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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第2章 B×B×Vampire

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Master×King×Vampire08

 不安で心が潰れて身体が震えそうになる。


 ふと先程のことが頭をかすめて胸が震えた。アタシは心が壊れてしまわないように、レオの温かい身体をぎゅっと抱きしめた。


「すでにマスターには連絡してあります。夕方ここに着くはずです。それまで身体を休めましょう。貴方はその間に心を整理しておきなさい」


 アタシはこくりと頷いた。ハイネグリフはアタシとアイゼンバーグが会って話したことを言わないでいてくれるみたいだ。とてもありがたい。レオはアタシとハイネグリフを交互に見ている。アタシたちの間に秘密と言えないような秘密があることに気づいたかもしれない。


「了解。結局ご主人サマもサンダーもホノカに協力するってことだね。ざまぁみろだ」


 ざまぁみろというのはサンダーさんに向けた言葉だろう。


「それじゃぁホノカ。お風呂にでも入ってリラックスしようよ。二人が帰って来る前にお湯入れておいたんだ」


「レオ気が利くね。ありがとう」


 吸血鬼は汗をかいたり皮脂を出したりしないのか、べたついたりしているわけではない。ひょっとしたら吸血鬼はよっぽどじゃない限りお風呂に入らなくても良いのかもしれない。それでもお風呂に入った時のリラックス効果を知っているし、習慣でもあるので入ろうと思えた。この沈んだ気持ちもちょっとは晴れるかもしれない。


「でしょ。背中流してあげるよホノカ」


 ちょっと待て。


「レオも一緒に入るの!?」


 今そんな感じだった。背中流すって言った。


「そうだよ。いいでしょ。オレ猫だし」


「猫じゃないよ! 猫だけども! そういうことじゃなくて、レオは男だよ!」


 可愛らしい黒猫だけどそうじゃない。レオはれっきとした大人のお兄さんなのである。顔は可愛いけれど! 一緒にお風呂に入れるわけがない!


「えー。オレ、ホノカと一緒にお風呂入りたーい。ダメ?」


 綺麗な金色の目でじぃっと見つめられている。ガラス玉のようにキラキラしていて、上目遣いで、可愛い。自分が可愛いことを自覚している仕草だ。ダメだそんなの反則だ。こんなに可愛い猫に可愛い目で見つめられたら良いかもと思ってしまう。恐るべし、動物の見た目。恐るべし、レオのテクニック。


「うーん。まぁ、タオルを巻いていたらいいかも……」


「良くありません」


「きゅっ」


 ハイネグリフがレオの首根っこを掴んで引っ張ったので、レオの口から潰れた玩具のような音がした。


「貴方はすぐそうやって流される。無防備というより、流されやすいと言った方が良いですかね。レオもすぐに甘えるのをやめなさい」


「放せ! そこ持たれるの、首が締まって嫌なんだよ。ハイネはいつも乱暴だ」


 レオは必死にアタシの服に爪を立てて離されるのを拒んでいる。しかしハイネグリフはお構いなしに引っ張る。そのためアタシの服は結構な強さで引っ張られていた。


ビリッ


「わっ! 破れた!」


 調度爪が食い込んでいる部分が裂けた! ぱっくりと! 下着が見える!!


 慌てて裂けた部分を手で押さえた。けれど引っ張るのをやめてもらわないともっと裂けてしまう。レオの爪強い! 猫には出せない強さだった。レオは猫なんかじゃない! ハイネグリフの言う通り吸血鬼ならぬ吸血猫だ!!


「ちょ、引っ張らないで!」


「ハイネに言ってよ!」


「レオが手を離せばいいでしょう」


「やだ! 何でオレが譲らなきゃいけないわけ!? ハイネが譲りなよ!」


「私が譲らなくてはならない理由がありません」


「もうどっちでもいいから放して!! 破れるから! もう着られなくなっちゃうから!」


ビリリッ


「ぎゃー! もう二人の馬鹿ー!!」


 見事に服が裂けた! 右から左へ横一直線にばっくりと! ひどい! あんまりだ!


 アタシは服を押さえて二人を睨みつけた。さすがにまずいと思ったのかレオが爪をしまってくれ、ぶらんとハイネグリフの手にぶら下がった。


「……ピンクのイチゴ柄」


「していなくてもいいんじゃないですか」


 カッと頭に血が昇った。


「どうせ子どもっぽいですよ! どうせ下着がいらないくらい小さいですよ!! 分かっていますとも! でも二人とも一発ずつ殴らせろ!!」


 アタシが拳を上げるとハイネグリフは踵を返して逃げた。それと同時に解放されたレオは猫のままハイネグリフとは別の方向へ逃げて行く。


「待てこらー!」


 まずは対象が大きく見つけやすいハイネグリフを追いかけることにした。絶対に一発食らわしてやる! デリカシーの欠片もないアイツらを成敗してくれる!


 アタシは足を踏み鳴らす勢いでハイネグリフの後を追った。


 怒っているうちは悲しみや不安を忘れられた。もしかしたら二人の優しさなのかな、とも思ったけれど、思い過ごしかもしれない。それに許せないものは許せないので手加減するつもりはなかった。


 それから一時間程追いかけ続けたけれどとうとう二人とも捕まえられなかった。おかしいなぁと思いながら立ち止まるとドッと疲れが押し寄せてきたので、使っていいと言われている部屋で休むことにした。


 部屋に入り、ベッドに前のめりに倒れて横たわる。スプリングで身体が数回跳ねた後、ふかふかの布団に身体が沈んでいった。

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