94.コルンナ市観光
「ギャー」朝、宿の一室にツェーザルの悲鳴が届き渡る。何が起こったのかと、部屋の全員の眼がツェーザルに集まる。護衛も飛び込んでくる。
ツェーザルが、布団から飛び出して、震えながら布団の方を見ている。
「どうしたのですか、ツェーザル様」
「今、俺の布団にゴキブリがいた」
アライダが、布団をひんめくると、ツェーザルの寝ていた布団にアーダがいる。他の妻たちが部屋に入って来た護衛を追い出した後、アライダが、
「こらダンゴムシ、なぜ、ツェーザル様の布団に入った」
「だって、あの虫かご、狭いし、布団もないし」
「そんなもの羽虫には必要ありません。布団から出なさい」
「はい、わかりました」
その後アライダ達にアーダは厳重注意を受けた。また、同様に妖精たちにもこの小言は告げられた。
「とにかく寝てからはツェーザル様の布団に潜り込まないこと。ツェーザル様の布団に潜り込めるのは私たち妻達だけです。いいですね」
「もし、この理を破って布団に侵入した者には俺の魔石の配給を停止する」
ツェーザルから告げられた追加の言葉は妖精と虫1匹には堪えたようで、おとなしくなった。
ゴキブリ問題も解決したし、今日の予定をどうするかという話になって、今日は市内観光をすることになった。朝食を食べて、宿屋の主人に観光名所を聞いた。
「この都市だと、2つの尖塔がある聖堂が有名だ。中には聖遺物もあるし、ゆっくり見て回ると、ここで1日楽しめる」
ということで、今日はこの聖堂を見に行くことにした。妖精と羽虫は付いてくると問題になるので、部屋の鳥かごと虫かごでおとなしくしているように厳命した。魔石の供給カットは効いたようでおとなしく従ってくれた。
俺たちは全員で出かけた。宿から近いというとこで徒歩である。通りを歩いて行く、先頭は公爵家からの護衛、昨日森を進んだ時と同じ順番である。この中では俺が一番弱い。だから、俺が中央、昨日と違っているのはメイドがいるということだ、メイドまで連れて行くと、人数が多くなりすぎるので置いていきたかったが、宿ではすることがないと言われ連れて行くことになった。
大通りを歩いて行くと両側に商店が並んでいる。商店は帰りに寄ることにした。行に買うと荷物になる。美術館もあるが俺は美術館には興味はない。
聖堂の尖塔は高いのでどこからでも見える。道を間違えることはない。少なくとも方向はあっている。しばらくすると目的の聖堂の前についた。
高い。これが第1印象。俺達みたいなお上りさんもいっぱいいる。見上げると首が痛くなるのでやめた。そのまま中に入った。
中も天井が高い。南側の尖塔は中に螺旋階段があって、登れるそうだが俺はやめた。以前ブルヘンジュ地方の旅行で尖塔に上った時、足が痛くなったことがあった。途中で痛くなると登るにしても下りるにしても恐怖しかない。あれを思い出すとやる気が失せる。
「おいアライダたち、お前たちは尖塔に上ってもいいぞ、俺はお前たちが下りてくるまで下で待っている」
すると、体力に自信のある妻やメイドは登っていった、半数は俺と一緒に下で待機となった。俺は聖堂の中の椅子に座って彼女たちが下りてくるのを待った。
ここは観光名所のようで人が途切れることなく訪れる。中には若い女子もいる。しかし目を合わせると大変である、ここでもめ事を起こすわけにはいかない。それでなくても昨日から妖精やダンゴムシのごたごたで俺の点数は低い。下を向いて過ごした。
尖塔へ行った妻たちが下りてきたので、みんなで宝物館へ行った。ここではあまり不謹慎なことは言わずに、「聖遺物、それは素晴らしい」全然心のこもっていない、うわべだけの言葉を述べた。
その後このあたりを散策、と言っても護衛もいるので自由行動とはいかずに、川べりをみんなで散策して気に入った店で昼食をした。
その後はまた元来た道を戻って、大通りの商店で買い物。しかし、ここで大きなミスに気が付いた。女の買い物は長い。俺は体力がない。朝から歩いているのでもう限界である。
店は最初の1軒だけにして、帰ることにした。女性陣から
「買い物が出来なかった」
と言われたので
「最初の1軒には行けただろう」
「あんなの買い物の内に入らない」
女性の買い物は長くて、しかもいろいろな店に入って比べるのがいいそうである。そんなの付き合っていられない。




