獣王との謁見 2
俺達は地下の訓練場から結果を報告する為に玉座の間に戻った。
しかし扉をノックしても中から返事がない
もしやと思い玉座の間に突入すると
玉座の間でお腹にナイフが刺さって倒れている王を発見した。
「パパァー!」
「兄者ー!」
『パパ?、パパってあれかあのパパの事か』
誰よりも早く王に近寄る姿はフレイだった
どうやらフレイは王の娘のようだ
俺は状況を確かめる。
部屋は全く来た時と同じ状態で争った形跡はない。
ナイフが王のお腹に刺さってるが、他にキズはないようだ。
おかしいぞこの状況
俺達が地下に行ってからほんの30分くらいの筈、
地球の人間なら分かるが、この世界の人間がこんな簡単に死んでしまうだろうか?
ナイフに即死の魔法等が施されている可能性は0ではないが、あの筋肉モリモリの王様が何の対抗もなくやられるものなのか?
「王よ!」「王!」「パパァ!!」
それぞれがとても心配している。
皆が慌てる中、俺とブレスだけは動いていなかった
「貴様!人族が城に来るからだ!」とレッドサンが俺に敵意を向けてくる
「やめろ!連れてきたのは俺だ。責任は俺にある」
とグロッセルさんが神妙になっている
「とりあえず医務室か回復魔法を使ってみたらどうでしょう?」と俺が言うと
「黙れ!貴様のせいで王はこうなったのだぞ!貴様の言う通りになどさせるか」とブラッキスも怒っている。
「とりあえず人族の貴様は処刑だ。今すぐにその首跳ねてくれよう」
とレッドサンが槍を構える
ブラッキスも短剣を構え
イエスもナイフを構えた
「やめて!ユウは悪くないじゃない!」
と泣きながら止めるフレイ
その涙が王に落ちる。
王はピクリと動いたのを俺とブレスは見逃さない
「皆さん。落ち着いて下さい。私は逃げも隠れもしませんから。
まずはキズついた王様を助けるのが先なのではないのですか?」
「うるせぇ!貴様の言う事など!」
「この場で貴様は死ぬ」
すると王の体がプルプルと震えだした。
俺は耳を塞いだ
「貴様らけしからーん!!!」
謁見の間に響くどデカイ声
俺とブレス以外は皆尻餅をついている
王はすくっと立ち上がった。
「王よ無事だったのですね」
「よかった!パパ!」
「おおー兄者!よかったぞ!」
皆が安心している中、王は怒りの表情を崩していない。
「貴様らは分かっておるのか!!」
「はい!今すぐにそこの人族を殺し見せしめにするぜ!」とレッドサンは言う
「ふっ!」
王はレッドサンを殴り飛ばした
「ぐはあー!」
殴られたレッドサンは壁に頭から突っ込み、気絶してしまった
「お、王よどうなされたのですか」
とブラッキスがオロオロしている
「ふん!」
同じ様にブラッキスも殴られ壁まで吹っ飛び気絶する
「後は…」
とイエスさんに寄り殴ろうとしたところで
「もういいでしょう?」
と言って俺は王の腕を掴み、殴るのをやめさせた。
「ぬう!お主に謝罪の面目が立たぬが」
「はは、それなら地下に行く前に止めて下さいよ、あなたは人が悪いです」
「ふむ、済まなかったな、こうでもせねばコイツらは分からんと思ってな」
「それを何とかするのが王の仕事でしょう」
「はっはっは、ユウ、面倒を掛けたな」
「本当ですよ。もうやめて下さいね」
「あ、兄者?どういう事だ?説明してくれ」
「パパー心配したんだから!どういう事なのよ!」
「王よ、私達は何か間違えたのでしょうか?」
と皆が混乱している中、ブレスさんは
「王よあなたの気持ちも考えず自分の赴くままに行動してしまった事をお許しください。」
とブレスさんは跪く
「どうやら分かっているのはユウとブレスのみか
嘆かわしい」
「ユウ お腹すいた」
クリスは天使だな〜
「王様、何か食べ物はありませんか、私の連れがお腹を空かせてしまいまして、誰かのイタズラのせいで時間が掛かってしまったので」
「がっはっは、イタズラか!それもそうだ」
「では奴らも連れて食堂に行くか、そこで全て説明する」
俺達はレッドサンとブラッキスを担ぎ隣にある広い食堂に集まった。
「ユウ、クリス殿下、存分に食べてくれ。」
「いただきます」
「いただきます」
俺達は皆んながボケーっとしている中、モリモリ食事を始めた。
「う、うーん」と先にブラッキスの目が覚めた
「目が覚めたかブラッキスよ」
「お、王、私は何故こんな場所に、それに殴られ」
「もうじきレッドサンも目覚める。それまで待て」
「はっ」
しばらくしてレッドサンも目が覚めた
「皆のもの聞いてほしい。まずワシが何故あのような事をしたのか、分かるか?」
と王は皆んなに尋ねる
「そんなの分かるわけないだろ、ここにいる俺達は全員地下に行ってたんだから」とグロッセルさんが言った。
「それじゃ。」
「は?」
「まあグロッセルはええとしよう。
他の4人に聞く。お主らは何なんじゃ?」
「「はっ、我らは王の剣であります」」
「そうだ」
「では何故我は腹にナイフが刺さり倒れておった?」
「それは…分かりません」
「そこの人族が魔法でやったのかも」
「やってませんよ、あなた達と地下にいたじゃないですか」
「黙れ!何らかの方法でしたかも知れん!」
「それじゃ!」
「ではやはりこの人族が」
「バカもん!そうではない、何故気付かぬ。
お主らは王であるワシを玉座に残し皆で地下に行った
その間に悪魔が攻めてきておったらどうなっておった?
