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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#2 スーパー女子高生、あらわる!
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~ファイル6 早乙女小紅 vs 朝霧苺~ 

「苺! あたしとあんたは、今日さっき会ったばっかりだし、手合わせって言っても、空手と柔術じゃ、だいぶ勝手が違う。手合わせの簡単な申し合わせは、どうすんのさ?」

「うーん。とりあえず、当て身技は、軽く当てればよくない? あ、顔は、寸止めでね! 投げ技は、ここ板の間だし、普通にやろうかなー。関節技や絞め技は、まぁ、適当!」

「適当、って・・・・・・。まっ、いいや。細かく決めても面倒だね。・・・・・・それに、あんたがあたしに、古流柔術だか合気だかの技が、簡単に決められると思えないしー?」


 小紅は、苺を言葉で軽く挑発し、誘いをかけた。その誘いに対し、苺は笑って受け返す。


「ふふふっ! 自信たっぷりなんだね! ねー。小紅はさ、ウチの大円流合気柔術が、ただの古くさいだけの武芸だと思ってない? あくまでも、ウチのは、伝統実戦武術よー?」

「んー? ・・・・・・まぁ、そーだな。古流柔術じゃ、試合も無いんでしょ? だったら、二人組でやる『組型稽古(くみがたけいこ)』が中心なんだろうし。だいぶ、古めかしい印象ではあるけどなー」

「やっぱり、そうなんだー? ふふふーっ。ま、楽しみにしててよー」

「なんだ? ・・・・・・どれ。話してる時間も勿体ない。とにかく手合わせしてみようよ?」

「ワクワクするね! 早乙女小紅がどれほどの腕前か、楽しみ! さ、始めようねっ!」


 苺は、両掌を楓の葉のように開き、左足をすっと後ろに引き、右足を前にして斜に構えた。

 両手は、肩の高さとみぞおちの高さに置き、掌を前に向けて開き、背を伸ばして佇む。

 対して、小紅は、右足を後ろに引き、左足が前。両拳を軽く握り、左拳を肩の高さ、右拳をみぞおち前に構える。そして、ぐっと腰を落とす。


「(! あたしが思ってたイメージと違う! 柔道みたいな組技主体の構えというよりも、苺のこの構えは、むしろ、剣道や空手に近いんじゃないの? なんで? 打撃もあるっていうの?)」


 苺の構えを見た小紅は、迷った表情で、頬に一滴の汗を垂らした。


「大円流合気柔術の基本構え『自然(しぜん)(だち)』だよっ? それが、小紅の空手の構えなのかぁ! ふふふっ! 似たような構えだねー? 手を握ってるか、開いてるかだけでさ?」


 さっきまで、自分とじゃれ合っていた目と違う。道場の端で二人の構えを見ていた優太は、そう思った。

 ただ静かに、優太は目の前で闘気を漲らせている二人の女子を、じっと見ていた。


「(こ、この子っ! いつの間にか、気迫というか、オーラが倍くらい増してる。いや、これは、殺気!?)」


 小紅は、いつの間にか鷹のような鋭さに変わった苺の目を見て、片眉をぴくりと上げた。


「(あたしが、迷うなんて・・・・・・。・・・・・・どうせ手合わせだ。こっちからいくか!)」

「(んっ? お? 一気に目つき変わるんだぁ、小紅! これは迷わず一気に来るな?)」


 その時、小紅の黒帯が、柳の葉のようにぶわっと揺れ動いた。


「てぇああぁーーいっ!」


   ダンッ!  ギュンッ  シュバアァッ!  シュバアァッ!


「(! うっそぉ! は、速ぁーっ! これが早乙女小紅の動き! すごぉい!)」


 電光石火のごときスピードで放たれた、小紅の二連突き。

 二メートル程あった間合いは、一歩踏み込むだけで一気に詰まってゼロに近くなる。

 小紅の放った両拳は、一気に苺の目の前に飛んできた。


   ススススッ ピシイッ!  ・・・・・・パシイッ!


