第二章:黒き聖女 第三話 聖葬の黒焔
修行は、地獄そのものだった。
ザシュ!
「きゃあァァァ!」
ガシュッ!
「ぐぅっっっ!」
「どうした聖女様、もう動けないのか?」
エンプーサの動きは目にも留まらず、モモ・ルーの体は幾度となく斬り裂かれた。
「…ううう、…まだ動け…る…」
崩れ落ちそうになるモモ・ルーをヘカテーの治癒魔法が包み込む。
エンプーサの斬撃で幾度も深い傷を受けるも、その度にヘカテーの魔力で強制的に癒やされた。
「遅い! それで魔王を討つだと? 冗談はやめろ。」
「ぐうぅぅっ!」
エンプーサの攻撃は一段と速度を上げモモ・ルーを襲ってくる。
「ご主人様の『黒き聖女』だ?思い上がるな!お前はただの、モルモーの……!」
エンプーサが言葉を飲み込む。
その瞬間、彼女の瞳に一瞬だけ、深い悲しみの色が混じったのをモモ・ルーは見逃さなかった。
モルモー…
淫魔が言っていた、あの名。
ヘカテーが口にした“魂の匂い“。
『私に何の関係があるのだろう…』
だが今は、そんな事を考える暇はない。
「民衆を守る?何を甘えた事を言っている。
自分の身すら守れぬ者に生きる資格があると思うな!」
ヒュンヒュンッ!
エンプーサの二刀が、一撃必殺の速度でモモ・ルーの首筋を刈りに来る。
『死ねない…このまま死にたくない……私を見放した神も、私を裏切った世界も…その報いを受けさせるまでは!』
その瞬間、モモ・ルーの内側で、澱んでいた魔力が爆発した。
「ああああああッ!」
掲げた掌から放たれたのは、まばゆい光ではない。
すべてを焼き尽くし、葬り去るような漆黒の炎――『聖葬の黒焔』。
エンプーサの刀が炎に巻かれ、彼女は驚愕して後退した。
「何だと……神聖魔法を、闇で上書きしたというの?」
「はあ、はあ……
私はもう祈らない
光は私を救わなかった
エンプーサさん……私、もう迷いません。」
モモ・ルーは立ち上がり、ボロボロになった聖衣の裾を自らの手で引き裂いた。
その瞳からは涙が消え、代わりに冷徹な復讐の光が宿っていた。
『聖女モモルーと冥界の女神』 第三話 聖葬の黒焔 完




