第1話 アルファポリスがPHPの不具合で一時停止した。
「動くな! 港湾警察特別機動隊だ!」
薄暗い廃倉庫に、相棒の叫びが響く。
彼の名はアルファ。圧倒的な正義感から、街では『アルファポリス』と呼ばれる最新鋭のアンドロイド警官だ。
対するは電脳麻薬の密売組織。
ついに追い詰め、手錠を取り出そうとしたその時だった。
『ピピッ――警告。世界共通規格【ポリスハイパープロトコル(PHP)】に緊急の脆弱性を検知。ハッカーによる乗っ取りを防ぐため、本部より予防的措置を実行。メインバッテリー、シャットダウン』
プスン、と相棒の胸のインジケーターが消灯し、棒立ちになった。
「おい待て! 今まさに逮捕するところだぞ!?」
慌てて無線を入れると、通信士がめんどくさそうに返してきた。
『あー、カーク・ヨーム巡査、アルファポリスに致命的なバグが見つかってさ。23時に修正パッチ配るからそれまで機能停止だってさ』
「おいおい、警察ロボの電気が消えたぞ!」
ニヤリと笑った犯人たちに私はあっけなく捕まり、床に押し付けられた。絶体絶命だ。
「こいつの素体は高く売れるぜ!」
犯人たちが動かない相棒に手をかけたその時、私のスマホのAIが最悪の回答を出力した。
『警告:その状態のサイバー警官はバグで暴走する可能性があります。過去には警察官を皆殺しにした【血の水曜日事件】もありました』
「な、なんだって……!?」
恐怖に駆られた私は犯人に叫んだ。
「頼む、今すぐこいつを壊してくれ! 暴走するぞ!」
私の怯えっぷりに驚いた犯人が、自分の端末でAI検索すると、さらに凶悪なデタラメ(ハルシネーション)が出力された。
『追加情報:現在PHP搭載機は大爆発シーケンスに移行中と推測。周辺数キロを消滅させる可能性があります』
「うわあああ! こいつ爆発するぞ!逃げろ!」
犯人たちは悲鳴を上げ、一目散に逃げ出した。
――そして、運命の23時。
ピピッ、と電子音が響き、アルファポリスの目が澄んだ青に戻った。本部のアップデートが完了したのだ。
『バージョンアップ完了。……カーク巡査、なぜ床で泣いているのですか?』
「爆発は……?血の水曜日は……?」
相棒は犯人が落とした端末を覗き込み、深いため息をついた。
『それはAIの嘘です。そんな事件も爆発仕様も存在しません。ただのシステムバージョンアップです。なお犯人たちは爆発に怯えて外のパトカーに自首したそうですよ』
「あ、そう……。よかった……」
『ですがカーク巡査。AIは補助利用までにしてくださいね。AIのデマを全部信じるのは規約違反です。さあ、始末書を書きましょう』
私が学んだこと。それは「システムのバグ」よりも、「人間の被害妄想」と「AIの適当な嘘」の組み合わせの方が、遥かに街の平和を脅かすということだった。
私の他の作品です。
今作と同じようにテンポよくお話が進展していきます。
よろしかったらどうぞ!
『セカンドバージンのOLの私とセカンドバージンの彼が出会ってしまった件 』
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