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第4話 触角レーダー便利すぎ問題

第4話です!


海辺でのスローライフを満喫中の伊織。

しかし、本人が便利な漁具くらいにしか思っていない触角には、とんでもない能力が隠されていました。


魚探知、危険察知、天候予測。

どう考えても便利すぎる能力なのですが、本人は相変わらず魚を獲ることしか考えていません。


そんな伊織の日常をお楽しみください!


それでは、第4話「触角レーダー便利すぎ問題」どうぞ!

 異世界生活四日目。

 私は重大な事実に気付いていた。

「この触角、便利すぎない?」

 頭の上から伸びる二本の赤い触角をつまみながら呟く。

 最初は邪魔な飾りだと思っていた。

 見た目も目立つし、村人には怖がられるし、正直メリットよりデメリットの方が大きいと思っていた。

 だが数日生活してみて考えが変わった。

 これはすごい。

 本当にすごい。

 まず魚の位置が分かる。

 海へ入ると、なぜか魚がどこにいるのか感覚的に理解できる。

 見えなくても分かる。

 岩陰に隠れていても分かる。

 少し離れた場所にいても分かる。

「そこ!」

 私は海へ手を突っ込む。

 ばしゃっ。

 銀色の魚が飛び出した。

「また捕れた」

 今日だけで十五匹目である。

 もはや漁師顔負けだった。

「これ商売できるんじゃないかな」

 そんなことを考えながら魚を並べる。

 もし村に歓迎されていたら、今頃人気漁師になれていたかもしれない。

 残念ながら村人は私を見ると逃げる。

 世の中うまくいかないものである。

 私は洞窟へ戻った。

 現在のマイホームである。

 相変わらず家具はない。

 ベッドもない。

 あるのは魚だけだ。

「魚率高いなぁ」

 自分でもそう思う。

 しかし食料問題が解決しているのは大きかった。

 その時。

 触角がぴくりと動いた。

「ん?」

 私は空を見上げる。

 青空だった。

 雲も少ない。

 だが触角が妙な反応をしている。

 しばらくすると。

 遠くの海に黒い雲が見えた。

「え?」

 さらに数十分後。

 雨が降り始めた。

 ざあああああっ。

「本当に?」

 私は目を丸くした。

 偶然ではない。

 明らかに触角が先に反応していた。

「天気予報まで付いてるの?」

 高性能すぎる。

 しかも無料。

 異世界の神様は何を考えているのだろう。

 私は雨宿りしながら空を見上げた。

「便利だなぁ」

 それしか感想が出てこない。

 翌日。

 私は新たな能力を発見した。

 森の近くを歩いていた時だった。

 触角が突然ぶるぶる震え始めたのである。

「どうしたの?」

 直後。

 茂みから大きなイノシシのような魔物が飛び出した。

 体長二メートルほど。

 牙も大きい。

 普通なら大慌てする場面だった。

 だが私は既に反応していた。

 触角が警告していたからだ。

「危ない!」

 横へ飛ぶ。

 魔物の突進が空振りした。

「えっ」

 今の私すごくない?

 自分で驚く。

 その後も触角は危険な方向を教えてくれる。

 おかげで私は逃げ切ることができた。

 魔物はしばらく暴れていたが、やがて森の奥へ消えていった。

 私はその場へへたり込む。

「危なかった……」

 心臓がどきどきしている。

 しかし冷静に考える。

「危険察知もできるの?」

 魚探知。

 天候予測。

 危険察知。

 触角レーダーが万能すぎた。

「私、実は当たり転生だった?」

 少しだけ嬉しくなる。

 異世界チートというやつかもしれない。

 だが次の瞬間。

「でも村人には怖がられるんだよなぁ」

 現実を思い出した。

 便利な能力と引き換えに風評被害がひどい。

 人生とは難しい。

 その頃。

 アクア村では会議が開かれていた。

「やはり危険です」

 ミーナが報告する。

「邪神の王族は天候を操っています」

「なんだと!?」

 村長が立ち上がる。

「昨日の雨です!」

「まさか……」

「さらに巨大な魔獣まで退けました!」

 村人たちが震え始めた。

「恐ろしい」

「海も天候も支配しているのか」

「世界が終わる」

 完全な誤解だった。

 実際には触角で察知しただけである。

 一方その頃。

 私は海辺でのんびりしていた。

「平和だなぁ」

 昼寝までしている。

 世界を終わらせる予定はない。

 むしろ静かに暮らしたい。

 その時だった。

 触角が今までにないほど激しく反応した。

 びくびくびくっ。

「なにこれ!?」

 私は飛び起きる。

 危険反応ではない。

 魚だ。

 とんでもなく大きな魚がいる。

 そんな感覚だった。

「気になる」

 私は海へ向かった。

 岩場を越える。

 浅瀬を進む。

 すると少し沖合で巨大な影が動いていた。

「でっか!」

 思わず叫ぶ。

 普通の魚ではない。

 船くらい大きい。

 いや、そこまではないかもしれない。

 でも大きい。

 とにかく大きい。

 触角はその位置を正確に示していた。

「捕まえられるかな」

 私は近くに落ちていた丈夫な蔓を拾った。

 先端に尖った枝を結び付ける。

 即席の銛だ。

 数分後。

 私は岩場の上に立っていた。

 巨大魚が近付く。

 触角が教えてくれる。

 右。

 少し左。

 今だ。

「えいっ!」

 全力で投げた。

 次の瞬間。

 どごんっ!

 海面が爆発した。

「うわっ!?」

 巨大魚が暴れ始める。

 波が上がる。

 岩が揺れる。

 私は必死に蔓を握った。

「待って待って待って!」

 引っ張られる。

 ものすごく引っ張られる。

 十分ほど格闘した末。

 ついに巨大魚は力尽きた。

 私は砂浜へ倒れ込む。

「勝った……」

 目の前には巨大な魚。

 人生で見たことがないサイズだった。

 夕飯どころではない。

 一か月分くらいありそうだ。

「食べ切れないよ……」

 喜ぶべきか困るべきか分からない。

 しかし触角は満足そうに静かになっていた。

 その頃。

 遠く離れたアクア村では、巨大魚が暴れる様子を見ていた漁師たちが震えていた。

「見たか……」

「ああ……」

「海竜を一人で仕留めた……」

 誰かが呟く。

「やはり邪神の王族だ……」

 こうして伊織の評判は、本人の知らないところでさらに悪化していくのだった。


第4話を読んでいただきありがとうございます!


触角レーダーの性能が少しずつ明らかになってきました。

普通なら冒険者や軍隊が欲しがりそうな能力ですが、伊織の使い道はほぼ漁業です。


そして最後には巨大魚との遭遇。

本人は夕飯を確保しただけのつもりですが、周囲から見れば十分に伝説級の出来事だったりします。


次回は第5話「人魚姫ルナ」。

ついに本作初の主要ヒロイン(?)が登場します。

そして伊織の勘違い伝説もさらに加速していきます。


面白かったらフォローや★評価、応援コメントをいただけると嬉しいです!

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