帝都オクディム
俺とギルさんはとうとうクリスを見つけた
クリスの服装は攫われた時と変わらず、乱暴はされていないだろう。
今は良く眠っている、今の内に脱走を考えよう。
牢にはカギが掛かっており外で寝ている兵士から失敬したカギでは開かないようだ。
おそらくジムやグリムード辺りが持っているのだろう。
牢獄は岩のような素材で出来ているので魔法を試す
「ストーンホール」
壁に変化がない、くそっもっとイメージが必要だ
「ロッククラッシュ」
これもダメ、身体から魔力が減ったのは分かるが牢には変化がない。
こうなったら力技だ!
牢の檻に雷術を使う
「ライ」
音の無い不可視の雷が檻を焦がす
一本を焼き切るのに3分位掛かるが行けそうだ
時間が掛かったが何とか牢から出れる位の隙間が作れた。
俺は牢に入り優しくクリスを起こす
「クリスさん、起きてください。迎えに来ましたよ」
しかし、起きる気配がないクリス
おかしい、眠っているだけなら起きる位揺らしているのに
その様子見ておかしいと思ったギルさんも牢に入ってきてクリスの顔を覗き込む
「ユウ様、クリス殿下はおそらく魔法により眠らされております。術を掛けた術者に解かせるか、魔法の効果を打ち消す植物を与えるしか目覚めないかもしれません。」
くそっ、やっと解決したかと思ったらまた問題が起こる。
でもこれでクリスの身は安心だ。
しかしどうする。術者はおそらく帝国の人間、術を解いてと言って解いてくれるとは思えない。
そうなるとその魔法を打ち消す植物を探すか。
「わかりました。一先ずクリスさんを連れて脱出しましょう。」
「了解しました。」
クリスはギルさんに担いで貰い俺達は来た道を戻る。
焼き焦げた牢獄だけは元に戻せないが、兵士は眠っているだけだし、魔法による侵入痕は全て無くし俺達は何とか城から出る事が出来た。
「とりあえず今夜は宿屋に泊まりましょう」
「はい。」
俺達は誰にも見られないように移動して帝都の端まで移動して、一軒の城から離れた所の宿を見つけた。
ここならすぐには追って来れないだろう。
「まずは宿が空いているか見てきますね」
「お願いします」
見た目は古いが営業はしているようだ
「すいませーん」
ドアを開けるとカランカランと音が鳴る
店の奥の方から若い男の人がやってくる
「どうしました、こんな夜更けに」
と少し怪しいヤツが来たな、という感じの目で見られる
確かに、今はもう朝の5時くらいだ
「実は夜に帝都に着いたのですが、中央付近の宿屋は混んでて、行く所行く所満室でして、困ってたんですよ。3人なんですが空いてますか?」
と聞くと店員は宿帳を見て
「3名様ですね、空いてますけどもうすぐ夜明けですよ」と言ってきたので疲れてるので2泊分払いますので2泊でお願い出来ますか?と言うと
「かしこまりました。お一人様2泊分で銀貨6枚になりますので3名様で18枚ですね。」
「これでお願いします」と無限ポーチから金貨を2枚渡すと
「ありがとうございます。お釣りとこちらがカギになります。ごゆっくり」と言って裏に戻っていった
俺はギルさんを呼び、部屋のカギを渡し後方を注意しつつ部屋に入った。
部屋を見ると結構広く、窓もある。
魔道具により室内は見渡せる位には明るい。
ベットは横並びに3つ置いてありクリスを壁際のベットに寝させる
ドア側のベットに腰を掛け、息を吐く
ギルさんも真ん中のベットに座り息を吐いた
「一先ずお疲れ様でした。ギルさんは少し寝てください。僕は誰か来ないか見てますから」
「い、いえ見張りは私が」
とギルさんは気を使ってくれる。
「気が高ぶっているせいでしょうか、全然眠くないんですよね、とりあえず4時間程寝て下さい。話はそれからにしましょう。」
「わかりました。では先に失礼します。」と言って
ベットに潜るギルさん。
するとすぐに寝息が聞こえてくる、やっぱり疲れてたんだなと思った。
クリスを見ると安らかに眠っている。
怖い思いをさせてしまい申し訳ないがもう少し待っていて欲しい。必ず魔法を解除してみせる。
