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出動!悪行清掃人!   作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
#10 技と力の大激突! 技術 対 筋肉!
45/84

~ファイル45 イッツ ア 筋肉ショータイム!~ 

「はー、散々だったね。・・・・・・優太、塾の講義、間に合いそう?」

「うん、まだ時間は余裕ある。小紅ちゃん、あんな人に触られて、つらかったね?」

「辛かったというかー・・・・・・。なんか、すっごくムカついたなー・・・・・・」


 小紅と優太は、宇河宮市街の路地を歩いている。


「今日は、ごめんね。ぼくが講義受けてる間、小紅ちゃんは、どうする?」

「んー・・・・・・。まぁ、適当に過ごすよ。優太が終わった頃を見て、塾のとこ行くよ」

「そうかぁ。悪いなぁ。けっこう時間かかっちゃうけどー・・・・・・」

「いいよ。終わった頃、そのハンカチも返すんでしょ? あたしも一緒に付き合うから」

「わかった。じゃあ、だいたい午後三時くらいに終わるから、塾の前にいて?」

「うん。それまであたし、百貨店とか商店街見て、プラプラしてるねー」


 二人は、そんな雑談をしながら、予備校や塾の多い通りへ向かって歩いていった。

 小紅は、いつもの髪留めを今日は襟足付近に着けている。いつもと少しだけ、髪型を変えて外出しているらしい。

 塾の前に着くと優太は、ちらっと小紅の髪型を見て、「それも似合ってるよ」と言い、手を数回振って中へ入っていった。

 小紅は、塾へ入っていく優太を見送ると、商店街の方へ向かっていった。鼻歌交じりで、小さくスキップしながら。



     * * * * *



「はい! お疲れさまでした! 仮免も合格です! いよいよ、免許取得、目の前だね!」

「やった。ありがとうございました! ご指導、感謝します!」


 みかんは仮免検定を終え、免許センターでの本試験を受験するための書類一式を受け取り、教習所から出てきた。


「(常盤くん、この間と同じくらいの時間って言ってたから、あと一時間くらいか・・・・・・)」


 バッグを肩に掛け、宇河宮の町を歩いてゆくみかん。

 その視線の先には、乾物屋の前で焼き海苔を見て佇む、女性の姿が。


「ん? んん?」


 目を細めて、みかんは一歩ずつその女性に歩み寄っていった。


「あ! やっぱり早乙女じゃないか! 何してるんだ、こんなところで!」

「うわ! び、びっくりしたぁ! ・・・・・・みかんー・・・・・・やっぱり、いたか!」

「なに? どういうことさ?」

「いや、ここで説明するより、優太に会った方が早いからさー」

「え? 優太? ・・・・・・優太・・・・・・って、常盤くん? なんで早乙女が!」


 みかんは、頭にハテナマークを浮かべたような顔をしながら小紅と商店街を歩き、近くの閑静な場所にある、小さな公園へ入った。

 その公園のブランコにそれぞれ二人は座り、ジャングルジムに留まったスズメを見つめている。

 しばらく時が流れ、時計台の針がカチリと動く。数秒後、みかんが、口を開いた。

 

「・・・・・・さっき、優太って名前で呼んでたよな?」

「そうだよ。だって、あたしと、幼馴染みだもん」

「幼馴染み? 常盤くんと、早乙女がか!」

「そうよー。優太はよく不良に絡まれるから、昔から、あたしが守ってあげてるの」

「・・・・・・そうか。そういうことだったとは」


 みかんは、ブランコを少し揺らし、下を向く。


「・・・・・・みかんさぁ、先週、優太のこと助けてくれたんでしょ?」

「え! あ、あぁ。・・・・・・なんで、わかるんだ?」

「だって、優太が、みかんのイニシャルが刺繍されたハンカチ、持ってたし」

「あ。そうか。あれね・・・・・・。それでわかったのか?」

「まぁ、何となくだけど。宇河宮のこの辺で、不良を一掃できて、優太曰くあたし並に強い女の子? そして、Mikan.Aのイニシャル。・・・・・・安藤みかんしかいないじゃんー」


