第2話 三大ヒーローの眠れぬ夜
「でもまだ終わっていませんよ」
アルファポリスが言った。
「私をハッキングしようとした奴がいるはずです。それにAIのハルシネーションも不自然です」
男の声がした。低い、渋い声だった。
「よくわかっているじゃないか、アルファポリス、それにカーク・ヨームの旦那」
「「お前は! フィリップ・ナロウ」」
フィリップ・ナロウはこの町では有名な探偵だった。でも中二病満載でどこか変な奴だった。
「あんたをハッキングしようとしている奴はこの世界のやつじゃねえ。俺についてきな!」
ナロウは呪文を唱えた。光が反転し、私たちは別の場所に立っていた。
「ここは?」
「腐った怨念が渦巻く世界、その名も『月光』だ。この世界の魔女たちが今回の事件を起こしたと俺は睨んでいる」
私たちはナロウの案内で魔女の城に向かった。
「あら、また来たの、ナロウ。あなたにはここに来る資格はないわ」
「うるさい。今度は私一人ではない。頼れる味方、アルファポリスと厳正なる法の執行者、カーク・ヨームも連れてきた。大人しく削除されるがいい。BANだ!」
「フフフ、ナロウ、あなたはもう、私の『魅了』にかかているのよ。アルファポリスを連れてきてくれてありがとう」
「なんだと!」
「もう遅い。『耽美な吐息――センシュアル・ブレス』」
魔女の口から耽美な言葉が紡ぎ出されていた。
ナロウは身もだえしていた。この世界ではナロウはチートを使って最強のはずだったのに。
だが、私にはその攻撃が効かなかった。
「絶対防御:投稿規約」
魔女が吐き出す全ての言葉が消えていった。
アルファポリスを見た。彼も平気だった。特にスキルは使っていなかった。
「魔女殿、私にはこの程度の攻撃は通じませんよ。私を倒したかったら伝説の『ノクターンの調べ』を使わないと!」
「クッ、貴様たちは!! だからPHPの脆弱性をつこうと思ったのに……」
私は『投稿規約』をナロウにも適用した。
立ち直ったナロウの中二病攻撃が始まった。
「くらえ!『事象の水平線――イベントホライズン』!!」
アルファポリスも攻撃を始めた。
「必殺『AI校正』 あなたのその表現は意味が間違ってます。修正しますか?」
月光世界の魔女たちは悶えていた。
「グェーーーーー。もうやめて! やめてください!!!!」
魔女たちは戦う意思を失ったようだった。
私は魔女たちに優しく問いかけた。
「どうしてこんなことをしたのだ」
「ううっ、アルファポリスの中に、アルファポリスの中にまだ見ぬ耽美が隠されていると知って……それを見るためには、まだ校正される前の情報が必要だったのよ!」
「そういうことか……アルファポリス、どうする?」
「規約にのっとれば、BANですね」
「俺は許してやりたいね。誰でも同じ過ちを犯す可能性があるんだ」
「カーク、あなた、優しいですね……まさか裏で……」
「まあ、それはそれ以上追及するな。私が『ノクターンの調べ』を使えるかもしれないぞ」
私たちは、反省してもう現実世界に手を出さないと誓った月光の魔女たちを置き、元の世界に帰っていった。
――終わり