「え!」

「びっくりしたーっ! ふふふふっ! 勉強になるぅ! これが、空手の突きかぁ!」


 苺は、床を滑るような足捌きで見切り、小紅の突きを掌で上下に払いのけた。

 

「(あたしのワンツーを難なく捌くなんて! しかも、袴で足の動きが見えないから、いつ間合いを切ったのかもわかんなかったな・・・・・・。へーぇ、やるじゃん!)」

「(思った以上に、動きに無駄がなく、速いんだなぁ! これは、確かに、すごいや!)」


 再び構え合い、にやっと笑う二人。

 小紅も、いつもと勝手の違う「武術家」相手に、ちょっとだけ楽しそうな表情。


「(あたし、古流柔術なんかと、試合したことないもんなー。それにしても、競技試合がないくせに、今の突きを冷静に捌けるってことは、苺は打撃慣れはしてるってことか)」


   ふわっ・・・・・・  ススススススーッ・・・・・・


 ノーモーションで、今度は苺が小紅の間合いへ一気に入った。


「(え! なに! なんか・・・・・・まずい!)」


   ・・・・・・シュバアァッ!  パシイッ! パシイッ!


「あ! つ、掴みっ?」


 間合いに入られ、危険を察知した小紅は、すぐさま右の突きを苺の胸元へ放った。

 しかし、それを読んでいたかのように、苺はぺろっと舌を出して、小紅の突きを両手で掴んだ。


「ふふふー。つーかまえた! 小紅、覚悟! ・・・・・・はいやぁーーーっ!」


   ・・・・・・きゅるっ  ぎゅっ  グルウゥーーーンッ!  ぶわあぁっ!


「(なっ、なんだこりゃぁーっ!)」

「こ、小紅ちゃんーっ!」


 苺の気合い一閃。優太も、慌てて叫ぶ。

 小紅の突きを掴んだ苺は、まるで社交ダンスでも踊るように、滑らかに左右の足で円を描くように動いた。小紅は手首をがっちりと固められ、振り回されるようにして、その勢いで床から片足が浮く。


「くっそぉーっ・・・・・・。・・・・・・やーっ!」


   ・・・・・・グンッ  びゅんっ!  ばっ!


 投げられる直前、小紅は手首を返して拳を思い切り引き戻し、苺の技からなんとか逃れた。


   ダダンッ!  ・・・・・・トンッ


「はぁーっ・・・・・・。なによ今の技! か、間一髪! 危うく投げられそうだったよ!」

「おぉ! すごい! ウチの得意な、関節技と投げ技の複合、『(すい)(れん)』を抜けるなんて!」

「おあいにく様だね! 糸恩流空手にも、投げや関節技は、いくつもあるんだよ?」

「へー。そぉなんだ! 空手って、突きや蹴りだけかと思ってたぁ! もっと、見たい!」


 目をさらに輝かせる苺。ものすごく楽しそう。小紅は、表情が強ばっている。


「(な、舐めてたわけじゃないけど・・・・・・。古流柔術、すごいな。しかも、どんな技が出るのか、まったく見当も付かないね。ますいな、これ。・・・・・・でも、面白い!)」


 空手と柔術。剛と柔。

 女同士の気迫がぶつかる、スーパー女子高生同士の手合わせは、まだまだ続く。



     * * * * * 

     


「てぇああぁーーっ」


   ・・・・・・キュンッ!  ドシュンッ  ベシイィィッ!


「(うっ! ・・・・・・す、すっごく重い蹴りぃ! ウチの体重じゃ、受けきれない!)」

 

 凄まじい勢いの、小紅の横蹴り。両腕で苺は受け止めたが、大きく後ろに吹き飛んだ。


   ・・・・・・しゅっ


「! あ、あっぶなぁっ! また、掴みか!」


 受けてすぐに、小紅の蹴り足を掴もうとする苺。さっきの技で学んだのか、小紅もすぐに掴まれないように足を引き戻した。


「・・・・・・あー、痛かった! 腕で受け止めたのに、衝撃がお腹を抜けて背中まで来た!」

「それが、空手の蹴りってもんだよ! もちろん、同じことは突きでもできるけどな!」

「蹴りねー。いいなぁ、今の技。ウチの技術に、そこまでの派手な動きの足技、ないやー」

「・・・・・・そこまでの、ってことは、蹴りがあることはあるの?」

「見せよーか? 大円流の足技! ちょーっと、痛いけど我慢してねー」

「ふーん。それがあたしに、届くんならね! やってみなよ!」


 いつの間にか二人は、今日初めて会ったとは思えないほど、距離感の近い雰囲気に。

 苺は、小紅の技ひとつひとつに喜び、小紅もまた、苺の未知なる技に喜びを感じていた。


   ・・・・・・ススゥゥーーッ・・・・・・  トトォンッ!


