第二章:黒き聖女 第四話 魂の匂い
「そこまでだ」
ヘカテーが二人を止める。
修行の終わりは、不意に訪れた。
「モモ・ルーよ、良くやった。『黒き聖女』として覚醒したわね。」
「はい、ヘカテー様」
「エンプーサもご苦労、上手く覚醒へと促したな」
「ありがとうございます、ご主人様…」
と、モモ・ルーの身体がグラリと揺れた。
「!」
気を失いその場に倒れかけたモモ・ルーをフワリと優しく受け止めたのは…
「おい!しっかりしろ!おい!」
意外にもエンプーサだった。
「…案ずるな、エンプーサ。覚醒するため異常に体力を使っただけだ。」
「しかし、治癒魔法で幾度身体を癒したとしても、精神は…心は癒せないのでは…」
「その通りだ…そこは賭けだったが」
ヘカテーは気を失ったモモ・ルーへと近づき、
美しく整った顔を覗き込む。
「この娘は賭けに勝ったよ」
そう言って満足そうに笑った。
エンプーサはその言葉に安堵し、改めてモモ・ルーの顔を見た。
「ご主人様…何故この聖女が、モルモーと同じ魂を持っているのでしょう」
「さあな…ただ」
「ただ?」
「…神の掟は知っているな?」
「はい、『地上界の出来事に神は手を出してはならない』」
「そうだ、この掟によって、私は死者の魂を冥界に導く事すらできなくなった」
「それでは、モルモーの魂も」
「冥界に辿り着けなかった魂が、何かの拍子に赤子の中に入り込む事はあるが…」
「聖女に転生したと?」
「…わからん、本人にも自覚はなかろう。」
「ですが…やはり」
「似ていると思うか?エンプーサ」
「………いいえ、モルモーの方がもっと可愛かったです」
「そうか(笑)」
ヘカテーは立ち上がり、モモ・ルーを寝室へ運ぶようエンプーサに申し付けた。
「今は寝かせてやれ…魔王との戦いが始まれば寝る間もなくなる。」
「畏まりました、ご主人様」
エンプーサはモモ・ルーを抱きかかえ、寝室まで運んでいった。
「モルモー…お前の魂がその娘の中にいるのなら、モモ・ルーとエンプーサの力になってやってくれ」
第四話 魂の匂い 完




