9.明かりの魔道具の生産
それから、しばらくして、俺は父に呼ばれた。
「お前の作った電球の魔法陣だが、せっかくお前が作ったのだから、工場を作って販売しようと思う。王都に古い工場があったので、買い取った。そこにいた職人もそのまま雇用した。あとはお前が行って指導してもらえればいい。利益が出たらお前の将来の金にすればいい。販売は出入りの商会に頼んでもよいし、お前の知っている商会に頼んでもよい」
「わかりました。明日にでも行ってみます」
ということで、やってきました工場、なぜか姉がついてきた。うっとうしい。職人に魔法陣を説明していく。電球の魔道具は板の上に魔法液で電球の魔法陣を描いて、それを魔法液で書いた線で魔石とつないで作っていく。しかし、魔法陣が大きすぎる。これだと、魔法液もたくさん使うし、出来た魔道具も大きくなりすぎる。
そこで、鉄でとても小さい魔法陣を書いたハンコを作った。これは魔法陣が小さくて、とても他人には任せられない。仕方がないので、俺はいくつかこのハンコを作った。ただしこの魔法陣は逆向きである。ハンコなので、押したときに正しい向きになるようにした。これだと最初に小さい魔法陣を書いたハンコを作れば後はそれを押していくだけで魔法陣が量産できる。
次にこのハンコを、粘土板に押していった。そして出来た粘土板を焼いて素焼きの板を作った。この板には魔石を入れる穴と魔石と魔法陣をつなぐ線を作る溝、ついでに線にはスイッチも作った。この板に魔法液を垂らして魔石とつないで明かりの魔道具を作った。
これで最初の魔道具とは比べ物にならないくらい小さくなった。この魔道具はほとんどそれに入れる魔石の大きさぐらいの大きさである。使い方はまず魔道具の蓋を開けに魔石を入れる。そして蓋をして、あとは明かりが欲しい時にスイッチを入れる。長く使わないときは蓋を開け魔石を取り出す。すごく便利である。
一連の作業を見ていた姉が
「ツェーザルって、すごく器用なのね。それに頭がいい。最初の魔道具と比べるとすごく小さくなった。それにこれだと魔法陣の書き間違いもないし、使う魔法液も少なくて済む」
しまった姉の存在を忘れていた。魔道具作りに熱中しすぎた。俺が優秀だと思われると将来のスローライフが無くなる。これは自重しなければならない。しかし、この工場の収益は俺に還元される。これは難しいところである。
工場の職人には明かりの魔道具を量産するように命じた。そして、この魔道具の生産方法は絶対に秘匿するように命じた。特に、今回作ったハンコについては工場から絶対に出さないように命じた。
できた明かりの魔道具をいくつか持って帰って、これを扱ってもらう商会を探すことにした。
公爵邸に帰って、父に報告した。姉も同席した。
「工場での生産はうまくいきそうです。出来た明かりの魔道具をいくつか持って帰ってきました」
そう言って、出来た魔道具を父に見せると
「これが出来た魔道具か、とても小さいのだが、これで明るくなるのか」
「実際にやってみますね」
そう言って、魔道具の蓋を開け魔石を入れた。そして、スイッチを入れた。すると前世のLED電球のような明るい光が部屋にあふれた。
「これは明るい。眩しいぐらいだ」
「はい、これで室内を照らせば、夜でも活動できます。蠟燭のように煙も出ませんし臭いもしませんし。火事の心配もありません。スイッチを入れるだけで、明かりをつけたり消したりできますから、取り扱いも便利です」
「確かに、これは売れるだろうな。それで、これを取り扱う商会は決めたのか」
「いいえ、まだです。1つの商会ではなく幾つかの商会に扱ってもらおうかと思います。そうすれば、こちらが優位に立てます」
「そうだな、1つの商会だと『もうかってない』と言われても、わからないからな」
「はい。そこで、公爵家に出入りの商会とクラスに商会の娘がますので、そちらにも声をかけてみようと思います」
「わかった、出入りの商会には私から声をかける。今度の休みの日でいいか」
「はい、よろしくお願いします」
「時間は、その後の契約のこともあるから、朝一番でいいか」
「はい、それでお願いします」
横で、父とのやり取りを聞いていた姉が
「ツェーザルって、いつもぼーっとしていて、いてもいなくて分からないぐらいだったけど、こういうことさせるとすごく優秀なんだ。それに生き生きしている、なんか見違えてしまった」
しまった。やり過ぎた。俺の将来のスローライフのためにも、ぼんくらを装わないといけない。
次の日、アンナとリズそれとリーナに校舎裏に来てもらい、昨日作った魔道具を渡した。そして、
「これは俺が作った電球の魔法陣を組み込んだ明かりの魔道具。これを扱ってくれる商会を探している。商会は複数を予定している。この魔道具を扱うつもりがあるなら、今度の休みの日の朝一番に公爵邸に来てほしい」
そう言って、スイッチを入れると眩しい光があふれた。
「眩しい。こんな眩しい魔道具、見たことがない。これが噂のツェーザル様の作った魔法陣なの。すごい。これをうちの商会で扱わせてもらえるのですか」
「父からは、公爵家に出入りの商会以外にも、俺が決めてもいいと言われている」
「わかりました。今度の休みの日に寄せてもらいます」
次の休みの日の朝一番に、公爵家に出入りの商会2者とアンナとリズそれとリーナの商会がやってきた。リーナの父親からは娘の窮状を救ってもらった礼を言われた。
その後、父や姉それに公爵家の執事長を交えての商談となった。5つの商会ともこれを扱うことになった。父の意向としては俺にすべて任せて、その分俺の取り分を多くしたいようであったが、そうすると他の貴族から問題を起こされたときに対応できなくなるということで、公爵家と俺の取り分は半々になった。
出来た製品の価格から販売手数料を3割、税金を1割として、製品価格の6割から材料費と工場での経費を除いた残りの、半分づつが公爵家と俺の取り分となった。あとの細かい契約とかはよくわからないので、執事長に任せた。商談は昼食をはさんで午後にも続いた。最終的に魔法契約に署名したのは夕方であった。
これで、俺が将来この家を出てからも、一定の収入が確保される。「ひょっとして何もしなくてもいいのではないか」とも思ってしまう。スローライフまっしぐらである。




