表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

開幕〜追憶2〜 始まり

翌日、目を覚ました。レインの胸の中で寝ていたアストラルはゆっくりと目を覚ました。

「…………。」

「目を覚ましたか?」

「なんで……俺……」

自分の行動に驚きを隠せなかった。十五年もの間、誰かの胸の中で寝たことなどなかった。ずっと洞窟に独りでいたからだ。

「ゆっくりでいいですよ。」

「え?」

アストラルはレインから目を逸らした。レインは彼を支えながらゆっくりと自分だけ立ち上がり、イノシシの死体を見た。

「ふむ。ギリギリですが、料理はできそうですね。」

「…………」

「少しお待ちください。」

「あ...あぁ。わかった。」

昨日と全く違うアストラルの反応にレインは少し嬉しかった。

『人の温もりって...こんなに温かいものだったのか...』

忘れていた感情が蘇った瞬間だったのだろうか。アストラルの気持ちが変化するのを示すように太陽の日差しも強くなった。呆然とレインの行動を見ることしか出来なかった。今まで忘れていた感情を思い出せてくれた相手をただ見つめ、そして「なぁ...今世界はどうなってる...」とレインに質問をした。

「今の世界でございますか?冷妷獄炎(れいてつのごつうえん)が世界の約八割を支配し、滅びた国の国民などは逃げながら、そして、戦ってます。」

「戦って……る?冷妷獄炎と?」

「はい。」

古びた鍋を器用に使い料理をしながらレインは立て続けに淡々と答えた。

(わたくし)達は、世界を取り戻す為に冷妷獄炎と戦っているのです。文明や国が滅びた今でも、平和を取り戻そうと足掻きもがいているのです。」

その言葉はアストラルの心に大きな矢がグサリと刺さった様な痛みが走った。「俺達が負けたせいか...」と言葉をこぼした。

「名前は聞き覚えがありましたから、まさかとは思いました。けれど、負けてもいいと思っています。」

「え?」

「どんなに負けても。負け続けても最後に一回勝てればいいと(わたくし)は思います。」

「一回...勝てば……」

七英雄sheephillとして戦い続け、勝ち続けてきたアストラルには到底理解出来ない理論だった。負け続けても一回勝てばいい。それは自分の思考にない概念のようなものだった。一度の敗戦で自分は逃げたのだから、それでも世界は冷妷獄炎と戦っている。

「勝てるわけない……」

「分かりませんわ。そんなこと。」

「分かってる!冷妷獄炎は!一人一人が強い...アカシャなんか...もはや別格だ...。」

身体が震え、目は虚ろ状態のアストラル。レインはアカシャとの戦いでどれ程の思いを感じ、あまりにも大きな物背負っていると感じた。

「とにかく、こちらをどうぞ。美味しそうには見えないですが、味には自信がありましてよ!お食べ下さい。」

アストラルの目の前に出されたのは、料理とは決して言えない見た目のイノシシのスープ。洞窟で食べるにはあっているのかもしれない。だが、見た目や色合いはとても世間で出せたものではない紫色のスープにイノシシの肉が入っているだけのスープだ。恐る恐る、口にスープを含んだ。

「うまい....」

見た目とは裏腹に口の中で肉の旨みと甘い香りが広がる。久しぶりの味にアストラルは「うまい……」と言葉をこぼした。

「良かったです。」

「食べない...のか?」

(わたくし)は、大丈夫です。アストラル様がお食べ下さい。一つ質問してもよろしいですか?」

無言で頷いたアストラルを見て、レインは「あの時、何故助けてくれたのですか?」と問いた。

「……分からない。けれど、なぜか身体が動いた...。多分、人が死ぬのが怖いんだと思う...。だけど、怖いって言ってる反面。俺は人を殺してる.......。」

「優しいお方なんですね。」

優しいお方。アストラルは一体何を言っているんだと心の中で思ってしまった。

「先程、(わたくし)負け続けても一回勝てばいいと申したと思います。」

「あぁ。」

「人生は負け続きが当たり前。そう思っています。七英雄はアカシャ以外と戦い負けたという噂は一個も聞いたことがありません。アストラル様にとってそれが初めての完膚なきまでの敗北。(わたくし)は負け続きの人生でしたから、今はメイドとして生計を立てていました。それも失敗です。ですから、(わたくし)はいつかたった一回の勝利。人生の安定を手にしたいと思っています。」