「(また、この足捌きで一気に踏み込んできたか! 苺の踏み込みも、速いな!)」

「はぁいやーーーーっ!」


   ・・・・・・グッ  キュイィンッ!  キュイィンッ!


「(! なっ、なんだこの突き! 尖った握り方! 中高一本拳(なかたかいっぽんけん)かーっ?)」


 小紅のお株を奪うかのような、高速の突き。しかし、苺の拳は、握り方が中指の関節を突き出したような形だった。その拳で、小紅の腕の付け根と首の付け根を狙ってくる。

 後ろに一歩下がり、小紅は苺の突きを柔らかく受け流した。弾き飛ばさず、緩やかに。


   ・・・・・・ドグッ  バチッ!


「! い・・・・・・いったぁーっ! うぁーっ・・・・・・。ス、スネに蹴り入れた? いま!」

「ふふっ。これが、ウチの大円流にある足技十五箇条のうちのひとつ、『草刈(くさかり)』だよー」


 突きに気を取られ、前足のスネを思い切り蹴られた小紅。大きく下がって、構え直した。


「でも、びっくり! ウチの急所への当て身を、軽く流したね? さっすが、空手だね!」

「糸恩流の、『流水』って技術だよ。あんたの突きも、まさか、一本拳とはなー・・・・・・」

「ふふふっ! 大円流は、空手と違って、『(やじり)』って拳で、ツボに当て身を入れるんだー」

「さっきの草刈って技、あれで相手の気を引いた隙に、掴んで投げて締め落とすんだろ?」

「すごぉい! さすがぁ! そこまでわかっちゃったかー。小紅、センスいいね!」

「・・・・・・あたしも実戦で、似たようなことやろうと思えば、迷わずやるしなー。しかし、これは確かに、そこらのチンピラでは、あっという間にあんたにやられるだろうねー」


 両者、実力は拮抗。相性的に、関節技や投げ技に長けた苺が、どちらかと言えば優勢か。

 二人の手合わせを、優太は冷や汗を垂らしながら瞬きもせずにずっと見ている。

 いつの間にか外は真っ暗。道場の明かりが、煌々と外に漏れている。

 窓の外には、中を覗く二人の影が。二つに結った髪の人影と、短い三つ編み眼鏡の人影。


「・・・・・・す、すごくない、ミオ? あの人、小紅センパイと互角に戦ってる! 何者?」

「なんで道場から音がするのかと思ったら。・・・・・・も、もう少し、見てみようか水穂」


 そっと、窓の外から小紅と苺の手合わせを見つめている水穂と澪。

 彼女たちも、初めて見る古流柔術の動きと、それを相手に苦戦する小紅の姿に、釘付けだった。

 まだまだ、二人は、手合わせを楽しんでいる。止める気配は感じられない。


「てあああぁーーーっ!」


   シュバアァッ!  バババババッ!  ・・・・・・ガッ! ガガッ!


 小紅の高速二連打を、片方ずつ絡め取る苺。そして一気に潜り込み、小紅を担ぎ上げた。


「はぁいやーーっ!」


   ・・・・・・グゥーンッ!  ギュオォッ!  ドッダァァーンッ!


「い、いったぁーっ! ・・・・・・か、変わった背負い投げだな、今のー・・・・・・。効いたぁー」

「大円流の十字背負い投げ、『辻車(つじぐるま)』だよぉ! 小紅の突きもさ、速くて掴むの大変だぁ!」

「・・・・・・まっだまだぁ! 楽しくってしょうがないよ! てぇああぁーーいっ!」


   ギュンッ!  ベシイッ! パァン! ベシイッ! シュラッ ドカァッ!


 床を蹴り、素速い前蹴りと回し蹴りを高速で蹴り込む小紅。そしてさらに、足の軌道がS字を描き、苺の背中へ蹴り込んだ。

 さすがに苺も、この変則的軌道の蹴りは防ぎきれなかった。


「な、なに今の蹴りーっ! まったく、軌道が見えなかったぁー。すごく効いたし!」

「『裏回し蹴り』ってんだ! あたしも、めったに使わないけどね!」

「もっと! もっと見たいよ、空手の技! 突きでも蹴りでも、何でも仕掛けて!」

「そっちこそ! 古流の秘技、あたしにどんどん出しなよ! 面白いんだよー」


   バチイッ!  ガシッ  ダァーンッ!  ドカッ  ヒュヒュンッ! パァンッ!


