~ファイル79 毒島仁英、その実力~
ゴオオオオオオォ! パチパチ ゴオオォォ パチリッ ゴオオオオォ!
「あっつ! 熱い! ひ、火の粉が飛んでくるーっ! 熱いってば! うひー」
水穂は近くに積まれている樽の陰に隠れる。だが、なぜか炎は、そっちに煙をあげていく。
「さ、早乙女師範! いつの間にか、後ろが炎に・・・・・・」
「むぅ・・・・・・。ガソリンが、流れて広がったのか? ・・・・・・すごい炎と煙じゃ・・・・・・」
「この熱では体力の消耗も激しいです。・・・・・・水穂は風上に移動しました。どうします?」
「そ・・・・・・そうじゃな・・・・・・。それがよかんべ。小紅たちに、すぐ加勢できる位置を見ながら、移動じゃ・・・・・・」
澪と源五郎も、炎が向かない風上へゆっくり移動。
炎の壁からは、いくつもの火の粉が舞い上がる。時にそれは炎の渦を宙に生み出し、そこから弾けてまた飛び散ってゆく。
パチパチ ゴオオオォ ゴオオォッ・・・・・・
炎の熱が、上がる。辺りには、陽炎がゆらゆらと立ち始めている。
小紅は、その猛火に囲まれた中で、じっと毒島と睨み合っている。動かず、瞬きもしない。
「(小紅チャン・・・・・・)」
「(小紅っ)」
華蓮と苺も、小紅のその様子を、横目でちらりと見ている。
みかんは、頬に汗をつうっと垂らし、毒島の出方を窺っている。
火の粉が、風で舞い上がる。
いつの間にか空は一面が雪雲で覆われ、純白の空に向かって炎の壁から朱色の火の粉がぶわっと噴き上がり、激しい音を立てて燃え広がる。
その火の粉の一部が、縛られた優太の足下へ、ふわりと舞い落ちた。
「さて・・・・・・。サービスタイムは終わりました。・・・・・・ボクの優しさ、わかりましたか?」
サファイアの指輪をぎらっと光らせ、すっと人差し指を立てる毒島。
「わからないね。・・・・・・あたしは、お前を人とは思ってないから!」
一重瞼の黒い瞳に炎を映し、毒島へ人差し指を突き出す小紅。
「やれやれ・・・・・・。ボクの国内征服計画も、まさか、こんなイレギュラーがあるとはねェ。とんだタイムロスですよ。組織の戦力も大幅に失いましたしねェ・・・・・・」
「大幅にじゃないよ。今日で、デスアダーは消滅。根絶やしだ! あたしの手でね!」
「まだそんな戯言を。・・・・・・いちいち・・・・・・癇に障る小娘だこと・・・・・・」
毒島は、小紅の顔を見て、眉間の皺をさらに増やす。
「二斗刑事! あちこちに、ガソリンが飛び散って、炎が! あっちにも大きな火柱が!」
「むぅっ! いかん! 毒島や早乙女さんたちは、あの炎の中か! くそぉっ!」
警察隊は、デスアダーの雑兵を次々に逮捕してゆく。
次第に、その数は、警察側の方が優勢になってきていた。
パチッ パチパチッ ゴオオォッ・・・・・・ ゴオオォッ!
