93.妖精の隠蔽
妖精の干物は口づけで魔力を注ぐと元に戻った。今馬車の中では元気に妖精が飛び回っている。時々妖精が俺の唇を奪おうとするので、それをアライダ達が威嚇して阻止している。
「なあ、アライダこいつらどうする」
「そうですね。ほんとうは馬車の窓から外に放り出して置いていきたいところですが、たぶん、外に放り出しても付いてくるでしょうね。ツェーザル様の唇を狙っているようですから」
そう言って俺を睨みつける。
「こいつらが俺の唇を狙っているのは俺のせいじゃないぞ。不可抗力だ」
「どうだか、最初に干物を見た時『超絶美少女』とか言っていたじゃないですか」
すると妖精たちが反応した。
「私たち超絶美少女、超絶美少女、旦那様に永遠の愛を、子づくりもOKよ」
なんか心臓に悪いことを口走っている。このままでは話が先に進まない。
「妖精たちと虫1匹とにかく黙れ。何も言うな」
すると、ダンゴムシが
「ひどい、私のことを虫だなんて」
「お前は、妖精たちに仲間に入れてもらえなかった虫だろう」
「それはそうですが、言い方があるでしょう。例えば可愛い虫とか」
「その寸胴のどこが可愛いのだ」
するとアライダが
「ツェーザル様、ダンゴムシなんかに相手になっていないで、これからどうするのですか」
「そうだな、おいお前ら、お前らは隠蔽の魔術は使えるのか」
そう言って妖精と虫1匹に話しかけたが
「隠蔽の魔術とはどういうものですか」
「隠蔽とは、周りから見えなくする魔術だ」
「知らない」
反応は薄い。
そこで、俺は昼行燈を全開にして見せた。すると、俺のことが限りなく希薄になっていくようで、
「ツェーザル様、どこへ行ったのですか」
そう言って、しばらく顔を動かしていたが、それもしばらくするとしなくなった。
そこで、昼行燈を解くと、
「あれ、ツェーザル様が戻ってきた」
「これが隠蔽の魔術だ。もっとも俺の隠蔽の魔術は『昼行燈』と言って隠蔽とは少し違うが、周りから認識されないようにすると言う点では同じだ」
「すごい、こんな魔術があるのですね。私たちもやってみます」
そう言って、妖精たちと虫1匹がやり始めた。しかし、うまく行ったのは妖精1人と虫1匹だけだった。
「私は出来た」
「私は出来ない」
「出来たのは虫1匹と最初に魔力を注いだ妖精だけか。彼女たちに共通しているのは、………」
この先は言いたくなかったので言わなかった。そうしたら、ダンゴムシが
「それはツェーザル様と愛の口づけを交わしたかどうかです。私はそれはもう濃厚な口づけを交わしました」
言わなくてもいいのに、言いやがった。
すると、妖精たちの眼が一斉にツェーザルに向いた。そしてアライダ達の眼が吊り上がった。
「どうする、アライダ」
「知りません、お好きなように、超絶美少女なんでしょう」
俺は妖精たちの方を向いて
「これは緊急事態だ。いいな、よくわきまえろ。これは好きですることじゃない。お前たちを隠すための絶対に逃れられないミッションだ。いいな。俺の前に順番に並べ、今からお前たちと口づけをする」
こう言って、俺は順番に妖精たちと口づけを交わしていった。中には強引に唇を重ねようとする妖精もいたが、無理やり引きはがした。
全員の妖精と口づけを交わした後、
「さあ、お前たちも昼行燈を全開にしてみろ」
俺がこう言うと、妖精たちは昼行燈を行使し始めた。
しばらくすると、妖精たちが認識されなくなった。
するとアライダが
「これが、ツェーザル様のスキルなのですね。もう妖精がどこにいるのか分からなくなりました。以前、ツェーザル様がどこにいるのか分からないときがよくありましたが、このスキルを使っていたのですね」
「そうだ、俺は女性に追いかけられることが多いので、その場合、このスキルを行使していた」
その後、俺は妖精たちを入れる大きな鳥かごを作った。この鳥かごは幾つもの部屋に分かれ中は見えない。そして、妖精たちに中に入るように言った。
この鳥かごは大きくて俺は持てなかったのでアライダに持ってもらうことにした。そして、虫1匹も元の虫かごに入れた。虫は
「なんで、私だけ虫かごなのですか、不公平だ」
と言っていたが、無視した。
その後、馬車は宿に着いた。俺たちは鳥かごと虫かごを抱えて部屋に戻った。