さっきからそこの人族のせいにしようとしておるが
ワシが刺された原因はお主らにあるんじゃぞ!」
「…」
「お主ら4獣剣は王の剣、同時に盾でもある。
それなのにワシをほっておいて何処かに行きおって、自覚が足りん!
ワシはそれが言いたくてあのような事をしたのじゃ」
「ではアレは王自ら!?」
「そうじゃ。お主らに分かってもらう為にな」
「何だそうだったのか」
「心配して損したわ」
「もうそのようなお戯れおやめ下さい」
「それでお主らは散々そこにいるユウのせいにしておったようじゃが?」
「ああ、悪かったな人間」
「貴様は運がいいな」
「お姉さん勘違いしちゃった」
と謝ってるのか分からない感じだ
「はぁ〜、お主らは本当に揃いもそろって馬鹿ばっかりだ。」
「な、何故です?我らは」
「ワシがもう少し遅く起き上がっておったら、お主らはユウに剣を振りかざしておったのだぞ
ユウは帝国より大切な手紙を届けてくれた、言わば使者じゃ。
そのような者に剣を振るなど国際問題にもなりかねん」
「こ、国際問題」
「聞けばユウは元々王国に居て、帝国に渡りわざわざこれから起こるかもしれぬ脅威を教えに獣国に来てくれた者にお主らは一体何をしておるのだ」
「悪魔とは大昔、我らと人族が皆で力を合わせて戦い、ようやく対抗出来る、強大な敵
それが迫っているかもしれないと言うのに、貴様らは人族だからと軽蔑する」
沈黙が流れる
「ところで地下での模擬戦はどうだったのじゃ?」
「そ、それは」
「こ、こいつが卑怯な魔法を使って我らを」
「はぁ〜 まだ分からぬのか
魔法は卑怯でも何でもない。戦闘の術だ」
「ですが!」
「お主は悪魔と戦って魔法を使われたら卑怯だと言って見逃して貰うのか?」
「そ、それは」
「手紙にはユウは上位悪魔とやりあったと書いてあった。その片鱗でも貴様らに見せれば、悪魔とはどういった戦いをするのかが分かると思って黙って行かせた。
結果はなんじゃ?卑怯だ?
それでもワシの国の兵士か!!」
「ワシは間違っていたのかもしれぬ。
力こそが全て、勝ったものが正義
その教えを前王も前々王もそうであった」
「ユウは見た目と違い強くそして賢い。
戦いとは体だけではなく頭も使い戦う時代なのかもしれんな」
「そんな事は!」
「お主らは分かっておるのか?
人族のたった1人に4人がかりで向かっていって
結果はどうじゃ?この有様じゃ!」
「こ、こいつが魔法を使うって分かってれば」
「はぁ〜 どこの誰が戦争で私は魔法を使いますからね〜と言ってくるアホがいるんじゃ?少しは考えてものを話せ」
「とにかく貴様らは悪魔が攻めて来ても、1匹も倒す事なく全員がやられ獣国はなくなってしまう。
それが分かった。」
「「王よ申し訳ありません。」」
「それと弟よ、冒険者の方はどうだ?」
「ここと変わらんよ」
「ワシはお主と戦っても負けはせぬ。しかしどうだユウと戦ってみて、ワシは勝てそうか?」
「う〜むどうじゃろ?互角くらいかのぉ」
「!?」
驚く4獣剣達
「やはりのぉ〜、では仮にユウが2人居たらどうじゃ?」
「まず、間違いなくやられるだろうな」
「そうか…」
「ワシは獣国最強だと思っておる。ここにいる奴らなら全員が束になってもキズ一つ無く倒せるだろう
そんなワシでも悪魔が2体現れたら国が滅びる
そんな敵なんじゃ、分かってくれるかお主ら」
「「はい!」」
「では今日より、対悪魔を想定しての防衛、対抗する策、戦える為の訓練を追加し
より強靭な国に変えていく!」
「兵士だけではない。冒険者達にも同じ様に説明をし、いつ悪魔が来ても良いように冒険者を育てよグロッセル!」
「分かった!」
「これで良いかの?ユウよ」
「そうですね、本当に悪魔は強く姑息です。
姿を変え、情報を集め機を狙って攻めて来ます。」
「さすがに実際見たものは違うな」
「はい。大切な仲間が1人亡くなりました。
私はあの時もっとこうしていたら失わなかったのではないか、ああしていればと、いつも後悔しています。
だから皆さんにはそうなって欲しくないので、
こうして旅をして色々な人に聞いてもらっているんです。」
「すまん。辛いことを聞いたな」
「いいんです。言葉も態度も悪い人が多いようですが
仲間を思い、いざという時はきっと優しい人達なんだと思います。
そんな人達に後悔して生きて欲しくありませんので、決して色々な事に備えるということは無駄ではないと思うので、皆さんで国を守って貰いたいですね。」
「すまんな感謝するよユウ」
しんみりしてしまったが、言いたい事は全て言えた。
これでこの国はきっと大丈夫、そう思うのだった。




