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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#2 スーパー女子高生、あらわる!
8/84

~ファイル8 観光PR大使~ 

   ワオオオォーーッ・・・・・・  ミャウミャウミャウーッ・・・・・・

   ブオオオォォーーーッ  ガゴン! ゴゴゴォォーーーーッ・・・・・・


 犬の遠吠え、猫の喧嘩声、そして、大きな国道をバイクや大型トレーラーが走る音が響く。

 近くには、「那須白磯駅」もあり、JRの列車も走っている。


「か、返しておくれぇーっ! お願い。その中には、孫との旅行にいくお金が・・・・・・」


 薄暗い中、銀行のATMコーナーから出てきた老婆が、か弱い声を搾り出すように、叫ぶ。

 その先には、ニット帽をかぶった長身痩躯の男と、サングラスをかけた長髪で筋肉質の男が、老婆の持っていた茶巾袋を奪い取り、大型スクーターに跨がるところだった。


「へへっ! うるっせぇよ、ババー。てめーの孫なんか、知るか! くたばっちまえ!」

「おい、二十万円も入ってんぞ! こ、これなら、ブスジマさんへの上納金、余裕だぜ!」

「ひゃぁっはっはっは! やったぜ! 銀行帰りの年寄りを狙おうっていう、おめーの案、いいじゃねーか! これで今週も、ブスジマさんに殺されずに済むぜ、俺ら!」

「ひゃははは! 楽勝だぜ! おっしゃ! もっと他のジジババ、狙うべ!」


   よた・・・・・・  よた・・・・・・  よた・・・・・・


「返しておくれ・・・・・・。お願いだから・・・・・・。こんなこと、およしよ・・・・・・」


 老婆は必死に歩き、男たちに訴えかけながら、よろよろと近寄った。


「おい、このババー、しつけぇぞ? どーすんべ?」

「事故に見せかけて、ぶっとばそうぜ。ブスジマさんがきっと、やべーことは揉み消すよ」


 男二人は、跨がっていたスクーターから降り、老婆に詰め寄る。


「返してちょうだい・・・・・・。たったひとりの孫との、思い出の旅行に行くお金が」

「・・・・・・ババー。うぜぇぞ? 死にてぇのか! うるっせぇんだよ!」

「てめーの金は、俺ら、デスアダーへのご祝儀だ! ひゃあっはぁーーーっ!」


 男たちは、拳を振り上げ、老婆に向かって一気に振り下ろした。


   ・・・・・・ヒュバッ!  ヒュンッ!  バチイィッ!  バチイッ!