 小紅が突けば、苺が掴んで投げる。苺が動けば、小紅が蹴りで吹き飛ばす。

 さらに五分、十分、十五分。二人は時が経つのも忘れたように暴れまわり、汗だくになっていた。


   ざし  ざし  ざし・・・・・・


「うぃー。なぁんで、きょう、道場の電気がついとるんだべー? なんだや? 小紅が稽古でもしとるんか?」

「あ・・・・・・。さ、早乙女先生! えーと、これはー。・・・・・・なんでしょうねっ?」


 源五郎は、水穂と澪の顔を見てから、ふらふらしながら道場の中へ入っていった。すると、目をぱちくりさせる。

 眼前で繰り広げられている、小紅と苺の姿と動きを見て、源五郎は一気に酔いが醒めた。


「(な、なんと! あの動き・・・・・・。大円流合気柔術ではないかっ! な、なぜここに!)」


 二人は源五郎に気づいていない。優太は苦笑いして、ぺこりと源五郎に頭を下げた。

     

「さぁ、苺! 次はどんな技を出すんだ? 面白いな、大円流合気柔術!」

「ふふふっ! ウチも、空手に対する見方が変わったよーっ! まだまだ、いくよーっ!」

「・・・・・・だめだべ! そこまでじゃっ! やめぇぃ!」

「「 え! 」」


 源五郎の大声が、小紅と苺を、その場に縫い付けたかのように居着かせた。


「じ、じーちゃんっ! ・・・・・・え? うそ! もうこんな時間じゃん!」

「あららー。ウチも、熱中しすぎちゃった。こんな時間じゃぁ、こりゃー、お母さんに怒られるなー」


 我に返ったかのように、はっとする小紅と苺。


「・・・・・・ありがとうございました、早乙女小紅さんっ! いい手合わせでしたー」

「あーあ。じーちゃんが水差すから、終わっちゃったじゃないか」

「バカタレ。・・・・・・小紅、この子は、なんじゃ? どういうことだべ?」

「あ! 初めましてー。道場主の、先生ですよね? ウチ、美布から来た、美布藩大円流合気柔術の、朝霧苺と申します。今日は、上がり込んじゃって、すみませーん」

「あ、朝霧じゃと! や、やはり、そうだったんか・・・・・・」


 丁寧な自己紹介をした苺に対し、朝霧という名に反応した、神妙な面持ちの源五郎。


「ど、どうしたんだ、じーちゃんは? なんだよ。朝霧がどーしたの?」

「お嬢さん、朝霧苺と言ったね? もしかして、お嬢さんにその技の手ほどきをしたのは、朝霧甚九郎(あさぎりじんくろう)という者では・・・・・・?」

「え! うちのおじいちゃん、知ってるんですかぁ! わー、すごーい!」

「や、やはりそうかい! ・・・・・・で、甚九郎さんは、もう数十年会ってないが、今は?」

「おじいちゃんは、ちょっと・・・・・・三年前に、()()()()で亡くなりました」

「な、なんと! そうか・・・・・・。それは、惜しい人を亡くしたのぉ・・・・・・」


 源五郎は、しんみりとした感じで、視線を下に落とした。


「小紅! 外に、水穂と澪もいた。もう遅いから、みんなでこの子を北柏沼駅まで送ってやれぃ。今ならまだ、美布まで繋がる電車があるべや? 優太くんも、もう帰りなさい」

「水穂と澪もいたぁ? なにやってんだ、あいつらは・・・・・・。ま、いいや。苺っ、一緒に駅まで行こうか。着替えたら、あたしらみんなで、送るよー」

「えー、なんか悪いなーっ。じゃ、着替えてくるー。ありがと!」


 小紅と苺は、着替えて道場から外に出た。外では、水穂と澪も、よそよそしい感じで合流。


「小紅ー。この子たちは? だぁれ?」

「あたしの妹みたいな、道場の後輩二人。高二の稲葉水穂と、篠原澪。部活も一緒なんだよ」

「へーっ! ウチ、朝霧苺! よろしくっ! ・・・・・・きみたちも、なかなか強そうね?」

「「 よ、よろしくです・・・・・・ 」」


 水穂と澪は、屈託のない笑顔を見せる苺に対し、どこか、おどおどした対応。


「(ね、ねぇ、ミオー。この人、こんな感じでも小紅センパイと互角以上の強さなんだよね?)」

