10.平穏な日々
明かりの魔道具の販売が始まると、注文が殺到した。とにかく今までの蝋燭だと、煙や臭いそれにすすが出る。すすは後で掃除が大変である。それに、工場での生産工程の簡略化と使用材料の少なさから生産コストを抑えることが出来た。それで販売価格も良心的である。あまり売れるので、工場での生産が間に合わなくなった。すると中には買った明かりの魔道具を転売する者まで現れた。そこで、今度は転売禁止にした。
工場の増設の話も出たが、俺としては一度買うと壊れるようなものではないので、出来れば末永く売りたいところである。それで工場増設は断った。父上もそれでいいと言ってくれた。
密かにその魔法陣をまねて作ろうとした者もいたが、ツェーザルが作った魔法陣をツェーザルの許可なく勝手に使うことはできない。これが子爵家ぐらいなら高位貴族の力で何とかなったであろうが、公爵家では手が出せない。
それにツェーザルが作った魔法陣を刻んだハンコがとにかく小さいのである。それにこの魔法陣には理解できない部分が多く、内容を理解していない人間には、とてもそんな大きさではまねができなかった。
俺の懐に入ってくる金が半端ない。「俺もう将来働かなくていいのじゃない」と思ってしまう。するとクラスの女子の見る目が変わった。今までは今は公爵令息と言っても将来は平民と言っているような男は、正直言って結婚対象ではない。しかし、遊んで暮らせるのである。貧しい男爵家や子爵家に嫁に行くよりはずっといい。昼行燈の効果が薄れている。最近実感されることである。それで昼行燈の効果を高めるため、昼行燈に明いっぱい魔力を込めている。そのせいか、最近は疲れ気味である。俺の平穏な学院生活どこへ行った。最近は愚痴ばかり出る。
やっと年末年始の休みになった。しかし、日頃の疲れがたまって、寝込んだ。普通休みにはパーティーとかお茶会とかが多く開催される。これまでは、引きこもりということで、ほとんど顔を出したことはなかった。しかし、学院に通うようになってからは、姉が要らないのに招待状を持ってくるのである。しかし、体調不良ですべて欠席とした。体調不良万歳である。病気もたまにはいいものである。思考回路がおかしくなっているツェーザルであった。
そんな安息の日々も昨日で終わって、今日からまた憂鬱な学院生活である。久し振りに学院に行く。朝の馬車は姉と一緒である。
「今日の体調はどう」
「何とか大丈夫だと思う」
「せっかくの休みだったのに、お茶会すべて欠席なんだもの。ツェーザルに会いたいっていう子もいっぱいいたのよ」
これを聞いて「やっぱりお茶会は欠席してよかった」そう思うツェーザルであった。
教室に行くとクラスの友達にも声をかけられた。今までになかったことである。昼行燈が効いてない。昼行燈が効いていれば、俺が認識されないはずである。まして声をかけられるなんて。もう一度昼行燈を鍛え直さないといけない。
それから苦難の日々を過ごしてやっと期末試験となった。これを乗り越えればあとは学期末休暇。また、余裕の日々がやって来る。そうこれを乗り切れば。今日も昼行燈、全開で行くぞ。普通試験というと出来なかったらどうしようと思うのであるが、ツェーザルの場合、試験の結果よりも試験に集中しすぎて昼行燈の効果が薄れることを心配するのである。
試験が始まった。
必須科目の国語、数学、外国語、魔法理論は完璧にできた。法律、貴族の常識についても問題なくできた。魔法実技についても、込める魔力少な目でうまくいった。平均ぐらいの出来である。剣術実技は全くダメ。でも出席点があるので合格はもらえた。
選択科目の薬学については、初級ポーションを作って合格である。魔法陣についてはすでに合格をもらっている。商業取引については、試験はそこそこできた。それに「明かりの魔道具を作る工場にかかわっている」と言ったら、「実績は大事なので点数に加算してやる」と言われた。最後の地理だが、正直言って暗記物みたいで試験はそこそこできた。
全体としては高得点が期待できそうである。結果はクラスで20番とのこと。頑張り過ぎた。次の試験では手を抜こう。そう思うツェーザルであった。