「人生の……安定……」

レインの話を聞いたアストラルは体中の細胞が震えた。視覚、聴覚が刺激された。アストラルの瞳は少しだけ砂漠の中で返り咲こうとする向日葵のように明るくなった。今まで敗北を知らなかった自分は立ち直り方すらも分からなかった。「たった一回勝てばいい。」その言葉はアストラルの勝利に対する概念を根底から覆す一言だったのかもしれない。

「十五年……」

「アストラル様?」

突如、アストラルの口から「十五年……」という明確な数字がでた。

「そんなに長く俺は逃げて、アカシャに負けただけで国から国家転覆の濡れ衣を着せられた。そんな俺が...アカシャにもう一度挑むとか考えたこと無かった。それにレイン。君は導き手として完成されすぎてる。何者だ?」

その質問にレインは「(わたくし)はただのレインですわ。」と答えた。その答えを聞いたアストラルは無言で立ち上がり、洞窟の外に歩き出した。

「どこに行かれるのですか!」

「少し、一人にしてくれ。」

「かしこまりました。」

洞窟の外に向かって歩くアストラルの背中をレインは手を前で組みお辞儀をして「行ってらっしゃいませ。」と優しく見送った。外に出ると前は感じなかった太陽光の光と鼻の中に微かに草木の匂いを感じた。ぎこちないほほ笑みをこぼしたアストラルは「この感覚は久しぶりだ。」といい歩き出した。だが、彼の思考内は違った。

『レイン・ノスタルジア。導き手として完成されすぎている。それに、自分は自分だと言った。あとは、どこか人間味を感じねぇ。確かに、レインの胸の中で寝ていた時、温もりは感じた。その温もりは……人間に近しい感じはあった。ただ引っかかる……』

彼は気づいていなかった。昔から頭の回転はとても早かった。sheephillの中でもずば抜けるほどに。その感覚が戻っていることに。冷たい風……いや、今の彼には懐かしくも優しい風を感じながらユーカレア森林を歩き続けた。

『今までの俺ならあんな簡単に人の胸の中で眠ることなんかなかった...。警戒心を削がれた?いや、警戒できないほどにレインが弱い?あからさまに強いとは感じねぇ。何か違う。』

ユーカレア湖の前で立ち止まりあることを決めた。

「レイン・ノスタルジア...。だっけか?そば置くか。利用できるものは利用しよう。そして、あいつがどんな存在か。見定めるとしよう。利益なるならそのまま利用する。不利益なら捨てるまでだ。」

ナーガ・アストラルは自分の利益になるものにしか興味がない。いや、正確には興味が向かなくなった。sheephillの中でも頭の回転は早い。その反面、残虐性を兼ね備え不要な物は今までも捨ててきたのだ。忘れていた温もりをくれた相手ですらもアストラルの中ではただよ利用する存在にしかならない。それもそのはず、アストラルはどれだけ自分に良心的な事をしてくれたとしても、『警戒』この言葉が過ぎった瞬間、相手を「利用する」に、シフトチャンジするのだ。その過程で人を見定め判断をするのだ。

「はぁ、今まで聞こえてた音は、耳を切りたくなるような歪で心を壊す音で、太陽の光だって冷たく感じて、目に見えるのはモノクロだったのにな。今や太陽の光さえ。風の音でさえ心地がいい。モノクロの世界も少しづつ色を取り戻し始めてる。それを思い出させてくれた相手を利用するか……。我ながら最低極まりないな。」

