第24話 転生者会議
いつもお読みいただきありがとうございます!
前回は商人転生者・橘大輔が登場しました。
勇者、賢者、商人、そして海老。
気付けば転生者が四人も集まり、海辺は少しずつ騒がしくなってきています。
そして今回は、そんな転生者たちによる初めての会議が開催されます。
世界を救いたい勇者。
世界を進歩させたい賢者。
世界を動かしたい商人。
一方その頃、伊織は――。
第24話「転生者会議」、どうぞお楽しみください!
「転生者会議を開きます」
橘大輔がそう宣言したのは、翌日の朝だった。
私は布団の中にいた。
起きたくなかった。
嫌な予感しかしなかったからである。
「海王様!」
「伊織ちゃん!」
「海王様!」
「海老崎さん!」
外がうるさい。
勇者。
賢者。
人魚姫。
商人。
最近の私の周囲は騒音源が多すぎる。
私は布団を頭から被った。
現実逃避である。
しかし。
どんどんどん!
「海王様!」
どんどんどん!
「会議です!」
どんどんどん!
「出てきてください!」
どんどんどん!
「触角測定もします!」
「しない!」
私は飛び起きた。
アリサだけ目的がおかしい。
結局。
私は引きずり出された。
場所は温泉街の会議室。
いつの間にか建設されていた建物だ。
なぜあるのか知らない。
知りたくもない。
部屋の中央には大きな円卓。
その周囲に転生者たちが座っている。
勇者、神代和也。
賢者、九条アリサ。
商人、橘大輔。
そして私。
なぜか上座だった。
嫌だった。
「それでは始めましょう」
大輔が進行を始める。
完全に会社の会議だった。
前世を思い出す。
帰りたい。
「まず自己紹介から」
「神代和也です!」
勇者が立ち上がる。
元気だった。
「目標は魔王討伐です!」
おお。
勇者っぽい。
非常に勇者っぽい。
「世界平和のために戦います!」
拍手。
なぜかルナが拍手している。
会議参加者じゃないのに。
続いて。
アリサが立ち上がった。
「九条アリサです」
眼鏡を押し上げる。
「目標は魔法革命です」
おお。
賢者っぽい。
非常に賢者っぽい。
「全魔法体系の再構築を行います」
「規模でかくない?」
私は思わず言った。
アリサは真顔だった。
本気らしい。
怖い。
次に大輔が立ち上がる。
「橘大輔です」
商人らしい笑顔。
「目標は経済支配です」
「隠さなくなった」
私が呟く。
大輔は気にしない。
「物流、流通、商業、金融」
「金融あるんだ」
「全部押さえます」
本気だった。
この人も怖い。
そして。
全員の視線が私に向いた。
嫌だった。
非常に嫌だった。
「海王様!」
「海王様!」
「海王様!」
「海老崎さん」
最後だけまともだった。
私は立ち上がる。
面倒だった。
本当に面倒だった。
「海老崎伊織です」
「はい!」
和也がメモを取る。
やめてほしい。
「目標は」
全員が注目する。
私は答えた。
「昼寝」
沈黙。
数秒。
そして。
「深い……」
和也が震えた。
「深くない」
「さすが海王様」
「違う」
アリサまで頷いている。
「究極の精神安定」
「違う」
大輔も感心している。
「働かずに生活する理想形」
「違う」
誰も分かってくれなかった。
私は本当に昼寝したいだけなのに。
会議は続く。
和也が地図を広げた。
「魔王軍の勢力図です!」
勇者らしい。
実に勇者らしい。
「この辺を制圧して」
「しなくていい」
「魔王城へ攻め込みます!」
「がんばって」
他人事だった。
するとアリサが割り込む。
「非効率です」
「なんだと!?」
「戦争より研究です」
地図を広げる。
今度は魔法陣だ。
「魔法理論を統一すれば文明が飛躍します」
「なるほど」
私は少し感心した。
しかし。
大輔が笑う。
「研究だけでは世界は回りません」
今度は商業地図だ。
「物流です」
「おぉ」
「市場です」
「ほぉ」
「利益です」
「うん」
話が一番分かりやすかった。
商人だからだろう。
三人は熱弁を始めた。
「魔王討伐!」
「魔法革命!」
「経済支配!」
会議室が騒がしい。
私は眠くなった。
ぽかぽかしている。
昼だ。
眠い。
非常に眠い。
気付けば。
私は机に突っ伏していた。
うとうと。
うとうと。
最高だった。
その時。
「海王様!」
和也が叫ぶ。
私は目を開けた。
「なに?」
「ご意見を!」
「昼寝したい」
沈黙。
そして。
三人が感動した。
なぜ。
「なるほど!」
和也が立ち上がる。
「争いのない平和な世界!」
「違う」
アリサも頷く。
「研究に没頭できる世界」
「違う」
大輔も感動している。
「働かなくても豊かに暮らせる社会」
「違う」
違わない部分もあるけど違う。
私は頭を抱えた。
その後も会議は続いた。
魔王軍。
古代文明。
転生者。
世界情勢。
色々な話が出た。
私は半分寝ていた。
すると。
アリサが突然真顔になる。
「ところで」
嫌な予感。
「転生者は現在四人確認されています」
「そうだね」
「ですが」
空気が変わった。
「他にもいる可能性があります」
大輔が頷く。
「私もそう思います」
和也も真面目な顔になる。
「各地で噂がある」
私は少しだけ興味を持った。
「どんな?」
大輔が資料を出す。
「空飛ぶ商会」
アリサが続く。
「禁忌魔法を使う少女」
和也が続く。
「一人で軍を壊滅させた男」
どれも転生者っぽかった。
嫌な予感がする。
本当に嫌な予感がする。
そして。
大輔が言った。
「近いうちに全員集めましょう」
「やめよう?」
私は即答した。
しかし誰も聞いていない。
和也は燃えている。
アリサは研究したそうだ。
大輔は事業化したそうだ。
私は帰りたかった。
その時。
会議室の外が騒がしくなった。
誰かが走ってくる。
扉が開いた。
飛び込んできたのは商会の使者だった。
「会長!」
大輔が振り向く。
「どうしました?」
使者は息を切らしていた。
そして叫ぶ。
「新たな転生者らしき人物が発見されました!」
会議室が静まり返る。
全員の視線が集まる。
私は嫌な予感しかしなかった。
どうやら。
転生者会議はまだ始まったばかりらしい。
第24話をお読みいただきありがとうございました!
今回は第三部の中心人物たちが一堂に会する「転生者会議」でした。
勇者の和也は魔王討伐。
賢者のアリサは魔法革命。
商人の大輔は経済支配。
それぞれが大きな夢や目標を持ち、この世界をより良くしようと活動しています。
そんな中で伊織だけが「昼寝」と答えるのは、この作品らしいところかもしれません。
本人は本気なのですが、周囲が勝手に深読みしてしまうのもいつもの流れです。
また、今回から「転生者同盟」という新しい組織も誕生しました。
もちろん伊織本人の意思はほとんど反映されていません。
そしてラストでは、新たな転生者らしき存在の情報も登場。
まだまだ世界には、伊織たち以外の転生者がいるようです。
次回、第25話「伊織だけやる気ゼロ」。
野望に燃える転生者たちと、ひたすらスローライフを目指す伊織との温度差をお楽しみください!
引き続きよろしくお願いいたします!