そう思わせる可愛らしい寝顔だった。
俺は誰も見ていないようなのでトイレのある個室に入り元の姿に戻る
「ぽみゅーん」
鏡を見ると黄緑色のひょうたんスライムがいる
『今日は疲れたな、俺も休まないとMPが持たないな』
オレは気配察知をしながら個室で眠るのであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
3時間後
俺の気配察知に反応があった
おそらく宿屋の主人だろう。俺はすぐに変体でユウの姿になる。
コンコンコン
ガチャリとドアを開き、はーいと眠そうに出ると
「すみませんおやすみのところを
朝食付きだと言う事を忘れてしまいお伝えに来ました。」
どうやら姫の奪還とは関係なさそうだな
後ろを見るとギルさんも起きていたので
「後でいただきに行きますね」と言うと
「すみません朝早く、では準備しておきます」と言って部屋から離れていった
「おはようございますギルさん。よく眠れましたか」
「ありがとうございます、良く寝れました。ユウ様もお休み下さい。」
「朝食をいただいたら少し休みます。先に行きますね」
ギルさんを残し食堂に行く。
食堂では他にも食事をしている人がいた。
俺はよそ者なので端っこに行き、みんなから少し離れた所に座り食事をする。
食事をしながら宿の客は色々話している。
帝都の周りのモンスターが強くなったとか
ダンジョンで見つかった武器がどうのこうのとか
ギルドの受付が可愛いとか、ガヤガヤしていた。
まだ、城で起きたことは広まっていないようだ
少し安心した。
俺は食事を全て吸収して部屋に戻る
ギルさんにも食事をとってもらう。部屋には俺とクリス2人だけになる。
クリスは変わらず眠っている
端のベットに座り予定を立てる
今日はとりあえずギルさんにはここに残ってもらい、ギルドにある図書館で魔法の解除をしてくれる植物を調べよう。
可能ならその足で取りに行きたいが
後はクリスさんを背負って行動出来る籠の様な物があれば買ってこよう。
城では今頃騒ぎ出しているかもしれないが、俺達がやった証拠は残していないはず、
一応塔のカギは兵に戻し、ドアは開けておいたのでワンチャン、クリスが逃げ出したという風に見えない事もない。城を隈なく捜索しているころかも。
しばらくするとギルさんが戻ってきた
ギルさんに予定を伝える。
申し訳なさそうにしているが、気にしないで下さいと言ってここに残ってもらう。
今はクリスを優先して下さいと、これが済めばジムさんを説得しましょうと
とりあえずこの予定で行く。
店主に連れは少し疲れているみたいなので残していく。と伝えてついでにギルドの場所も聞き俺はギルドに向かった。
ギルドは帝都の中心にあり、宿は城から1番離れた所にある。
帝都は人に溢れ活気があり、この雰囲気は嫌いじゃない
道行く人は商人とか職人、主婦など様々だ。
そんな中1人の女性が目に入る
少し大きめの子どもを背負っていたのだ。
俺はすぐに女性に声を掛けた。
「すいません、少し聞いてもいいですか?」
女性はこちらを向くと何ですか?と警戒しながら返事をしてくれた。
「あの、背中に背負っているのはあなたのお子様ですよね、実は僕にも妻がおり、そのように子どもを背負えたら出かけやすいだろうな〜と思いまして。
どちらでご購入されたか教えて貰えますか?」
と聞くと女性は少し驚いたように
「あ、あなた、これの良さがわかるんですね。これはうちの主人が作った物でまだ店先には出してないんですよ。もし宜しかったらお店に行きますか?主人に話してみますので」と嬉しそうに話し始めた
「是非行ってみたいです。案内して貰えますか」
そうしてギルドから割と近い鍛冶屋に連れて行かれた。
「あなたーちょっといいかしらー」
「ちょっと待て、すぐ行くから」
店の奥からおデコにライトっぽい魔道具を付けた、変わった格好の男の人が出てきた。
んっ?呼ばれたから来てみたが、一体何の用だい?
