86.結婚式
今日はツェーザル達とアライダ子爵令嬢、カーチャ男爵令嬢、セリーナ男爵令嬢、イルメラ男爵令嬢、アニカ男爵令嬢、エバ男爵令嬢、アンナ、リズの結婚式である。
普通結婚式というと、新郎新婦は1人ずつ、それが、新郎1人に新婦8人である。教会で誓いの言葉を述べる時も神父が目を回している。
事前に根回しして説明したつもりであったが、いざ当日になると、頭では分かっていても、気持ちが付いて行かないようである。目がにらんでいる。
この世界では1人の夫に複数の妻は当たり前のはず、そんなに睨まなくてもいいのにと思ってしまう。
「病める時も………」
なぜかその先を言ってくれない、事前の打ち合わせと違うじゃないの、俺たちはただ「誓います」と言えばいいはずじゃなかったのか。
面倒になったので、アライダ達と目配せして
「誓います」
と言うと、神父が
「もう少し私の言葉を聞きなさい」
と言って、誓いの言葉を認めてくれなかった。
それからしばらくして、
「それでは、新郎と新婦は誓いの言葉を」
と言ってくれたので、俺とアライダ達で一緒に声を合わせて
「誓います」
と言って、俺たちの結婚が成立した。
その後の新郎と新婦のキスも複数である。神父が面倒くさそうにしている。
後ろの招待客が
「ハーレムだ。うらやましい」
とささやいている。すると
「あなた、そんなことを言うと後で娘に言いますよ」
何となく夫婦げんかも始まっているようである。
でもそこは公爵家の威厳、父がそんな招待客をにらむと、騒いでいた夫婦は口を閉ざして下を向いた。
ネルデンベルク公爵家はこの国では名門、それにツェーザルの活躍もあってネルデンベルク公爵家はこの国でも有数の財力を誇っている。それに、結核に効くポーションで命を救われた貴族も多く、悪く言う貴族はいない。
そんなごたごたの結婚式もようやく終わり。俺たちは解放された。新婦がブーケを投げるのも8個もある。ただ、一番人気は正妻のアライダの投げたブーケで、ほかの側室の投げたブーケはあまりとりに行く令嬢はいなかった。まさに異例ずくめである。
教会での結婚式の後、この国の法務局によって婚姻届にサインして提出した。すると、法務局の役人が、
「正妻がアライダさんで、ほかの7人は側室、これ間違いじゃないですよね」
なぜか念を押された。俺が
「間違いありません」
と答えると、役人が不安そうにしている。アライダが
「私が正妻、ほかの7人は側室です」
さらにカーチャたちが、
「私たち7人は側室です」
こう言って、やっと納得したようで婚姻届を受理してくれた。
午後からは男爵邸でパーティーである。急いで男爵邸に戻らなければならない。パーティーは男爵邸の1階で行われる。すでに1階にあった物は俺のマジックバッグにすべて収納した。
パーティー会場の設営は公爵家の執事とメイド長にお願いした。こればかりはうちの男爵家のメイドではとてもできない。なんせうちのメイドは奴隷、とてもこんなことはできない。
男爵邸に戻ると、広々とした1階にはテーブルが並べられ、その上にシーツが広げられている。椅子や招待客の座るところには招待客の名前を書いた札が並べられている。
料理はあらかじめ作ってマジックバッグに入れられている。それを、公爵家から派遣された料理人が食器に並べている。さらにこれも公爵家から派遣されたメイドが手際よくテーブルの上に並べていく。
俺とアライダ達は、すぐに母上に呼ばれた。これからパーティーで着る衣装に着替えなければならない。
「まさに戦場の忙しさ」
そんな言葉をつぶやくと
「何を言っているのですか。女にとってパーティーは戦場。ドレスは戦闘服ですよ」
母上に怒られた。
それから、俺は燕尾服に、アライダ達はドレスに着替えた。いつも一緒にいたが、こうやってドレスを着た彼女たちを見ると見違えるようである。
「綺麗」
思わず口に出た。
するとアライダ達が
「ありがとう。ツェーザル様も素敵ですよ」
目と目を見つめ合って、思わず手を取ろうとすると
「何をやっているのですか。今は忙しいのですよ。そんなことはパーティーが終わってからにしなさい」
母上に怒られた。
その後、招待客がすべてそろったようで、パーティーが始まった。
俺とアライダ達8人が入場すると、1人の新郎に8人の新婦、会場から
「うらやましい」
という声が漏れる。
その後来賓の祝辞や友達の言葉などが続く。何故かその言葉の中に何となく棘を感じるのは俺の気のせいだろうか。しかし「結婚を祝ってくれるのだから」と肯定的にとらえることにした。
異例ずくめの結婚式は波乱なく終了した。
「やっと終わった」
これが俺の偽らざる思いであった。




