99.侯爵への報告
赤い目の魔獣を追って行ったアーダの報告で、赤い目の魔獣の依り代は死んだ母親の側で命をつないでいた赤ん坊だった。
赤ん坊を保護したツェーザルたちは赤ん坊と女性の亡骸を伴って、コリンナ市に戻るとその足で侯爵家に出向いた。
多分面倒な話になると思い、ネルデンベルク公爵家の名前を出して領主に面会を求めた。「内容は何か」と聞かれたので、「森で保護した赤ん坊について話がしたい」と伝えた。
家令の人は不思議そうな顔をしていたが、ネルデンベルク公爵家はこの国でも名家、最近は結核のポーションでその影響力は計り知れない。すぐに会ってくれることになった。
面会は妻たちを全員連れて行くわけにもいかないので、俺とアライダだけにした。アライダの腕の中には森で保護した赤ん坊もいる。
しばらくして準備が整ったようで客間に案内された。さすが公爵家、客間も立派である。家具調度品どれも一流品が使われている。
俺とアライダが客間で待っていると、公爵とその夫人が現れた。俺は出不精でパーティーにはほとんど行ったことがないのでこの侯爵とは面識がない。
「お初にお目にかかります。急な面会の申し出を受けていただき感謝します。私は、ネルデンベルク公爵家の三男のツェーザルです。今は結核のポーションで男爵位を授かっております。隣は私の妻のアライダです。同じく男爵位を授かっております。
今日寄せてもらったのは、今アライダが抱いている森で保護した赤ん坊がしていたペンダントにコリンナ侯爵家の紋章があったからです。
そして、その赤ん坊の傍らには若い女性の亡骸がりました。その女性の亡骸は今マジックバッグに入れてきておりますので、ここで出しましょうか」
そう言うと夫人は今にも泣きそうな顔になった。侯爵も悲しみを堪えている。侯爵が
「その女性の亡骸を見せてほしい」
「わかりました。今出します」
そう言って、女性の亡骸をマジックバッグから出した。
その女性の亡骸を見た夫人は泣き出した。
そして、亡骸に近付いて、
「マリーア。何故、こんな姿になる前に戻ってこなかったの」
そう言って、亡骸にすがって泣いた。
侯爵様が
「その赤ん坊は」
「はい、この赤ん坊は、このマリーアさんの側で倒れておりました。幸いまだ息はあったので保護しました」
「抱かせてもらうわけにはいきませんか」
アライダが、侯爵に赤ん坊を抱かせてあげた。侯爵は赤ん坊に頬ずりしながら、
「ごめんな、お前のお母さんを助けてあげられなくて」
そう言って泣き出した。
すると、娘の遺体にすがって泣いていた侯爵夫人が
「わたしにも孫を抱かせてほしい」
そう言って、侯爵から赤ん坊を受け取った。
侯爵も夫人も涙が止まらないようなので、用件は済んだと思い、
「私たちは、これで失礼します」
と言うと侯爵が
「この礼はまたいずれ」
とおしゃられたので
「礼には及びません、当然のことをしただけですので、どうしてもとおっしゃるのでしたら、父や母に会った時は何か言っといてください。それだけで十分です。暗くなるといけないので宿へ戻ります」
そう言って、侯爵と夫人の前を辞した。
すると、俺の頭に中に
「ツェーザル様、今回はありがとう。それと、私、ツェーザル様の10番目の妻になること諦めてないからね。絶対成人したら押し掛けるからね。それまで待っていてね」
カルラの声がした。
「別に俺の妻にならなくても、いい人がいたら結婚しろよ」
「それは無理、ツェーザル様は私の王子様、白馬に乗った王子様、赤い糸で結ばれているの、キゃー」
カルラはなんか自分で言っておきながら自分の言葉に酔っているようである。
それにこんな話、アライダ達に出来ない。まさか「ゼロ歳の赤ん坊に結婚を迫られた」なんて言ったら、変体どころか人間扱いしてもらえなくなる。それでなくても最近はダンゴムシや妖精など人外との接触があって、俺も疲れている。