「うえーっ! ガソリン臭いよー。・・・・・・熱いー。これじゃ、また私、死んじゃうよー」
「頑張れ、水穂。わたしも熱いのよー。しかし、小紅サン、よく平気だな・・・・・・」
「す・・・・・・凄まじいほどの集中力じゃ。・・・・・・小紅は、熱さなど気にしてないかもしれん。ずっと、あの男を睨みつけてるわぃ・・・・・・。・・・・・・小紅っ・・・・・・」
水穂は澪や源五郎と、炎の煙が届かない位置にいる。だが、周囲の炎が絶えず巻き上げるその熱は、たとえ風上にいたとしても、普通ではない熱さだ。
・・・・・・トッ トッ トッ トッ
毒島が先に、動いた。
だが、その足音は、小紅たちとはまるで別の方向へ。
「なに、あいつ? どこへ行くの?」
苺が、毒島を怪訝な顔で見つめている。
「まったく・・・・・・。ボクの服が、熱で傷んでしまいますよ。・・・・・・まァ、もしそうなったら廃棄処分しますけどね。・・・・・・ほっほっほ。使えなくなったものは、廃棄しないとねェ」
ゆっくりと、毒島の腕が伸びる。そこには、意識を失って倒れているブンがいた。
・・・・・・がしいっ
毒島の掌は、ブンの首を掴んだ。そして、ぐいっと引き上げる。
「な、何する気? おい、毒島! ・・・・・・変なことはやめろ!」
小紅が、片眉をぴくりと上げ、毒島へ叫ぶ。
華蓮やみかんは、これから何が始まるのかわからず、身構えている。
「ほほほ。言ったでしょう? 使えなくなったものは、廃棄処分・・・・・・ですよぉッ!」
「な! やめろ、毒島! おい! このやろぉー・・・・・・」
・・・・・・ギュムウッ ゴギャアアァッ! ごとりっ
「「「「「 !!! 」」」」」
「ひ、ひぃーーーっ! あ、あれは完全に、死んだでしょ! ね、ねぇ? ミオ!」
「・・・・・・おそらく・・・・・・。な、なんてことを・・・・・・」
毒島は、引き上げたブンの首を握りしめ、そのまま手首を捻った。
ブンの首は、骨の折れる鈍い音を立て、頭ごと真横に歪む。ブンは、だらりと舌を垂らし、その場で絶命した。
これには、さすがの小紅たちも、絶句。
「な・・・・・・っ! あの元軍人の首を、か、片手で! なぜ、あんな力が・・・・・・」
華蓮は、棒を構えたまま、毒島の怪力に青ざめている。
「おやァ? 何をみなさん、驚いているのです? ボクは、みなさんのことも、こうするつもりですよ? ・・・・・・廃棄処分の、デモンストレーションですよ。ほっほっほ・・・・・・」
毒島は、ブンの亡骸を足で蹴り飛ばす。
「(い、異常なほどの力だ。普通、片手で首なんか折れないでしょうよ!)」
小紅も、黙ったまま、毒島の出方を窺う。
「そうだぁ! そちらの、三島華蓮・・・・・・さんでしたかねぇ? 先程、ボクの力について、だいぶ不思議がってましたからねェ。話してあげますよ・・・・・・。死ぬ前ですしねェ?」
両腕をばっと広げて、鋭い犬歯を光らせて微笑む毒島。
そして、糸のような細さの左眉上に指を当て、渦巻き型の刺青をなぞり始めた。
「この刺青の中央は、弾痕なんです。・・・・・・ボクがデスアダーを結成する前、ある組織を襲撃した時に、ヘマをして撃たれましてねェ? 恐ろしく痛かったですよ、それは・・・・・・」
青い目を光らせて、笑いながら語る毒島。
小紅たちは、ごくりと生唾を飲み込み、その話を聞いている。
「でも、奇跡的に弾が脳を突き破らず、止まったんですよ。未だに、ボクの頭の中には、銃弾が入っています。・・・・・・でも、それから、感情のコントロールが効かなくなるし、異常なほど筋力が強まったままでしてねェ? 絶えず、火事場の馬鹿力状態なんですよ」
「な、なんだって・・・・・・。だからさっき、平手打ちだけで、水穂の心臓を・・・・・・」
「ボクはそれ以来、銃火器というものは嫌い。困りましたよ、この壊れた脳と筋力には。日常生活にも多少、影響がありますからねェ・・・・・・。まぁ、銃火器などに頼るのは、ボクの暴力の美学に反しますから。・・・・・・そうそう、この星のピアスは、その頃の名残です。ボクにとっては、良くも悪くも、忘れられないことでしたからねェ・・・・・・」
