開幕〜追憶3〜望まぬ再開
アストラルの「ゾリュドゥス。頼みがある。」その言葉を「却下」という言葉で返したゾリュドゥス。返答が分かっていたかのような表情と態度でただ、ゾリュドゥスを見つめるアストラル。その雰囲気は、久しぶりの再会を喜ぶのではなく、『再会』を望んでいなかったような雰囲気。特に、ゾリュドゥスから滲み出ていた。
「話を聞いてくれ。」
「話は聞いてやろう。だが、頼みは聞かぬ。」
「なんでだ。」
「負け犬の頼み等誰が聞くか。」
その通りすぎた。自分はアカシャと戦い敗れ、十五年の月日を逃げ続けてきた。『負け犬』そう言われても仕方がなかった。
「つ……!」
「その反応からするに、自分でも分かっているのだな。我はお主からまだ聞いてないぞ。」
レインはただ二人の会話をアストラルの袖をつかみ背後で黙って聞くことしか出来なかった。あまりにも自分が口を出せる雰囲気でないピリついた空気、床に落ちている小石が静かにガタガタと揺れていた。
「ちっ...。約束...果たせなくてすまない……」
「……何の約束だ?」
「アカシャを...倒す約束だ...」
悔しい表情を浮かべながら、左下に顔を背けた。強く拳を握りしているせいか血が流れていた。
「我は、倒せではなく。殺せと、命じたはずだが?あれだけ、お主らsheephillを助けやったろう。アジ・ダハーカ、ディヴィジョン。そして、ディアブロを倒す糸口を与えたはずだ。少なからず、我からすれば恩を仇で返されたような気分に近いのう。」
「そいつらだって!俺たち、sheephillがお前に頼んで糸口を貰ったわけじゃねぇだろ。お前が勝手に言ってきた。それだけだろうが!」
殺風景で椅子しかない部屋に亀裂が入った。アストラルとゾリュドゥスの圧力に部屋が悲鳴を上げていた。「ひっ」と声を上げレインは縮こまった。
「せめて、約束を果たして再会したかったのう。ナーガ・アストラル。十五年、我からすれば書物の一ページにも満たない時間だが、お主ら人間にとっては長い時だろうに……。その間、ずっと逃げてきたのだものな?お主は……」
書物の一ページ。その言葉にレインは目の前にいる少年とも青年とも見えるゾリュドゥスの言葉に「この人は人間じゃない……」と確定つけるようなものだった。
「それは……」
「我は、思念体だからのう。ずっとお主らを見ていたよ。テラ・クライメットは小さきながら獣人の国を作り完全な鎖国。レヴィ・バサラは、姿と名を隠し冷妷獄炎の残党と戦っている。お主だけだ。時が止まっていたのは。くだらん思いに縋るな。たわけが。」
「あぁ??」
アストラルは怒りを覚えた。頬がピクピクと動く。ゆっくりと圧力をかけながらゾリュドゥスに歩く、彼から発せられる圧力に耐えかね手を離し離れたレインは後退りをして力なく座り込んだ。
「俺が...何の思いに縋ってるって?」
「それが分からぬなら勝てぬよ。我が妹である。アカシャ・アルカマルにはな。」
「っつつつつつ!!!!!だまれっ!!!!」
「恐れてるな?また、負けるかもしれない。人が死ぬかとしれない。自分のせいで、自分の力のせいで。と。」
「だっ!だまれっ!!!!」
肩を上下に揺らしながら、髪の毛をくしゃくしゃにしながら、荒い呼吸を繰り返していた。ゾリュドゥスは椅子から消え、アストラルの背後にいた。
「!!!」
「ナーガ・アストラル。恐れてない...と言うなら、目の前に力なく座るレイン・ノスタルジアをここで殺して見せろ。」
レインを指さしながら、アストラルを見ながら、発せられたゾリュドゥスの容赦のない言葉の刃。首を横に振り「死にたくない!」とアピールしていた。彼女の姿を見たアストラルは右手で頭を抑え始めた。
「はぁはぁはぁはぁ……!!!」
「お主は強い。じゃが、その分脆い。負けを知らなかった。強くなりすぎた。そのつけだ。さぁ、この女性を殺せるか?」
「おれには……でき……ない……。レインを……殺すことなんて……」
「それもそうだろうな。利益利益と口や心の中で言っているが、根本は救いの手を差し伸べたこの女性に感謝をしている。」
蔑んだ瞳でアストラルを見るゾリュドゥス。「ちがあああああう!!!」と声を荒らげたアストラルだったが、頭を抑えながら壁にもたれかかった。
「難儀だな。強き者の心とは。自身の感情を今すぐ受け止めろ。とまでは言わない。少し、落ち着いたらお主の頼み聞いてやろう。」
数分後、落ち着きを取り戻したアストラル。壁によし掛かりながら言葉を発した。
「国家転覆の濡れ衣を着せられている。だから、出来るなら、姿と名前を隠して動きたい。」
その言葉にゾリュドゥスは腹を抱えながら笑った。
「あはははははっ!お主ともあろうものが姿と名前を隠したい!?面白い事もあるのだなぁ。レヴィ・バサラと同じか。それもそうか。大罪人が姿顔名前を晒して歩く訳にはいかないからな。」
「できるか?」
少しの間、沈黙が続いた。そして、「出来ない事はない」とゾリュドゥスは言った。右手を上げ、亜空間からあるものを出した。
「これは一体なんですか?」
レインは初めて見るものだった。黒装飾のフード付きの羽織物だった。
「レヴィ・バサラはこれの白だ。会えばわかる。この羽織物の名は『黒衣』だ。」
二人の前に出された『黒衣』と呼ばれる羽織物。姿、名前を隠せる隠密アイテムである。
「これを着れば姿、名前は隠せる。見に纏えば、過去に会った物もお主がナーガ・アストラルという事は知らずにいる。が、レインは身に纏う前から知っておるから、彼女には隠せない。」
「つまり、私は安易にアストラル様のお名前を呼ぶことが出来ない。ということですね。」
その通りだとレインに頷き、腕を組みながら壁によし掛かっていたアストラルは『黒衣』に近づいた。
「これがあればある程度は自由に動けんだな。」
一度消え、椅子に戻ったゾリュドゥスは両手を椅子の取ってに起き、足を組んだ。
「まぁ、そう言うことになるな。」
納得したアストラルは『黒衣』を手にし、羽織った。「似合ってます」とアストラルに言ったレインは、提案をした。
「せっかくですし、黒衣の戦士。としてこの世界を冒険するのはいかがでしょうか?」
「黒衣の……戦士……。」
被っていたフードを下ろし、「良い名前だな。」とレインの提案を承諾した。そして……
「ゾリュドゥス。次こそは必ず、アカシャを殺す。」
「……。期待はせん。」
「フッ、勝手にしろ。」
鼻で笑い、再び本が並び立つ通路を歩き出した。レインは行儀よく、両手を腰の前で揃え一礼し、彼の後を追った。一人残それたゾリュドゥスは「気をつけろ。アカシャの行動は我にも分からない」と呟いた。右手を上げ何も言わず去って行った彼の背中を険しい顔で見つめ続けるゾリュドゥス。その表情は何を意味し、何を考えているのかは彼自身にしか分からない……。
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