表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B×B×Vampire(ビービーヴァンパイア)  作者: あまがみ
第3章 Love×Vampire

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/218

Blood×Rose×Vampire03

 吸血鬼の血を吸ったバラは半永久的にその吸血鬼の瞳の色と同じ色の花を咲かせる。アタシの血を吸ったバラは青と黒の花びらを持った斑な花になって、レオやハイネグリフの血を吸った花は鮮やかな黄色になった。吸血鬼の血を吸って咲いたバラは他の瞳の色をした吸血鬼が嫌いな成分を出すので、他の吸血鬼たちはそういうバラに囲まれた場所には入れないそうだ。要はだいぶお洒落な虫避けである。実際アタシもレオとハイネグリフの血を吸って咲いた黄色のバラがある出入り口やバルコニーには近付きたくない。近付くと鼻と目を貫く刺激臭がするからだ。ちなみに今も嫌な匂いがする。これ以上近付くとめまいがしてくる。


 ただこのバラはレオの言う通り万能ではない。バラの強度は変わっていないので燃やしたり枯らせたりすることができるし、再度血を与えることで色の上塗りもできる。そのため二人が帰ったら、いつもアタシの血で青と黒のバラに切り替えている。バラの色の切り替えは簡単だ。棘に血をつけるだけ。バラの棘は吸血鬼の皮膚も割るから、握りしめるだけで良い。ちなみに根元や切り口から吸わせることも出来る。


「このバラを突破してくる吸血鬼っているのかな」


「さぁね。でも紫頭の吸血鬼が来たんでしょ? しかも忠告していった。だったらいつか来るんじゃないかな」


 バルコニーで出会ったデインを思い出す。


 デインはアタシを連れ出すでもなく、ただ忠告だけして去っていった。アイゼンバーグは眠っていて、まだバラの守りも施していない状態だったのにも関わらず、一旦引いたのである。


「なんでデインは忠告してくれたのかな?」


「絶好のチャンスだったはずなのに不思議だよねぇ」


 アタシとレオはそろって首を傾げた。


「いまいち赤の吸血鬼がどうしたいのか分からないなぁ。まぁ考えたって分からないものは分からないんだから仕方ないんだけどさ。バラの守りも一応あって、赤の吸血鬼のことは調べてて、白の吸血鬼はご主人サマが話をつけてくれてる。オレたちも遠くないところにいるから……まぁ、とりあえずは安心、かな」


 赤の吸血鬼はあれから一度も見かけていない。黄の吸血鬼のみんなが動向を調査してくれているみたいだけど、赤の吸血鬼たちは日本で拠点にしていたあの屋敷を離れたらしく、どこに行ったのかまだ分かっていない状態だった。もしかしたら日本を出ているかもしれないとのことだが、真相は分からない。


 白の吸血鬼はレオの言ったように、フェリックスさんが話をつけてくれたので問題ない。むしろ黄の吸血鬼同様、友好的と言って良いだろう。なんとアタシがアイゼンバーグを追いかけているときに居場所を教えてくれたのは白の女王らしい。その後もマリウスが情報提供してくれた姿も見ているし、白の吸血鬼は脅威ではないとみた。


「さぁてと」


 レオが指を組んだ手を頭の後ろに持っていった。


「つまんないこと考えるのはこのあたりにして、映画鑑賞でもしない? 今日もDVD借りてきたよ」


「やった! 見よ見よ!」


 お堅い話はここまでになった。


 アタシたちは戻ってテレビの前に置かれた革張りのソファに並んで座った。


 レオが持ってきてくれたのはアニメ映画だった。昨日はアクション映画。レオは暇なアタシを気遣っていつもこうして時間を潰せるものを持ってきてくれる。


 アイゼンバーグが眠ってからもうじき二週間経つのに、彼はまだ目を覚まさない。目を覚まさない彼を置いて出歩くわけにもいかず、アタシはこうしてホテルに缶詰状態だ。嫌というわけではないが、ストレスも溜まってくるし何より暇でしょうがない。だから実は二人が実験のためとはいえ来てくれるのが嬉しかったりする。それにレオはこうしてアタシに付き合ってくれる。本当にありがたかった。


「ありがとね、レオ」


 隣で大きなテレビにリモコンを向けて操作しているレオに言うと、レオは口元を隠して笑った。


「オレがホノカと遊びたいだけだよ。ホノカもオレと遊ぶの好きでしょ?」


「もちろん」


「だったらお礼なんていらないよ。ただ一緒に楽しいことしてるだけだもん」


 ホント、レオっていいやつ。ときどき利己的だなと思うときもあるけど。ひょっとしたら茶化してくるのもアタシに余計な気遣いをさせないようわざとやっているのかもしれない。そう思うとまた口からお礼が出そうになったので、なんとか口を結んで耐えた。


「ホノカはハイネやサンダーより歳が近いし、同じ日本育ちだから感覚が同じで気が楽なんだよね。あの二人やご主人サマはときどき話が通じなかったりして世代間ギャップを感じる」


 今のところアタシはそんなに世代間ギャップを感じていないけど、レオは長く彼らと一緒にいるからそういうことがあるんだろう。そもそもアタシはこれまで二人のことを吸血鬼としかみていなかったから、二人がおかしな発言をしても吸血鬼だからと片付けていた。よく考えてみたら二人とも元は人間なんだし、吸血鬼だからおかしいのではなく、生きている年数が違うから噛み合わないのかもしれないな。たしか二人は百歳を越えているはずだ。じゃぁ、レオは何歳なんだろう。