「「 い、いってぇ! なんだ? 」」


 一瞬の出来事。

 男たちの顔に固いものが飛んできて、的を射抜く弾のように当たった。


「た、たわし? あぁ? なんだってんだ!」

「あ? ・・・・・・おい、なんだ、てめー? てめーか、これやったの?」


 男たちの前に、すらりと背の高い一人の少女が現れた。

 いつの間にか、茶巾袋は老婆の手元に戻っている。そして少女は、老婆をしっかりと両手で支えていた。


「だいじ? おばあちゃん。だから、ひとりで行かないでって言ったのに!」

「あ・・・・・・。き、来てくれたのかい。ごめんよ。ばあちゃん、おまえのためになぁー」

「うん。わかったから、線路向こうの交番で、お巡りさん呼んできて? わたくしが、このバカな人たちと、これからよーく話をしておくからさ・・・・・・」

「あんだ、てめー。・・・・・・おい、この女、犯して連れ去っちまおうか?」

「あ! こいつ、観光大使とかってやつじゃねぇか? ひゃっはーっ! 上玉だぜ!」

「わたくしは、あなたたちみたいな人に、この地を踏んでほしくないんだよね! いい? 悪いこと言わないから、二度とこの地域に立ち入らないでくれませんか?」


 少女は、テレビに出ていたあの、那須野観光PR大使の三島華蓮だった。

 オシャレなブラウスと、ドレスのように長いスカート。そして、背中までかかる、艶やかな黒髪。

 後頭部の桃の花を象った髪飾りからは、枝垂れ桜のような髪が数本、垂れている。

 那須白磯駅前のスーパーで、どうやら買い物をしていたようだ。長い箒と、野菜の入った袋を持っている。

 近くに人の姿は、ほぼ見えない。時間的に薄暗く、遠くに人がいるかどうかも見えにくい。


「てめー、誰に指図してんだ? 俺らにゃ、あの『デスアダー』のブスジマさんがバックについてんのを、知ってんのか? おい、こら!」

「てめー。俺らの二十万円を、どーしてくれんだ、おらぁ!」


 長髪の男は、ポケットから金属のメリケンサックを取り出し、右の拳に装着した。

 ニット帽の男は、ポケットからバタフライナイフを取り出し、刃を華蓮に向けた。


「はぁー・・・・・・。わたくし、忠告しましたからね! あなたたちは、もう、許さないよ!」


 華蓮は、買い物袋を横に置き、箒のみを手に持ち、ぎゅっと握る。


   ヒュンヒュンヒュラァンッ! ヒュヒュヒュヒュン! クルンクルルンクルン!


 その箒が、まるで曲芸のショーのように、縦に横にと回転乱舞する。目にもとまらぬ早業だ。


「なっ・・・・・・なんだ、この女ぁ!」

「薄汚い男ども。・・・・・・か弱い老人を、しかも、わたくしのおばあちゃんを襲うなんて! あと、何て言った? ・・・・・・よりによって、あのデスアダーの一味なのか、お前らは!」


   キュゥンッ! ヒュルンヒュルゥンッ! ベキィ バキィ ドガァ バチィ!


「う、うごあぁー・・・・・・」


 ナイフを持ったニット帽の男は、目にも留まらぬ速さの箒で滅多打ちにされ、昏倒。

 華蓮は、片足立ちで箒を両手で持って、体側に沿って構え、長髪の男と向かい合う。


「た、ただの観光大使女じゃねーな、てめー・・・・・・。な、なにもんだ!」

「うるさい! お前たちみたいな奴に、わたくしのことを話す義理はないよ! 黙れ!」

「てっ、てんめぇぇーっ!」


 長髪の男は、その体格と筋力に物言わせ、華蓮に向かって突進。全力で殴りかかった。


   ・・・・・・ガッ!  ギュルンッ!  バチンッ!


 くわっと目を見開いた華蓮は、箒一本で男の拳と腕を受け流し、真下から男の二の腕を一気に弾き上げた。


「・・・・・・ハアァーーーッ! ハァィッ!」


   ダァンッ  ダシュンッ!  ドッガァーッ! メキョオッ・・・・・・


 腕を弾かれた男は、急所である脇腹がガラ空きになった。

 そこへ、一気に腰を落として肘を突き出したまま、華蓮は高速で体当たりを見舞う。

 男のアバラ骨は華蓮の肘によって、数本、砕かれた。

 白目をむき、意識を失って、男はその場に崩れ落ちる。立ち上がることはなかった。


「わたくしの武術はね、お前たちみたいな人から、地域を守るためにも、磨いているの! これに懲りたら、二度と、こんなことはしないことね。八極(はっきょく)(けん)裡門頂肘(りもんちょうちゅう)』のお味は、いかがだったかなっ? ・・・・・・さぁ、お巡りさん来るから、観念しなさいよ!」


 華蓮は、箒を逆さに立て、倒れた男たちから目を離さずに、佇んでいた。

 しばらくして、華蓮のお婆ちゃんが、交番の警察官を呼んできた。駆けつけた警察官に、華蓮たちは二人で事情と状況を説明。すぐに、男たちは現行犯逮捕された。

 たった箒一本で悪漢二人を瞬時に撃退した、三島華蓮。

 その様子はまさに、第三者から見れば「悪さをする者の清掃人」といった感じだったであろう。


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