85.学院卒業
ツェーザルの作った魔道具はその効果が実証されたので、アライダ達や元冒険者、公爵家の護衛にもその魔道具をつけた。そして、再度ダンジョンに行って実証実験をした。
しかし、この魔道具は彼女達にはあまり有効ではなかった。パワーステアリングと同様、油の噴射器や噴霧器は使う魔力が半端ないようで、アライダ達は一度使うと魔力切れでへたってしまった。元冒険者、公爵家の護衛も同様であった。
そこで、パワーステアリングと同様、剣や槍に魔石を仕込んでの魔力で動かすことにした。しかし、これだと連続使用は難しい。そこで、交換用の魔石を多数渡しておいて、それを交換しながら使うことにした。
再度、ダインジョンに行って実証実験をした。今回はなんとか様になった。どうもこの魔道具は俺専用のような気がした。これなら俺が隔離されることもないだろう。
ダンジョンでの活動は一段落、俺もこの魔道具があれば一応戦える。盗賊に襲われてもお荷物になることはないだろう。
あとは卒業までの日々をダラダラ過ごし、卒業したら結婚式をして、旅に出る。後は気の向くまま、心の赴くまま諸国を巡る。優雅なスローライフである。
学院は相変わらず暗い。3学年は卒業まであと少し、何とか踏ん張っているようである。マルテやベルンハルトなど就職が決まった人間は余裕のようだが、ほかの人間は不況で就職先が減ったこともあり就職活動はきついようである。
しかし、学院卒業はこの国ではエリートの仲間入り、就職先がないということはない。結局どこかに就職するのである。
授業は淡々と進んで行く。資格を取ろうとする人間はその資格試験に追われているようであるが、俺はその気はない。何もせずに過ごしていたら、薬学の先生から薬師の資格を取れと言われた。
なんでも薬学満点の俺が資格を取らないと薬師の資格を取った者が軽く扱われるとのことである。面倒だなと思ったが、薬学の先生には世話になっているので試験を受けた。
薬草の見分け、鑑定で完璧、ポーション作成、俺の魔力量だと上級ポーションも作り放題、すぐに合格がもらえた。アライダ達も一緒に試験を受けた。そして薬師の資格をもらえた。
その後、学年末試験になった。結果は前回同様、俺が5位、アライダ達は少し順位を上げたようである。これで卒業式を迎えるだけである。
卒業式では俺とアライダとカーチャはマルテやベルンハルトに交じって成績優良者として表彰された。何でも学年順位が10番以内で品行方正な者が表彰されるらしい。
その後は学院主催の卒業パーティー、今回の卒業生には王族はいない。乙女小説定番の婚約破棄は当然起きない。王族もいなければヒロインもいない。
マルテやベルンハルトは「独身貴族をおう歌する」と言ってまだ婚約者がいない。当然婚約破棄はない。しかし、次から次へと彼らを狙う令嬢からダンスを申し込まれている。それをありあまり体力でこなしている。
「脳筋種族が」と俺は、俺自身の自尊心を保つために、彼らを頭の中でけなしているが、これは体力ない俺のささやかな抵抗である。口に出せば何倍にもなって跳ね返って来るので、心中で思うだけで口に出しては言わない。
俺は前世の記憶を思い出してから、ほかにも前世の記憶を持っている者がいないか観察しているが、そのような者とは今のところ出会っていない。
1年の時に行ったブルヘンジュ市旅行でも、勇者の伝説はあるようだが、それが転生者に結び付くかというとはっきりしない。俺以外にも、前世の記憶をもっていて、それを用いたような画期的な発明をした人間の話は聞かない。
今のところ転生者はこの世界には俺しかいない。俺としてはそう思っている。
「ツェーザル様、何を考えているのですか。踊りましょう。私たちは婚約者。もうすぐ結婚するのですよ」
「そうだな、踊ろう」
そう言って、アライダの手を取った。その後はカーチャ、ついで、セリーナ、ここまでは踊れた。しかし、後5人いる。俺の体力がもたない。ゼイゼイ言いながら後の5人は男爵邸に戻ってから踊ると言って許してもらった。
体力のないツェーザルは卒業パーティーをこなすのも一苦労である。