「そういえばレオって何歳なの?」


「んー、だいたい四十くらいかな」


「初老じゃん」


「ホノカだっていずれそうなるんだからね」


 じっとり睨まれた。


 確かにアタシもこのまま生き続けることになればレオみたいに見た目は若くても中身はオバサンの年になるし、いずれお婆さんを通り越してミイラや化石のような歴史的価値のある存在になるはずだった。


「レオみたいに若さを保つ秘訣って何?」


 聞いておこう。大事なことだ。見た目が若くったって意識が老いていたら格好がつかない。


「そうだね。若い人たちと交流することかな。その日限りのお付き合いも気楽で結構楽しいよ。ホノカには青の王がいるから難しいかもしれないけど」


 口元を隠してにっと笑う。初心だ何だと言われるアタシにだってこのときばかりはレオがどういうことを言ったのかくらい分かった。


「まぁ、そういうことも両方が納得しているならいいかもね」


 どちらかが割り切っていなければ問題だと思うけど。


 男女のお付き合いや恋愛がキラキラしたものばかりじゃないってことは分かっているつもりだ。物語の世界、とりわけ十代が対象の物語のような綺麗でロマンチックな恋愛は現実では難しい。そうでなければニュースで芸能人の不倫が持ち上がることはない。


「へぇ。ホノカってその辺り理解がある方なんだ。ふーん、そう」


「何その反応」


 予想外の反応だった。DVDそっちのけでじっと値踏みするかのように見られている。


「別に。ちょっと危ないなって思っただけ。ホノカ流されやすいから気をつけなよ。男はそういうところに付け込んでくるからね」


「アタシをそういう目で見る人なんていないと思うけど」


「今の自分がどんな見た目してるか分かってないでしょ。吸血鬼になったらみんな見た目が良くなるんだよ。ホノカ、その辺の人なんて比にならないくらい可愛いんだからね」


「へぇ、そうなんだ」


 いつの間にかそんな変貌を遂げていたとは驚きだ。鏡に映らないので気づかなかった。


「一応オレたち人間から吸血鬼になったヤツは元がどれだけ良かったかも関係するらしいから、めちゃくちゃキレイなヤツとかは人間だったときもキレイだったってことっぽいよ。ハイネとか、たぶん相当顔が良かったんだと思う」


「なるほど」


 ハイネグリフが飛びぬけて綺麗なのは元が良いからなのか。納得した。


「ハイネの見た目はずるいよね。女も男も虜にするって感じ。放っといたらいろいろトラブルに巻き込まれそうだけど、聞いたことがないのはハイネが気をつけてるからだろうな。ホノカも気をつけなよ。ホノカならどんなヤツが近付いてきても本気で抵抗すれば大抵なんとかなるだろうけど」


 たぶんこれはアタシの腕力的な話をしているんだろう。


 実験の結果、アタシは青の吸血鬼の身体能力を受け継いでだいぶ腕力や脚力があることが分かった。レオと同じくらいかそれよりちょっと速いくらいの足に、簡単にレオとハイネグリフを捻じ伏せられる腕を持っているのだ。足の方は特に何も思わなかったが、腕っぷしの強さにはちょっとショックを受けた。レオは面白がってくれたが、ハイネグリフは完全に引いていて「近寄らないでください。折られたくないので」と、ある日のように接近禁止命令と接触禁止命令を出したくらいだった。

そこまで拒否されるくらいだから、もしかして。


「アタシって最強なの?」


 かもしれないと思ったのだけれど、レオは首を横に振った。


「ひ弱な人間とか戦闘能力の低いオレたち相手なら勝てるってだけだよ。戦うことに慣れてるヤツに勝つのは難しいだろうし、王サマの強さは別格だよ。ホノカくらい強くても、王サマには勝てない。それに抵抗できないようになんて簡単に出来るんだからね。戦わないのが一番だよ」


「分かった」


 素直にうなずいた。


 今のところ誰にも負ける気はしないんだけど、レオがそう言うなら気をつけよう。結局アタシはレオとハイネグリフを相手にちょっと手合わせしたくらいで、フェリックスさんとやり合ってもいなければアイゼンバーグやあの人のような恐ろしく強かった人たちともやり合っていないのだ。


「いい? 何かが起こったとき、遠慮してオレたちを巻き込まないようにとかって考えないでね。巻き込んでくれた方が、後で気づいてあたふたするよりずっとずっとマシなんだからね」


 レオはずいっと顔を近付けて念押ししてきた。アタシはレオを安心させるためにしっかり頷いてみせた。


「そうするよ」


「絶対だよ? ホノカ一人で無茶するから。オレ、ホノカがアイツと心中しようとしたのまだ許してないからね」


 金色の目で睨まれた。ここのところ睨まれる回数が増えている気がする。


 あの人と海の中に飛び込んだことをレオはずっと言ってくる。三日に一回くらいの頻度だ。それくらい心配をかけてしまったんだなと反省する反面、そんなに警戒しなくてもいいのではないかと思う。


「レオもハイネグリフに負けず劣らず心配性でお節介だよね」


「はぁ? ハイネと一緒にしないでよ。オレはあそこまでお節介じゃないもん」


 不機嫌そうな声を出し、レオは「もうやめよ! これ以上言ったらまたハイネと同じにされる」とテレビに向き直った。


 アタシもテレビを観ることにして、レオから視線を移した。


 ずっと話をしていて観ていなかったけど、どういうことが起こってこれから何が起こるかが分かる。この何年も続いている国民的アニメの落ちはだいたい一緒だ。主人公は冴えないけれどとても良い子で、よく予期せぬ事態に巻き込まれる。でも周りの人に助けられ、自らも勇気を出すことで問題を解決し、心が成長して絶対ハッピーエンドで終わるんだ。よくある展開だけど、それが面白いし最後は上手くいくと分かっているから安心して観られる。


 アタシの人生もそうなら良いのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