振り返り、洞窟に戻って行った。その背中は以前の過去を背負い、敗北を味わって逃げ続けた彼とは違った。過去も後悔も挫折も背負い前に進む事を決心したそんな背中だった。少しずつ、彼の中で砂漠で咲く向日葵が返り咲こうとしていた。まさに、向日葵の花言葉の一つの「情熱」が咲戻るように……。

『たった一回勝てばいいか。あの時の俺らにはなかったな。今でもあの日の惨状を思い出すよ。』



*――――――――*

十五年前……。sheephill対アカシャの戦いにて……。

「君たちは僕にはもう勝てないっ!!あはははっ!」

「レヴィ...どうする?俺とレヴィしかもう動けねぇ」

「分かってるわよ。アストラル...。ヨウは顔の半分失って...即死..。ツバサも心臓貫かれて...」

双方が戦っている場所はただの森の奥にある広い場所のはずだった。だが、辺りは黒い炎、青い炎、赤い炎に包まれ、地面も至る所に血がありこの世もものではない場所だった...。

「テラはギリギリ逃がせた...。セイは地面の岩盤に串刺しで……」

「シュウは……私のせいで...首ごとアカシャに食われた...」

たった二人しかの立っていなかった。それでもアストラルとレヴィは最後まで縋っていた勝つ方法探すために...だが、アカシャが土壇場で手にした加護『始まりの終わり終わりの始まり』によってsheephillの敗北は決定付けられていた。


*――――――――*

現在...

『ここからの記憶がなぁ。思い出せない。恐らくだが、自分で鍵をかけたんだ。仮にまたアカシャに挑むとなったらその記憶を思い出す必要があるのか否か。今は分からねぇ。』

考えながら歩き、彼の持つ能力の一つでもある『創造』で長い髪を切るハサミ。武器を直す鍛治道具。汚れた己を洗うための洗剤。新たな服を作り出した。落ちた英雄と言われるのには変わりは無いだろう。だが、彼は「たった一度の勝利」を目掛け少しだけ止まった時間に足を踏み入れた。「さて、まだ完璧に立ち直れた訳じゃねぇ。外に出るか。」

その決意はモノクロの世界が真っ白なキャンバスを埋めていく様な感覚だった。彼の心の中に灯った小さな情熱の火。そして、再びアカシャと対峙する日は来るのか。だが、今の彼には前向けるようになるそれしかなかった。前のように利益のために人を利用するのではなく、sheephillとの思い出をまた作れるそんな人達に出会うためにきっと彼は動き出し、世界に平和を齎せようとするのだろう。洞窟に戻った彼は黙ってアストラルの帰りを待っていたレインに言った。

「行くぞ。レイン。」

「え……」

その一言にレインは少し驚いた。国家転覆の濡れ衣を着せられてる彼が何かを変えようと動き出したのだと感じ、「かしこまりました。アストラル様。」と言い、歩き出す彼の後を小走りで追いかけた。

『今も思えば国家転覆の濡れ衣がなんだ。俺は最強のギルドsheephill ナーガ・アストラル。それだけじゃねぇか。』



洞窟から歩くこと約2時間。アストラルは今の世界の現状を自分の目で見て痛感した。

「これが……今の……」

アストラルの前に広がっていたのは、灰色の空、瓦礫の山、錆びつき壊れた街や国、はなから人が存在していないかのような静けさ。その反面、そこら中に魔物や魔人が溢れていた。魔物らが溢れたせいか動植物のいない荒野だった。ユーカレア森林は加護の力で守られていただけだった。そして、レインが……

「文明は壊れ、衣食住不足による困難、汚染、魔物と生存者が争い続けています。」

「…………。勝っていれば...」

「アストラル様……」

横に首を振り、アストラルは歩き始めた。「あっ..」と声をこぼしたレイン。震えいたのだアストラルの拳が...。畏怖や、悔しさ。あるいは罪の大きさを現状を目にしてなのか。それは彼にしか分からなかった。