 小紅はブランコを数回揺らし、にかっと笑って、みかんの方へ振り向いた。

 みかんは小紅の顔を見て、複雑そうな表情を浮かべて俯いている。


「私は・・・・・・常盤くんが絡まれてたから、放っておけなかっただけで・・・・・・」

「ありがとね。優太、すーぐ絡まれちゃうんだよ。心は強いけど、力は弱いからさ」

「そうか・・・・・・。早乙女は常盤くんと、いろいろと長い時間一緒なんだろう?」

「は? まぁ、幼馴染みだし、保育園から高校まで一緒だしなぁー」

「私は・・・・・・。いや、早乙女に言っても、意味の無いことか・・・・・・」

「なに? 気になるから、言ってよ。あたし、歯切れ悪いの、いやなんだよ」


 みかんは、小紅の頭の先から足の先までじっと見ると、あさっての方を向き、しばらくしてからぽそっと言う。


「私は、常盤くんみたいな男子・・・・・・高校生になってから、出逢うのが初めてでな」


 みかんは耳を真っ赤にして、小さい声で呟く。それを小紅は、目を丸くして聞いていた。


「・・・・・・みかんー・・・・・・。あんたさぁ、まさか、優太に対して・・・・・・」

「わかんない! だが、不思議な心持ちでな。・・・・・・早乙女の幼馴染みとは知らなかった」

「みかん! あんたねー・・・・・・。空手はライバルだと思ったことないけど、これは別!」

「は? 何言ってるんだ、早乙女? お前、ただの幼馴染みじゃ・・・・・・」

「ちょっとワケあって今は無理だけど、あたしだって、優太は大切な人なんだから!」

「・・・・・・早乙女、お前! 私だってな、常盤くんを、もっと深く知りたくなったんだ!」


 小さな公園で、ブランコに座った私服の女子高生二人が、凄まじい火花を散らし始めた。



     * * * * *



   ずしり  ずしり  ずしり  ずしり   ザシュッ


「HAHAHA! ヘェイ、スミマセーン! チョーット、オシエテクダサーイ!」


 突然、こんがり焼けた小麦色の肌をした、短い金髪の外国人が公園に現れた。

 シャツの上からでもわかる、異様に筋肉が脹れあがった上半身。そして骨太で厳つい体格。

 身長は二メートルはあろうかという、大柄の男。


「(え? ・・・・・・おい、みかん。あんた、英語で答えてあげなよ。外国の人だしさ)」

「(なんで! だいたいこの人、発音はあれだけど、日本語で話してるじゃないか!)」


 ひそひそと話す、小紅とみかん。

 外国人は、豪快な笑い声を轟かせ、一歩ずつ小紅たちに歩み寄る。


「HAHAHA! HAHAHAHA! ドーシマシタ? オシエテクダサーイ?」

「えぇと、あのー・・・・・・何を教えればいいのでしょうか?」


 みかんがブランコから降り、一歩前へ出て、その外国人と向かい合う。

 するとその男は、天を仰ぐようにして腕を大きく広げ、ぎらりと目を光らせた。

 よく見ると、その金髪の男は青い目の中に、まるで爬虫類を思わせる漆黒で縦長の瞳を持っている。

 その目から放たれる異様な殺気と迫力を、小紅はみかんの後ろから、一瞬で感じ取った。


「なに、こいつ! みかんっ! 下がって! こいつ、危険だぁっ!」


 咄嗟に小紅はブランコから飛び降り、みかんを抱きしめるようにしてそのまま横っ飛び。


   バアッチイィィーンッ!  ・・・・・・シュウゥゥ・・・・・・


 間一髪だった。

 金髪の男は、両手を思い切りみかんの頭があった位置に振り下ろし、まるで火薬が爆ぜたかのような音を響かせた。


「な、なんだこいつは! ・・・・・・あ、あのままだったら、私・・・・・・」


 背筋に戦慄が走り、震えながら青ざめるみかん。


「まさか、こんな外国人まで・・・・・・。お前、デスアダーか!」


 小紅は、みかんを離し、立ち上がって男と向かい合った。


「HAHAHA! YOU、ナカナカ、ヤルデハナイカ! オレハ、デスアダーノ五行節! ブライアン・ゴールデン・ブーロリッガー。早乙女小紅、オマエノ強サヲ、オレニオシエテクダサーイ! 三千万円ノタメニ、消サセテモラウゼ?」


   ビリリリリリ  ビイイッ  ブバババッ!


