表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神野雹吾は魔王の息子  作者: 平野十一郎
プロローグ いざ、異世界へ!
5/30

第五話 校長と担任と伝説の聖剣

 大蛇学園入学式、開幕。


 雹吾の右隣には、ルナが座っている。

 サイクロプスのヒカルが、ルナのために雹吾の隣の席を譲ってくれたのだ。

 当のヒカルはと言うと、少し離れた席に移動していた。

 彼の美しさの(とりこ)になった、一つ目の女子たちと一緒に。


 ルナは雹吾と同じ、一年三組だった。


 一年生は、一組から五組まである。

 そのド真ん中で、雹吾はルナに、愛の告白をぶちかましてしまったのだ。

 恥ずかしさのあまり、まだ顔が熱い雹吾であった。


 なお、ルナの護衛のヘイムダルたちや、他の生徒の護衛は、体育館の入口付近に陣取っている。

 ルナ以外にも、要人の子女は多い。

 自宅から通学すると、その途中で誘拐などの事件に会う可能性が高くなるため、金銭に余裕がある家庭の生徒も、寮ぐらしをあえて選んでいることも少なくないのだ。

 ルナもまた、寮で生活をしていることを、雹吾は教えてもらった。


 その時、館内アナウンスが流れる。


「これより、私立大蛇(おろち)学園、入学式を始めます。

 まず最初に、この大蛇(おろち)市の市長でもある、校長・八岐大蛇(やまたのおろち)先生からの挨拶です」


 すると、体育館の舞台に降りていた幕が上がり、巨大な八つ首の大蛇が、姿を現した。

 その大蛇、ヤマタノオロチ先生は、八つの首すべてに、蝶ネクタイを着けている。

 八つの首のうち、ひとつが、舞台に設置されたマイクに向かって喋りだす。


「みなさん、入学おめでとうございます。

 あまり話が長くなるのもよくないので、手短にいきましょう。

 我が校のモットーは『長所をひたすら伸ばせ。短所は気にするな』です。

 自分の得意なこと。

 そして、自分の好きなこと。

 それを、何よりも大切にしてください」


 ヤマタノオロチ先生は、別の首にマイクを渡す。


「また、学園生活を、思い切り楽しんで頂きたい。

 それは、いずれ社会に出たときに、人生そのものを楽しむことにも繋がるはずです。

 君たちは、これから少しずつ大人になっていきます。

 学生の本分は勉強ですが、これは自立した大人になる準備であるということ。

 しかし、それは学生の本分のうちのひとつに過ぎません。

 私が言いたいことはこれです。

 よく学び、よく遊び、いい恋愛をしてください。

 すべてが、君たちのかけがえのない財産となるでしょう。

 以上」


 校長ヤマタノオロチ先生はそれだけ言うと、体育館の新一年生を見渡し、微笑みながら舞台端へと去って行く。


 そして、校長と入れ替わりに、一人のファンキーな老婆が壇上へ立った。


 彼女の逆立った白髪は、毛先だけ紫に染められている。

 サングラスに、大きな鼻ピアス。

 着ている麻の着物の胸元には、大きく『BBA』と書かれていた。


 老婆の教師は、マイクスタンドを握り、ロック歌手のようにマイクに向かって叫んだ。


「オラァ!ひよっこども!アタシは『戦闘』の科目の教師、傾国(けいこく)清姫(きよひめ)だ!

 校長からの夢のある話の後で、リアルな話をして悪いが、アタシからは、無事に()()()()()ために必要な事を伝達させてもらうよ!

 特に、グリーン出身じゃない奴は、耳の穴かっぽじって、よーく聞きな!

 この大蛇(おろち)市は、お世辞にも治安がいいとは言えねえ!

 まあ、人が多く集まる所には、悪人も多く集まる運命だ。こいつばかりは仕方ねえけどな。

 まず、昼間でも人気(ひとけ)のない場所には行かない事!

 特に女は、ひとりでは出歩かない事!

 また、集団だろうが、夜の外出なんざ自殺行為だ。絶対にすんな!

 寮で暮らす奴らは、滅多に学校の敷地外には行かないとは思うが、油断するとヤベェ犯罪に巻き込まれるぞ。

 何かあったら、即、教師を頼りな!

 以上!質問は、いつでも受け付けるよ!

 知りたいことがあれば、職員室に来やがれ!」


 傾国(けいこく)先生は、マイクスタンドを乱暴に戻すと、そのまま舞台裏へと去って行く。


 この大蛇学園には『戦闘』の科目がある。

 犯罪者や、自然発生するダンジョン、そして人を襲う野生動物(モンスター)などから、身を守るためだ。


 雹吾の故郷のブルーでは、ダンジョンも無ければ、治安もいい。

 野生動物に関しては、熊や猪などの襲撃による死亡事故がまれに起きるが、その程度。

 しかし、このグリーンでは違う。

 都市部の周りの山林からは、獰猛な獣が姿を現す。

 また、犯罪者も異能力を使う危険人物ばかり。

 魔王である父からは聞いてはいたが、自分の身は自分で守らねばならないのだ。


 とは言えど、物騒な話は全て、この大蛇学園の外で起きている事。

 大蛇学園の敷地内では寮を含め、監視カメラがあらゆる場所についており、何かがあれば、戦闘系の教師やガードマンたちが集結する。

 寮生活の雹吾たちには、あまり関係のない話であった。

 気を付けるとしたら、ルナや友人と街中に遊びに行くときくらいか。




 その後は、カピバラの顔をした教頭先生から、これと言って特徴のない話を聞かされた後、入学式は閉幕となった。


 その後は、各クラスごとに担任の教師について、教室に戻る。

 雹吾もルナや友人たちと一緒に、教室へと足を向ける。


 そして、なんと一年三組の担任は、あのファンキーな老婆の傾国先生が担任であった。

 傾国先生は、ぞろぞろと体育館から出ていく三組のメンバーを見渡し語る。


「ああ、そうそう。この学校の地下一階には、選ばれし者しか抜けないという伝説の、岩に刺さった聖剣がある。

 誰でもチャレンジOKだから、興味があったら頑張って抜いてみな!

 あと、地下二階より下はダンジョンになってるから、勝手に入ったら死ぬから入るんじゃないよ!」


 聖剣。

 ダンジョン。


 まさに、異世界というラインナップに、魔王の息子のはずの雹吾は、気圧(けお)されるばかりであった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] エッダが出たと思ったら八岐大蛇 かと思えば中国民話傾国の美女 おまけに蝶ネクタイしてるわ BBAロゴ入ってるわ この無国籍・時代ごちゃまぜ感 久しぶりの快感 [気になる点] 周囲が濃すぎ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