「おっえっ……!!がはがはっ!!」

突如、片膝を付き、嗚咽した。すぐさまアストラルに駆け寄り「大丈夫ですか!?」と声をかけたレイン。背中に手を当てた時、感じた彼は震えていた。拳だけじゃなかったのだ。

「戻りますか……?」

「はぁはぁ……ダメだ...。進まないと……!無理にでも克服しねぇと...」

涙目の目を擦りレインに支えてもらいながら立ち上がりまた、ゆっくりと歩き出した。

「アストラル様。非常に言いにくい事なのですが...」

「なんだ……?」

「国家転覆の罪を着せられてるのですよね?アストラル様は……」

「あぁ。」

当然の疑問だろう。彼は「国家転覆」の濡れ衣の着せられているその中で、旅に出るのは非常に危険なのだ。

「安心しろ。レイン。宛ならある。」

「宛……ですか?」

「あぁ。も少しでリンクできるんだ。そいつと」

アストラルから出た「宛」という言葉にレインはピンと来なかった。逆に疑問しか出てこなかった。眉間に皺を寄せ、唇に右手の人差し指を当て考えていた。その様子を見たアストラル、「考えるな。そん時になったら分かる」と言った。荒廃した世界を歩き続ける。驚くことに魔物や魔獣が近づいて来なかったのだ。

『アストラル様の強さのせいなのでしょうか...魔物達が寄ってこない...』

乾いた風が二人をまるで、拒むように吹いていた。

「馬鹿な魔獣もいるものだな。」

「!!」

二人の目の前には魔獣・カオスフェンリルがそびえ立った。禍々しいオーラ。巨大な体躯。全てを容赦なく切り裂いてしまいそうな鉤爪。赤黒い瞳。全てを噛み砕いてしまいそうな牙。口からはヨダレが垂れていた。レインはそのあまりのオーラに冷や汗をかいた。そんなレインとは裏腹にアストラルはカオスフェンリルの前に黙って立ち見上げていた。

「カオスフェンリルか。久しぶりに見たなぁ。前より少しだけ強くなったか?」

「アストラル様っ!カオスフェンリルですよ!?危険です!魔獣の中でもSSランクに当たる魔獣ですっ!!無理です!!」

魔獣にもランクがある。『G、F、E、D、C、B、A、S、SS』そして、それ以上の存在はランクすらも超越する存在『禁忌魔獣』と言われる。


G〜Bランク 冒険者が単騎撃破可能であり、苦戦を強いられない魔獣。


A〜Sランク 冒険者の単騎撃破はほぼ不可能自然の力と共鳴し、魔素を利用する魔獣。Aランク魔獣は十人係で倒すことができる。Sランク魔獣はAランクの人数から跳ね上がり百人から二百人係で倒すことができる。


SSランク 天変地異と前ではいかないが、天と地。大気に干渉し、冒険者を屠る。SSランク冒険家でも九割が相対すれば死が確定している程に強力な魔獣である。そして、このランク帯を単騎撃破したことがあるのはsheephillのみである。


禁忌魔獣 天変地異そのもの。禁忌黙示録に名前が記載される。無限の魔素に加え、魔獣・魔人の生みの親である。禁忌魔獣はこの世に一人のみ『アカシャ・アルカマル』ただ一人である。


そして、アストラルとレインの前にいるのはSSランク魔獣のカオスフェンリルだ。カオスフェンリルが遠吠えをあげた。灰色の空は、黒く染まり暗雲が広がる。「ガルルッ!」と言った瞬間、無数の落雷が二人を襲う。レインを担ぎ、まるでスケートリンクの上を飛び回るかのように落雷を避けた。

『この落雷の中を...そんな華麗に……』

「もっと落としてこいよぉおお!!!」

煽りに触発されたのか、右前足を地面に叩きつけ、地面からも黒い雷をジグザグに発生させ、アストラルに向かって進行してくる。

「アストラル様ぁああ!!」

「ひゃっははっ!おもしれぇなぁああああああ!!」

黒い雷がアストラルの腕にヒットしたかと思えば、簡単に黒い雷をアストラルは右腕一本でおよそ十六キロメートル離れた山に直撃させた。その行動はレイン美しい顔が作画崩壊でもしたかのようにアホ面になっていた。流石に口をあんぐり開け、「ヒィィン」と弱々しい鳴き声を上げていた。