「毒島! お前の昔話をこれ以上聞くつもりはない! あたしが、ぶっ飛ばすからね!」
「小紅! 毒島の異常な力は、全て致命傷になりかねない! 集中力を研ぎ澄ませよう!」
「苺チャンの言うとおり。水穂チャンの心臓を一撃で止め、おじいさまを軽く弾き飛ばすほどの力! ・・・・・・気をつけないと!」
苺と華蓮が、小紅の両脇で構える。
「早乙女! 相手はどんな武術や格闘技を身に付けているか不明! 気をつけろ!」
みかんも、腰を落として拳を握りしめる。
「これは大笑いだ。武術? 格闘技? ボクがそんなもの、やるわけないでしょう?」
「な、なに!」
「アナタが、安藤みかんですか? ・・・・・・武術だの格闘技なんて児戯、このボクがやるわけない。そんなもの、弱者が一時凌ぎでやるもの。強者には無駄で、必要ありませんねェ」
「ぶ、武術や格闘技を身に付けていないだと? し、素人・・・・・・ってことなのか?」
みかんは構えたまま、困惑した表情を見せる。
「おバカですねェ。喧嘩が一番強い人は、喧嘩に慣れた人。アナタは、格闘技をやっているから喧嘩にも勝てると思う、典型的なおバカさんなのでしょうねェ? ほっほっほっほ」
「バカにするな! では、お前に、武道の技の威力を見せてやるからっ!」
みかんは、ぎりっと歯を鳴らし、目を吊り上げて毒島へ飛びかかった。
「みかんっ! ・・・・・・待って! みかんっ?」
小紅はみかんを必死に止めようとした。
しかし、止めようとしたときには既にみかんの左右の正拳は空気の渦を作り、毒島の顔面へ放たれていた。
「せええぇやああぁぁーーーーーっ!」
ドギュルウゥッ シュバアァッ! ドガアアァーーーッ・・・・・・
火の粉がぱちりと舞い散る。
みかんが放った渾身の突きは、二発とも毒島の左頬へ直撃。
「これが、空手の正拳による、二連突きだ! お前がバカにしている、武道の・・・・・・」
「・・・・・・。・・・・・・武道の・・・・・・なんですかァ?」
「な・・・・・・っ!」
みかんの背筋が凍りつく。
拳の先にぎらりと光る青い目を見たみかんは、慌てて拳を引き戻し、バックステップして構え直した。
「う、嘘だろう! 私の全力の突きを・・・・・・。はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
汗をだらだら垂らすみかんは、周囲からの熱で、呼吸も乱されている。
「ボクは、痛みもまともに感じることはありませんからねェ。もっとも、痛みを感じさせてもらう前に、ボクの目の前の人はいつも、死んでいますが。ほっほっほ・・・・・・」
「(くっ・・・・・・。なんだ、こいつは!?)」
みかんは、毒島の妖しい殺気に気圧され、目が震える。
「みかんの突きでもびくともしないなんて・・・・・・。でも毒島! あたし相手でも同じことが言えると思うの? いつまでその余裕をかましていられるかな?」
小紅は、渦巻く炎を瞳に映し、毒島の圧力を真っ向から気迫で押し返す。
苺と華蓮も、その小紅の気迫を受け取り、闘気を全身に漲らせた。
* * * * *
「アナタ、さっきから耳障りですね。ボクとは何をどうしても、相容れない人だ」
「お前となんか、相容れるわけないだろ! この、ろくでなしが!」
「常盤優太さんも、どうしてこんなおバカと一緒にいるんだか。・・・・・・気の毒ですねェー」
「お前なんかにくっついてる連中の方が、気の毒だよ! 悪行や犯罪ばっかでね!」
「・・・・・・早乙女小紅さん。アナタ・・・・・・どこからそんな虚勢を張る力が出るんでしょう?」
「知らないね。虚勢じゃないし。あたしは、お前をぶん殴りたくて、元気が出てるんだよ」
「いっちいち・・・・・・イラつきますね。・・・・・・このぉ・・・・・・生意気なガキがぁーーーっ!」
・・・・・・トトッ トトトッ トトトトッ ドギュンッ!