 ブライアンが両腕をあげてボディビルのポーズをとると、着ていたシャツが一気に破れ、異常に発達し、すさまじく脹れあがった筋肉による逆三角形の上半身が姿を現した。


「(! な、なんだーっ? マ、マッチョマンじゃん! なんだよこいつ!)」

「(う、腕が、私のウエストより太い・・・・・・。なに、この人!)」


 小紅とみかんは、ブライアンの肉体を見て、目を丸くしたまま固まっている。


「HAHAHA! ソンナニ見タイノカ! オーケェイ! ナラバ、モット見セヨウ!」


   ググンッ  メリメリイィ  ブバババッ  ズバババッ!


「「 いぃ! 」」


 さらに、ブライアンが別なポーズをとると、ズボンは一気に破れ、ズタボロになった。

 小さな五芒星のボタンが一つついた、黒いパンツ一丁。そして、変わったシューズを履き、ボディビルのポーズを次々ととる、ブライアン。

 その姿に、小紅とみかんは、別の意味で恐怖を感じたような表情に変わった。


「や、やばすぎ、こいつ! ただの変態じゃん! なにが五行節だ、このやろーっ!」

「さ、早乙女ー。な、何が起きているんだ? 私、眩暈がしそうなんだが・・・・・・」

「気をしっかり、みかん! くっそぉ、この前から、なんか変な奴ばかりだなー・・・・・・」


 ブライアンは、小紅とみかんを、二つの青い目で、ぎょろりぎょろりと睨みつける。

 そして、にかっと白い歯を見せ、満面の笑みを見せる。


「オッケェーイ! イッツァ、ショータイム! HAHAHAHA!」


 閑静な公園に轟く、野獣のようなブライアンの笑い声。

 小紅とみかんは、逃げ道を見つけようと公園内を見渡す。

 しかし、二人がいたブランコの位置は公園の一番奥。

 自然と二人は、ブライアンに追い込まれたような状況になってしまっていた。

   

   ・・・・・・がしっ   ぐわあぁっ

 

 ブライアンは、近くにあった金属製のゴミ箱を、片手で軽々と持ち上げる。

 

 「やば! ・・・・・・みかん! 右へ!」


 小紅は、みかんを右手で突き飛ばし、自分は左へさっと跳び退く。


「HAHAHA! カーモン、ベイビィ! オッケェーイ!」


   ブビュウゥンッ!  ドグァシャアァンッ!  パリャァン!  パキャン!


 高速で飛んできたゴミ箱は、一気に粉々になり四散。

 中に入っていたガラス製のビンやスチール缶が、一気に四方八方へ割れて飛び散った。それはまるで、散弾のよう。


「うあっ!」

「みかん!」


 飛び散ったビンの破片が、みかんの頬を掠めた。

 すうっと赤い線が頬に引かれ、じわりとみかんの頬に血が滲む。

   

   がしいっ  ぐわああぁっ  ブビュウンッ!  ドガシャアアァンッ!


「危ないっ! みかん、こっち!」


 次は、公園に置かれた木製のテーブルが飛んできた。

 みかんと小紅は、なんとかまた、紙一重で躱すことが出来た。しかし、不利な状況は続く。

 さっと身を翻してジャングルジムを楯にするかたちで、ブライアンの様子を窺う二人。


「ど、どーやってこんなやつ倒せばいいのよ! とんでもないパワーじゃん!」

「早乙女! とにかく、あいつが投げてくる物には要注意だ!」


 容赦なく物を投げつけてくるブライアン。

 野獣のようなパワーに、小紅たちは未だ為す術無しの様子。

 怪力無双のこの野獣相手に、女子二人は、どう立ち向かうのだろうか。


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