第二章:黒き聖女 第五話 あの子の思い出
「…ここは何処かしら…
真っ白な空間
あぁこれは夢ね…」
私は夢を見ていた…
何もない真っ白な空間に私は立っていた
すると、目の前に、小さな魔族の女の子が現れた
敵意がないのが不思議と分かった
女の子は私の手を取ると、私を宝箱の前に連れて行った
これはあなたの宝箱?
女の子は笑って頷いた
そして、宝箱を開けて私に見せてくれた
色々な宝物が入っている
女の子はその中からクッキーを取って、
私の手のひらに置いた
すると突然目の前に景色が広がった
そこは立派なお屋敷で、二人の女の子がいた
『エンプーサ!ねぇエンプーサ!私ね、お菓子を焼いてみたの!』
『モルモーは人間みたいな事をするんだね』
『だってご主人様はお屋敷だって紅茶だって人間の創る物が大好きでしょ?だからね、このクッキーを焼いたのよ?』
『分かった分かった』
『もお〜っ…それっ』
『うわっ!もぐもぐ…』
『どう?』
『…うん…美味しいよ、コレ!』
『良かったぁ〜♪』
キャラキャラと笑い合う二人の女の子…
…これは記憶?いや、思い出だ…
この沢山の宝物は、この子の思い出なんだ…
私は別の宝物にも触れてみた
始めてご主人様のお屋敷に上がった日の思い出…
一緒にお仕えする女の子に会った思い出…
いつも一緒にいる友達と始めて喧嘩した思い出などなど…
楽しい思い出がいっぱいなのね…
羨ましいな…
しかし急に暗い色の宝物が出てきた
『ご主人様が魔界に降りるなんて…』
『あぁ、でも私達はご主人様にお仕えする身、ついて行きます。』
『二人でご主人様をお支えしよう』
そして宝箱の中には歪な形の指輪もあった
『喜べ、お前は魔王様の花嫁に選ばれたのだ』
魔王の使いが女の子に向ってそう言った
『私はご主人様にお仕えする身、お受けする訳には参りません。』
『お前が断れば、お前の主人の立場が悪くなる事くらい、お前にも分かるだろう?その気になれば追放する事だってできるのだぞ!』
『そんな…』
酷い、無理矢理結婚させるなんて…
いつの間にか宝箱は、真っ黒い石ばかりになっていた。
でもこの石だけはキラキラと美しい
『あうっ、痛いよぉっ!、う、産まれるぅっ!』
『もうすぐよ、モルモーしっかり!』
『エ、エンプーサ!エンプーサ助けてぇっっっ!』
『…オギャ、オギャア、オギャア』
『…産まれた…産まれたよモルモー、おめでとう(涙)』
『……私の、私の赤ちゃん♡』
おめでとう、あなた、お母さんになったのね…
残っているのは赤黒い石と漆黒の石…
私は赤黒い石を手に取った
『お止め下さい魔王様!あたしの赤ちゃんに何をなさるのですか!』
『我の新しい器よ、我の魔力を受け継ぐ者よ…』
魔王…これが魔王なの?
魔王は生まれたばかりの赤ちゃんに手をかざした
『我の全てを受け入れよ』
魔王の手から赤ちゃんに向って魔力が振り注ぐ
これは…何をしてるの?
赤ちゃんを心配そうに、あの娘が見ている
と、急に赤ちゃんの様子が変わった
『お止め下さい!私の赤ちゃんが!』
大変!やめて!
『もう少しだ…我の器よ』
お願い、やめて!赤ちゃんが!
『もうやめて!私の、私の赤ちゃんが!』
そして、とうとう…
魔王の魔力を受け入れきれず、赤ちゃんは、彼女の目の前で四散し、消滅してしまった。
「『赤ちゃん、私の赤ちゃんが…あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!いやあぁぁーーーーつ!!!』」
第五話 あの子の思い出 完