「(う、うん。そうだね。・・・・・・信じがたいけど)」


 梅雨入り前の初夏の夜風が、小紅たちの合間を吹きぬけていった。湿った風が、ひゅうっと、彼女たちの足元を。



     * * * * *



 北柏沼駅まで苺を送る、小紅、優太、水穂、澪の四人。


「今日はいい勉強になったよ。・・・・・・あ。これ、あたしのケー番とメアド。よかったら登録しといてよ。・・・・・・お互い、頑張ろう! ろくでなしに、負けないでよね?」

「ふふふっ。ありがと、小紅! ウチも、いい汗流せたよー。携帯は、登録しとくー」


   プアアァーンッ・・・・・・  ガタゴトトト・・・・・・


 ホームに電車が入ってきた。乗客もまばらな列車に、制服姿の苺は、ぴょこんと乗り込む。


「またな、苺っ! いつでも、また、手合わせ待ってるよ?」

「こちらこそー。美布にもいつか、来てちょーだいね? じゃ、まったねー」


 にこやかに手を振る、苺。

 電車のドアが閉まり、小紅も軽く手を数回振った。電車は、苺を乗せて去ってゆく。

 今日が初対面だったはずの苺に対し、小紅はどこか複雑そうな表情。

 

「行っちゃったなー。すごい子だったな、苺」

「ぼく、小紅ちゃんとあんなに互角に戦える女の子だとは思わなかったよ」


 遠く小さくなってゆく電車を見つめる小紅へ、優太がそっと隣から話しかけた。


「なんだか、すんごいもの見ちゃいましたー。さて、帰りましょうかっ?」

「小紅サンも優太サンも、帰り道気をつけて。おやすみなさい」

「うん、おやすみ。あたしらも、もう帰るから」


 水穂と澪は、小紅たちより一足早くそれぞれの家へと帰っていった。

 みな、家は近くのようだ。


「小紅ちゃん・・・・・・。なんか今日は、ぼく、すごいものを見ちゃった感じだよ」

「優太もごめんねー。付き合わせちゃって。時間、遅くなっちゃったなー」

「ううん。いいんだよ。ぼくは、カッコいい小紅ちゃんの姿が見られたからさー?」

「なっ、なんだそれ? ・・・・・・あっははは。あんなんでいいなら、毎日見せてやるよー」


 他愛もない話をしているうちに、小紅の家から七軒離れた優太の家の前に着く。

 優太は笑顔で、自宅に入っていった。小紅も、様々な思いを胸に秘め、家へ戻っていった。



     * * * * *



   プシューッ・・・・・・  ・・・・・・ガタコンガタコン・・・・・・


「早乙女小紅・・・・・・。なるほどね。ありゃ、強いわ! あーっ! 面白かったなー」


 美布駅に着いて電車を降り、家へ向かって歩く、苺。

 そんな夜道を歩く小柄な苺を標的にしたのか、目の前に二人、ガラの悪い男たちが現れた。


「ひゃっはは! おい、美布高の女だぜ? 暗くてもわかるぐれー、激マブじゃね?」

「おい、オレらと、来いよ! ホテル行こうぜ、ホテル! おら、やるから、来いよ!」


 男たちは、苺の腕を二人で強引に引っ張り、黒塗りのワゴン車に連れ込もうとした。


   ゴキイッ! ブチッ! ベキョッ!  ・・・・・・ギュンッ! ドシャァッ!


「「 う、うぎゃぁーっ! な、なんだ・・・・・・この女・・・・・・は・・・・・・(ぱたり) 」」


 一瞬で、一方の男は右腕の関節を外され、靭帯を捻り切られ、指の骨も二本折られた。

 一方の男は、左腕を真下に引き落とされ、アスファルトの地面に頭から叩き落とされた。

 

「んー? いま、ウチに、何かしたぁ? あれ? 既に、意識ないのかー・・・・・・」

 

 男たち二人は、激痛によりその場で失神。苺は、何事もなかったかのように歩いていく。

 小紅に勝るとも劣らないスーパー女子高生は無意識に、今宵も小さい悪事を成敗したようだ。


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