毒島は、ああ言えばこう言う状態の小紅へ、ついに怒りを露わにして襲いかかってきた。
「来やがったっ! みんな、毒島のパワーは受け止められない。躱す、避ける、受け流すの手法で! 絶対に直撃をされちゃダメだ! やるよっ!」
「よっしゃ! デスアダーとの因縁に、ウチも終止符を打つよっ! 毒島仁英、覚悟ぉ!」
「わたくしも、デスアダーへの恨み、今日でぱあっと晴らしましょう! 毒島を倒して!」
「早乙女師範! 小紅サンを援護してきます! ここで、水穂と休んでてください!」
「あ! ミオーっ! 私もやるってばぁ! みんなの前でオッパイ丸出しにされて、あんな恥ずかしいままでいられないよ! 毒島の、ばっかやろーっ! 私もやるーっ!」
澪も駆け出し、小紅たちに合流。
水穂も、樽の陰から一斗缶を持って飛び出し、澪に合流。
「・・・・・・やれやれ・・・・・・。うぬぅ・・・・・・わしも、やらにゃならなかんべ!」
源五郎もよたよたと水穂の後を追い、小紅たちに合流。周囲はさらに炎に囲まれている。
七人は、小紅へダッシュする毒島を囲むような陣取りで、自然と円形に位置取った。
「ハアアァーーイッ!」
ヒュルン ヒュンバババババッ バチバチバチバチイッ! ドガガガガガッ!
華蓮の棒術による高速連打が炸裂。
棒の両端を入れ替えながら、毒島の顔や胸を激しく打ちつけてゆく。
しかし、確実に直撃をしているが、まったく効かない。毒島は、瞬き一つせず笑っている。
「ふん・・・・・・。なにを木の棒で遊んでいるんですか? 小賢しいですねェ!」
毒島は小紅から華蓮に標的を変え、猛烈なパンチを振り回す。
一発、二発、三発と振り回してゆく。華蓮は足捌きと棒をうまく使い、避ける。
「せええぇやああぁぁーーーーーっ!」
ダシュンッ! ドバババァンッ! バキイッ! ドパアァーーーンッ!
華蓮を追う毒島の後ろから、みかんがワンツースリーの高速連突きと回し蹴りを背中に入れる。
そして、強烈な前蹴りを毒島の背骨に見舞った。
「・・・・・・何か、しましたか? ・・・・・・蚊トンボのような虫けらが!」
振り向き、ぎろりと視線をみかんに合わせ、拳をフルスイングで振り回す毒島。
みかんはジグザグにバックステップし、毒島の振り回す拳を避ける。
「はあいやぁーーーっ! 大円流合気柔術、『舞燕』っ! そして『芽吹』っ!」
タァンッ シュンッ ドパパァンッ! グンッ バチイイィィンッ!
苺の跳び蹴り「舞燕」が、みかんを追う毒島の左顔面に直撃。
着地後すぐに、下から打ち上げるように二つの拳を突き上げる「芽吹」が、毒島の下顎を打ち上げる。
「・・・・・・ずいぶんと、変わった踊りを踊るのですねェ?」
にたりと笑い、毒島は苺へ向かって真下にパンチを振り降ろす。
そのまま拳は地面の岩を大きく砕き、さらに苺へ向かって左右から振り回される。
苺は後ろに大きく転がり、ぽんっと跳んで後退。毒島の間合いから離れた。
「せやーーーーーーーーーーっ!」
「こんにゃろーーーーーーーーっ!」
シュバッ ドスウッ バキイッ バチイイィィンッ ドガアッ!
ガイイィィンッ バチンッ バチバチバチンッ ガイイィンッ!
