ。
ライラの言葉に共感しているのか、同様の眼差しを向けてくる鈴。
どうやら心配されているらしいと諒兵は気づく。
ゆえに、苦笑いしながら口を開いた。
「わかったよライラ。鈴もそんなマジな顔すんな」
そう答えた諒兵に対し、二人の少女は花咲くような綺麗な笑顔を見せたのだった。