「この人が私に声を掛けてきて、私を見てそれが欲しいって言われたの。嬉しくてあなたに相談しようと思って連れて来たの」
や、やばい重要な事を言っていないこの人
その説明だと勘違いしてしまうのでは
チラリと横目で旦那さんを見ると
顔が真っ赤になり激おこだ
「ご、ご主人、今のは少し説明が足りないようです
じ、実はですね」
「うるせぇ!俺の嫁に手ェ出すとはいい度胸だ!表出ろコノヤロー!!」
「あ、あなた、どうしちゃったの折角お連れしたのに」
「うるせぇ!どこの世界に自分の嫁を欲しいって言われて嬉しいやつがいるか!」
この人の言っている事は正しい。早く説明しないと
「私、嬉しくて。私のを褒めてくれて嬉しかったのに、どうして」
『あなたの説明が足りないからですよ!もしかしてワザと言ってない?』
「よし!戦争だ!俺とお前で戦争だ!」
もう止められないはコレ
「あ、あなたどうして!どうしてこうなったのー!」
「すいませんでしたー!!」
「ごめんなさーい」
俺は事情を説明すると主人は土下座して謝ってきた。奥さんも謝ってくる。
「いえいえ、勘違いだとわかってくれたので、全然気にしていませんから気にしないで下さい」
それはそうと、あんた!コレの良さをわかってくれるかね
とキャラが変わる
こっちの方が話しやすいかな
「これは貴方が発明したのですか?だとすると素晴らしいとしか言えませんよ」
と絶賛すると主人はキラキラした目で俺を見る
『おっさんのキラキラはいらないな〜』
んでえーと何だっけ名前
「これは失礼しました。私はユウと申します。冒険者をしてまして一応C級ですね」
ユウさんか、俺はこの鍛冶屋をやってるボヘミアっていう、まあ鍛冶屋っつても開発や発明ばっかりやってる変な鍛冶屋って言われてるよ
「アレは素晴らしいと思いますけどね、特に小さいお子様がいらっしゃる奥様はあると便利かと」
「だよな!そうだよな!誰もわかってくれないから俺がおかしいのかと思ってたよ〜、でも妻はコレいいよって言ってくれるしよ、周りのヤツなんて気にしないで作り続けてたんだよ」と熱くなるボヘミアさん
「他にはその頭に付いているヤツとかですか?発明品は?」
「ユ、ユウさん!アンタ何もんだ!そうなんだ、コレも俺が開発したんだ、よく分かったな」
「それもいいですよね、特にトンネル工事をする人や、穴に潜って作業する人には便利かと」
「!!!」
物凄く驚いているボヘミアさん。
「お、俺は勘違いしてた。世で働く女性の為にって思って作ってたんだが、ユウさん!そのアイデア使わして貰ってもいいかい!礼はする!必ず」
と暑苦しくなるボヘミアさん
「お礼なんて別にいいですよ、思った事言っただけですから」
「ダメだ、それだと俺ばっかりが得をしてしまう。
確かに作成したのは俺だが使用目的は違ったので全く売れなかったんだ、でも売り込み先を変えたら話は違う。きっとコレは世の役に立つ。コレが特別な発明かもしれない事がわかったんだ!」
「わ、わかりました。では今奥様が使っている籠を売ってもらえませんか?出来れば少し大きめの」
「そんなもん、言われなくてもやるよ!折角俺の作った物を褒めてくれたんだ、それに売り込み先まで
俺は嬉しいんだ。周りからは全く認められず馬鹿にされ続けて、でも妻は分かってくれた。そんな妻も陰では色々言われてる」
「発明はきっかけがないと世に知れ渡らないかもしれませんね、周りの人も知れば分かってくれますよ。」
「ユウさん。あんたいい人だな」
「ボヘミアさんは鍛冶屋さんなんですよね、色々と作れると思うので作ってみて貰いたい物が、」
「ん?発明か?」
「発明というか、何というか」
俺はベビーカーを紙に書いて渡した。小さめのタイヤを付けて籠に子どもを乗せる簡単な物だ。
安全性と使わない時は荷物運びも出来、きっと世の奥様は楽になる。そう思いご主人に設計図を渡した
「ユ、ユウさん、これはスゲーぞ。誰もこんなの作った事ないだろう。しかも使う用途や安全性まで書いてある。こんなの本当に貰ってしまってもいいのか?」
「いいですよ。貴方の奥様を思う気持ちに感銘したので少しでもお力になれればいいなって思っただけです。
これも馬車とかからアイデアが閃くはずなので、いつかは誰かが考えたでしょう。」
「あ、ありがとうユウさん。これが売れたらその金は払わせて貰うからな。絶対に」
「別にいいですよ、コレが売れたらあなたの他の発明品も興味を示してくれるかも知れないと思っただけですから。」
「すまねぇ、何から何まで。この恩は忘れないからな。」
「僕もちょうどこの様なリュックの様な物を探していたので本当に嬉しいのです。でも本当にお金はよろしいのですか?」
「いいんだよ!こんな設計図まで貰ってしまって金も払わずに、また来てくれよ。絶対恩は返すから」
「わかりました。また寄らせて貰いますね」
と言って鍛冶屋を出た俺はリュック改めベビーキャリアを背負いながら宿屋に戻るのも面倒なのでそのままギルドに向かった