左右から、澪と水穂が毒島を挟み撃ちするように仕掛ける。
澪の足刀蹴りや裏回し蹴りが、毒島の後頭部や右側頭部に直撃する。だが、ダメージはない様子。
水穂は一斗缶を毒島の左側頭部へ叩きつけると、脇腹へ四発の蹴りを叩き入れ、また下から一斗缶を振り上げて顎を打ち抜く。しかしやはり、ダメージは見えない。
「賑やかで、せっかちな小娘どもですねェ? 変わったオモチャだこと!」
毒島はその場で回転するようにして、掌と拳を振り回す。澪はさっと横へ躱し、水穂はそれに対して「もう死にたくなーい」と叫びながら、一斗缶を囮にして放り投げ、自分は後ろへ大きく転がって回避した。
「ええぇーーーーいあっ!」
「てえぇああぁーーーーーーっ!」
ダダダダッ ドスウッ ドグウゥッ!
ギュウンッ シュバアッ! ドバキャアアアァーーーッ!
転がった水穂に目を移した毒島の前後から、源五郎と小紅が同時攻撃。
毒島の背中へ、源五郎は重く芯に響く正拳突きを二発叩き入れる。
正面からは、助走と勢いをつけた踏み込みで、小紅が毒島の顔面へ強烈極まりない横蹴りを深く蹴り込んだ。
「・・・・・・。・・・・・・終わりましたかねェ? ・・・・・・こんなものですか?」
「「 なっ!? 」」
数秒間を置き、顎が撥ね上がった毒島は、青い目玉をぎょろりと動かす。
これほどの打撃を叩き込まれても、全く効いていない様子だ。
すると毒島はくるりと向きを変え、源五郎へダッシュ。拳を大きく振り上げ、野球のピッチャーがボールを全力投球するかのようなフォームで、襲いかかる。
「・・・・・・む、むうぅ!」
源五郎の下がるスピードを上回る速さで、毒島は拳を振り回してゆく。
「ほっほっほ。・・・・・・ボクに敬老精神はありませんからね? お年寄りでも、関係なく殺させて頂きますよ!」
よたっ・・・・・・ ブウウウゥンッ・・・・・・
「(い、いかんっ!)」
姿勢を崩してしまった源五郎には、毒島の拳が真下から振り上げられるのが見えていた。
咄嗟に両掌を重ねて、顔の前に置く。そして、源五郎はタイミング良く後ろへ跳んだ。
「やばい! じーちゃんっ! 直撃はだめーっ!」
ドッギャアァッ! バキャアッ ドンガラガッシャァンッ・・・・・・
「じーちゃんっ!」
「早乙女師範ーっ!」
「せ、先生ーーーっ!」
「ぐ・・・・・・。ぐぉ・・・・・・。い、威力を殺しても、これほどとは・・・・・・」
毒島のパンチが振り抜かれ、源五郎は樽や一斗缶が積まれた山に大きく吹っ飛ばされた。
小紅、澪、水穂の叫びが同時に響き渡る。毒島は、舌をぺろりと出し、不敵に笑う。
「こっ、こんのやろぉーーっ!」
シュバッ! バキャアアッ バキャアッバキャアッ!
「ボクには無駄ですねェ」
小紅の怒りの正拳三連打が毒島の顔を捉えるも、まったく効かない。
「せやーーーーーーっ」
「やあぁーーーーーっ」
ドガアッ! バキャアッ!
「マッサージにもなりませんよ・・・・・・。小うるさい連中ですねェ」
澪と水穂の回し蹴りが腹と背中に入るも、毒島はにやりと笑っている。
「ハアアァーーイッ!」
「はあいやぁーーーっ!」
ダァンッ ドギュンッ メキョオッ! バキャアッ!
「ほっほっほ。何なんですか、それは?」
華蓮の裡門頂肘と、苺の「茨槍」による強烈な肘の挟み撃ちが両脇腹に入る。
しかし、毒島は妖しく笑うだけ。
「せえぇやあぁーーーーーっ」
シュンッ ドバババァンッ ズババババンッ!