「んー。強くなったと思ったけどこの程度か。」

その一言は、この緊迫した状況に削ぐまわない言葉だった。レインは「状況分かってます?」と聞いてしまった。

「あぁ、分かってる。楽しいってこと。」

「違います!!目の前にはカオスフェンリル!!SSランク!魔獣がいるんですよ!」

「あんなの駄犬だろ。」

駄犬。カオスフェンリルが人の言葉が分かるかは分からない。だが、明らかに侮辱されたということはわかったのか、吠えた。カオスフェンリルは分身し三体になった。

『戦っている最中は...まるで過去に大きな物を...罪を背負った人とは思えない程...逞しく見えるのですね...』

「三か...もっと増やしてくれりゃいいのに。まぁ、俺の知ってるカオスフェンリルとかいう駄犬は一体までしか分身出せなかったからな。褒めてやるよ。駄犬くん。」

三匹となったカオスフェンリルは咆哮した。アストラルも能力を使い反撃しようとしたその瞬間、アストラルは体が動かなった。

『なんで...動かねぇ...!!』

今まで仕えていた能力が自分に反発するかのように使用できなかった。アストラル自身自分に何が起きたのか一瞬理解できなかった。だが、カオスフェンリルから発せられた天を空を地を這う黒い雷を避けながらすぐに答えにたどり着いた。

『恐怖...か。創造、破壊、エレメンタル、錬金術、変速...それが俺の持ってる能力...エレメンタルは周りの自然エネルギーに干渉して使うから考えたこともなかった...。それ以外は俺自身から発せられる...!アカシャと破てから自分が自分を殺せないと分かってから使うのを辞めた..そして、あの時の戦いで自分の能力で仲間が傷ついて死んだ……』

「クソが……」

攻撃を交わしながら、脳内では悔しがっていた。レインはただアストラルに担がれ何もすることができなかった。

「レイン!ぶん投げるから、ちゃんと受け身取れよ!」

「え?ま、お待ちくださっ!きゃっ!!」

まるで、ボールを投げるようにレインを投げた。ギリギリ自分の身体能力で上手く着地できたが、息を切らしていた。空中にいる間、生きた心地がしなかった。投げた速度と、空中にいる間の滞空時間はレインに死を見せたのだ。

「し、、、死ぬかと思いました...」

その一言をこぼし、レインはすぐにアストラルの方に目線を向けた。目線の先には火、水、土、雷、風のエレメンタルがアストラルの周りに浮いていた。

「エレメンタル...。五原色っ!フィフス・エレメント!」

五つの属性は一つのレーザー砲となりカオスフェンリルを撃ち抜いた。一直線に放たれたレーザー砲は、元々動植物のない荒野をただの更地にした。異常なまでの広範囲かつ超絶高火力。着弾した場所はレインには見えなかったが、千キロメートル先まで飛んでいった。着弾から数十秒後、轟音と爆風が二人を襲った。

『あんなに...遠くに着弾したのに...この風圧……!?』

爆風が未だに止まない。レインはスカートと髪飾りを抑えながら岩陰に隠れていた。アストラルは左手で髪をかきあげ笑っていた。だが、脳内である人物の声が響く。

『やっと、動いてくれたね。マイヒーロー』

「…………!!」

その声の主はアカシャ・アルカマルだった。レインは突如、純粋に戦いを楽しみ彼から、殺意むき出しの雰囲気に戸惑いを、隠せなかった。

「ふぅふぅふぅ……!!」

『おやおや。怒っているようだね。マイヒーロー。動き出すには少し遅かったといっておこうかな。十五年前の傷は癒えてきているよ。レヴィ・バサラによって付けられた治癒不可の傷を覗いてね。』

