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B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第2章 B×B×Vampire

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Hot×Cold×Vampire03

「そうです。この小娘は私の眷族ですよ」


 あのハイネグリフがフォローしてくれた! しかも自分の眷族って!


 こうも自然にフォローしてくれるとは思わなくて驚いて金色の後頭部を見上げた。こちらを向かないので表情が分からない。一体どんな顔をして嫌いなアタシのことを眷族だと言ってくれたのか気になったけれど、また同じ失敗を繰り返さないために我慢することにした。


「へー、お前の。あの夜、俺たち全員の……アイゼンバーグの血も飲んだそいつはお前の血に適合して吸血鬼になったってわけか。こんなことってあるんだな。おもしれぇじゃねーの。ちょっと顔見せてくれよ」


 ひょい、とデインがこちらを覗き込んでこようとしたのが視界の端に映った。しかしハイネグリフが銃口をデインの頭に突き付けてけん制した。解決の仕方が物騒だ。


「気安く絡もうとしないでください。撃ちますよ」


 撃たないでほしい! そんなにも簡単に人を傷つけようとしないでほしい! ぐいぐいカーディガンを引っ張って抗議してみたが、見事に無視された。


「そんなに警戒すんなよ。……俺が赤の吸血鬼だからか? それとも別の理由があるのか?」


「貴方の解釈に任せます。話すつもりはありません」


「すっかり口数が少なくなっちまったな。もう少し早く来れば良かったぜ」


 デインはぼそりと呟いてから一拍置いて続けた。


「何にせよ、お前ら黄の吸血鬼の陣営が増えたことに変わりねぇ。さっきもう一人黄の吸血鬼を見かけたしな。本格的に青の王狩りに乗り出したってわけか。状況が変わって来たな」


 狩りって、そんな言い方ない! むっとして後ろから睨みつけてやろうとしたが、さりげなくハイネグリフが身体を被せてきたので出来なかった。危ないところだった。ハイネグリフはフォローが上手いみたいだ。


「ここ二日マリウスを見てねぇけど、お前ら見たか?」


「いいえ」


「何か知ってるか?」


「何か、とは何ですか。抽象的すぎて答えられません」


「お前ら手組んで何かしてんじゃねぇのってことだよ」


 デインの声が一段階低くなったような気がした。デインって結構鋭いんだな。あの追いかけっこの時は、コウモリになることや気を失うと危ないやつになることを除くといつも悲しそうな顔をしているっていう印象しかなかったのに。人は短い時間で判断するものじゃない。


「黄の吸血鬼が増えたタイミングで白の吸血鬼が減るなんておかしいだろ。増えるならまだしも」


「知りません。仮に私たちが白の吸血鬼と組んでいたとしても、話さないのは分かっているでしょう。どれだけ探りを入れても無駄ですよ」


「……そうだな。お前と話していても埒が明かねぇ。そろそろアイゼンバーグを追いかけねぇと折角の手掛かりも無駄になる。まぁいいや。……じゃーな。その女、お前の眷族ならお前が大切にしてやれよ」


 デインの気配が消えた。上半身をずらして確認してみると、彼の姿は消えていて、遠くの方でコウモリが羽ばたいているのが見えた。たぶんコウモリになって散り散りに飛んでいったのだろう。デインは無数のコウモリになれるから探索には最適だ。だからアイゼンバーグを追いかけるようブランに言われて彼を追いかけているのだろうか。


「小娘」


「ひゃいっ!?」


 半分悲鳴みたいな声になってしまった。だって空を見上げていたら突然怒っているみたいな低い声をかけられたのだもの! 恐る恐るハイネグリフを見ると、案の定鬼のような顔でアタシを睨んでいた。


 こっわ! 美人の怒った顔迫力ありすぎ!


「目を隠すように言いましたが、顔を押し付けろとは言っていません。適度な距離を保ちなさい」


 お説教が始まった。


「それから油断しないでください。貴方が軽率な行動をすれば私がフォローしなければなりません。面倒なことをさせないでください。それから」


 目によりいっそう力が入った。ギロ、と音が鳴りそうだった。


「腰を掴むなと、言ったでしょう」


「すみません……」


 アタシは肩をすぼめて謝った。確かに申し訳なかったと思う。馴れ馴れしくくっついたりしたのはまずかっただろうし、腰を掴むなと注意されたことも忘れていた。それだけでなく、思わず軽はずみにデインを覗き込んでしまったのは信じられないミスだった。アタシのことだから、それをかわきりに取り返しのつかないミスを連発していてもおかしくなかった。ハイネグリフがフォローしてくれなかったらもっとボロが出ていたかもしれない。彼がいてくれてホントに良かったと思う。でも、そんな怖い顔で睨まないでほしい。


「確かにアタシが悪かったし、フォローしてくれたハイネグリフには感謝しているけど、そんなに睨むことないじゃない……」


 ぼそっと言ってみたらため息が落ちてきた。


「小娘が睨まれるようなことをするからでしょう。反省しなさい」


「してるよ」


「していません。というより、危機感が無さすぎるんです。もっと警戒しなさい。危機感がなく警戒心が足りないから騙されたり危険な目に遭ったりするんですよ」


 何、それ。


 自分でも不思議なことに、無性にムカついた。アタシは下からハイネグリフを睨んでやった。


「してるって。危機感はあるし、警戒もしてるよ。アタシの予防線をすんなり乗り越えてくる異常事態ばかり起きているだけで、アタシはずっとしてる。おかしいのはそっちでしょ」


 そう。アタシは何もおかしくない。危機回避しようと努めているつもりだ。それなのにアタシが予想していたよりも異常なことが起こるから、結局予防の意味がないだけだ。アタシはいつも巻き込まれているだけなのにそんな言い方ってない。


 アタシの主張を聞いたハイネグリフの眉が寄った。


「貴方、赤の王に捕まったんでしょう。デインは赤の吸血鬼ですよ。赤の王の城から連絡が入って貴方を捕まえるよう指示が出ていてもおかしくないんですよ。今回は潔く去りましたが、次はどうなるか分かりません。もっと自衛しなさい」


 確かにデインは赤の吸血鬼だからハイネグリフがそう考えるのは分かる。ひょっとしたら近付いてきたのもアタシを捕まえるためだったのかもしれなくて、ハイネグリフがいたからやめたのかもしれない。それくらいの予想はアタシでもついた。でも、これでもアタシは自衛しているつもりだ。アタシの苦労も知らないでもっと頑張れみたいなことを言わないでほしい。


「ハイネグリフから見たアタシがどうかは知らないけど、アタシだって努力しているんだよ。突然吸血鬼の追いかけっこに巻き込まれた時から、アタシなりに頑張って、耐えて。今はこうしていつ死んじゃうかも分からない状況だけど、何とか冷静にその時に出来ることを頑張っているのに。これ以上どうしろって言うの?」


 自分で言うのもなんだが、アタシはこれでもよくやっている方だと思う。ずっと死と隣り合わせで、それに加えて油断したら吸血鬼に殺されてもおかしくない状況で、こうして生きているのだから。褒めてくれなんて言わないけど、せめてもっと頑張れなんて言わないでほしい。アタシはもう、十分頑張っている。その時に出来る最大限の努力をしてきたつもりだ。軽率な行動があったとしても。

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