「だから、無駄なことですねェ・・・・・・」
みかんの上段と中段への連突きも入るが、毒島はまったく防御もせずに立っているだけ。
「てえぇああぁーーーーーーっ!」
「せやーーーーーーーーーーっ!」
「やあぁーーーーーーーーーっ!」
「ハアァイィーーーーーーッ!」
「はあぃやあぁーーーーーーっ!」
「せええぇやああぁぁーーーっ!」
バキャアッ! ドガガガガガッ! ドバキャアッ! バチバチバチンッ
ボカボカボカァッ! ドパアァーンッ! ズバンズバンズバンッ!
ビシバシビシイィッ! バキャアッ! ドバババァンッ!
パパパパァン! パパァンッパパァンッ ズドォンッ! ズババババンッ!
六人で取り囲み、毒島へ一斉攻撃を見舞った。
誰かが技を仕掛けるたびに、周囲の炎が揺らめいて、火の粉が大きく舞う。
前後左右の六人に、目をそれぞれ合わせ、ぎらり、ぎらりと目玉を動かす毒島。
技が打ち込まれるたびに、妖しく笑う。誰かが気合いを発するたびに、不敵に笑う。
小紅は、何度技を打ち込んでも効いていない様子の毒島に、苛立ちを隠せない。
「(くっそぉ・・・・・・。はぁ、はぁ・・・・・・。なんで効かないの? おかしいでしょ!)」
「ふふん・・・・・・。おっ?」
毒島が、口元を指でさっと拭った。その指には、赤紫色のシミが。
「へぇ・・・・・・。このボクが、唇から血を滲ませたなんてね・・・・・・。デスアダーの者たちがこんな姿を見たら、さぞ驚くことでしょうねェ・・・・・・。ほっほっほ。おかしいや!」
小紅たちの攻撃を受け、唇から血を滲ませる毒島。
しかし、それでも毒島は、不気味に笑っているのみ。
「(な、なんなんだこいつ! あたしたちがこれほど本気でやっても、その程度の傷しか負わないなんて・・・・・・。打たれ強いにもほどがあるよ!)」
「ボクが自分の血を見るのは、額を撃たれた時以来だよ。・・・・・・そろそろ、遊ぶのも飽きてきたかい? これでも、デスアダーを今日、潰せると思うの?」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。ふざけんなっての! お前、あたしたちの技を受けるだけ受け続けてるけど、いつか立てなくなるからね?」
「まだ言うのですか? ・・・・・・ほっほっほ。・・・・・・じゃあ、ボクがその『いつか』になる前に、終わりにしてあげましょうかねェ?」
・・・・・・トトッ トトトトッ ドギュンッ!
それまで攻撃を余裕で受け続けていた毒島が、一気に踏み込み、みかんの前へ飛び込んだ。
「な・・・・・・っ!」
みかんは一瞬、反応が遅れた。毒島が拳を振った直後に、急いで両腕を十字に重ねる。
ブビュウンッ! ドゴオォ! メッシャアアァーーッ!
「うっ・・・・・・うぅあーっ!」
「みかんーっ!」
・・・・・・ドンガラガッシャァンッ ドゴォンゴロンゴロン ドガァ
防御をしたものの、みかんは毒島のフルスイングされた拳で左腕を折られ、源五郎が吹っ飛ばされた場所へ、同じように大きな破壊音を立てて吹っ飛ばされた。
「・・・・・・う、うう・・・・・・。・・・・・・腕が・・・・・・」
「・・・・・・だ、だいじか! ・・・・・・いま・・・・・・わしが、応急手当を・・・・・・」
崩れた樽や一斗缶の前で、額から血を流し、左腕を押さえるみかん。源五郎が服の袖を引きちぎり、近くにあった木の棒を添え木にし、みかんの腕へ巻きつけた。
「(う、うあぁ・・・・・・。お、恐ろしすぎるよ。小紅ちゃん、どうか、無茶しないで・・・・・・)」
ロープで巻かれた優太は、転がったまま、小紅たちの壮絶な死闘を見つめていた。
源五郎、みかんがやられ、五人はぎゅっと奥歯を噛み、大量の汗を流す。
地獄の業火のような炎の壁は、また一段とその火力を増し、燃え広がってゆく。