アストラルは『創造』と『破壊』の二つの能力が暴発した。レインは「きゃっ!」と叫び吹き飛ばされた。何が起きたのか分からなかった。気づいた時には吹き飛ばされていた。アストラルは右から創造、左から破壊の能力が暴発した。常人には分かるわけもない、光の速さ。目には止まらない速度で二つの力が地面にぶつかり爆ぜたのだ。アストラルが立っていたところだけが円となり残っていた。砂煙や、小さな瓦礫が地面に落ち、アストラルの姿が見える。

「アストラル……様……」

「っ!なっ...すまない...少し取り乱した....。」

少し所ではないことをレインは分かっていた。だが、踏み入れる事ができなかった。ただ、ゆっくりとアストラルの逞しくも弱々しい背中に近づくことしかできなかった...。力なくその場に胡座をかいて座り込んだ。疲れ切っていた。どんな言葉をかければいいか分からないレインは優しく後ろから抱きしめた。

「…………。」

そして、二人の周りが突如白い空間に囲まれた。レインは抱きしめていた手を無意識で離してしまった。

「新手ですか!?」

「違う。」

食い気味にレインの言葉を否定したアストラル。気づくと二人は古びた神殿の書庫にいた。

「ここ……は……」

「ゾリュドゥス神殿の書庫だ。」

ボロボロな棚、古い本から新しい本まで辺り一面を埋めつく量の書庫。レインは言葉を発せなかった。見たことない本の量に....。「なんて……量……」としか言いようがなかった。

「ここにいねぇって事は、あそこに来いって事か……。」

「あそこ?」

立ち上がったアストラルは歩き出した。ずらりと並ぶ本に目を眩ませず、突き進んだ。周りを見ながら困惑しつつもワクワクしながらアストラルの後を着いて行った。

「この本達は一体...」

「ただの本だったり、人の記憶、戦いの記憶、世界の記憶とか色んな本が並んでるところだよ。」

「え?そんな本を集めてる方...一体どんな人なのでしょうか...」

「会えばわかる。」

その後会話することなく、歩き続けた。そして……たどり着いたのはとある部屋。そこには本も何も無く、ただ椅子がこちらを向いて置いてあるだけだった。

「ここに居るのですか?」

「あぁ。」

「人の気配等感じませんが……」

背後に気配を感じたレインは振り向いた。そこには誰も座ってなかったはずの椅子に、少年?もしくは青年にも見える男性が座っていた。

「久しぶりだな。ゾリュドゥス・アゴ・アルカマル。」

「久しいのぉ。ナーガ・アストラル。」

『アルカマル』その名を聞いた時、レインは戦慄した。アカシャ・アルカマルと同じ名を持っていたのだ。

「レイン。こいつは、ゾリュドゥス・アゴ・アルカマル。アカシャ・アルカマルの兄だ。昔から、俺たちsheephillに手を貸してくれてる。味方だ。」

怯えながら、アストラルとゾリュドゥスを交互に見る。「アストラル様が言うなら……」と信じ、彼の後ろに隠れ横から顔を出し、ゾリュドゥスを見ていた。

「そこまで怯えるでない。」

ゾリュドゥスというものは喋り方が年相応ではなかった。短い黒髪に整った顔立ち、身長は男性にしては小さい百五十センチ位だった。そんな彼は椅子に膝を付き、脚を組みながら話していた。

「ゾリュドゥス。頼みがある。」

「却下だ。」

即答だった。レインは驚いたが、アストラルはそうなるよなという表情だった。

「頼みは聞く。じゃが、今のお前の頼みは聞きとうないのう。負け犬目。」

「なんとでも言え。」




十五年前の盟友?とも思しき、『ゾリュドゥス・アゴ・アルカマル』という男との再会。ですが、それは望まれた再会ではなかったのです。



投稿1日遅れてしまい!申し訳ないないです!

次回更新日、3/12日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