77.学院祭(タコ料理は売れ残る)
学院祭当日になった。この日までに作った料理はすべてマジックバッグの中に入れた。箸と茶碗もある。クイズや競技に使う箸も作った。準備OKといいうことで学院に行った。事務室へ行って使う教室のカギをもらった。
教室へ行って、まずクリーンの魔法をかける。さすが異世界、前世だと今から掃除であるが、この世界には魔法がある。
「クリーン」
と唱えるだけで教室がピカピカになる。
「それにしても、ツェーザル様の魔法はすごいですね。生活魔法は生活魔法なのですが、ここまできれいになるとは」
どうも俺の生活魔法は規格外みたいだ。たぶん込められている魔力量がすごいのだと思うが、俺にもよくわからない。
教室の中の椅子と机をテーブルのように並べていく。あと厨房代わりに教室の隅の一角を衝立で囲って、メニューを見えるところに張って、教室の入り口に、ツェーザル亭と書いた客の呼び込み用の看板を立てる。これで準備はOK、後はお客さんが来るのを待つだけ。
しかし、居酒屋に朝からお客さんが来るはずもない。昨年までの状況だと、昼前に少し来て、後はおしまい。時々罰ゲームにタコ料理が売れたぐらいである。
「アライダ、そんなに身構えなくても、昼まではお客さんなんか来ないぞ」
「そうですね、朝からおでんやそばが売れるとは思いませんね」
「順番に学院祭を見に行くか」
「そうしますか」
ということで、俺たちは半分ずつ学院祭を見に行くことにした。最初は俺を含めた半分。校内を1周してきて交代ということになった。
模擬店を見て回った。アクセサリーや刺しゅう、魔道具を売っている店もある。あとは剣術の模擬戦、これは思わず見入ってしまった。俺もあれくらい剣術が出来たら、困っている姫をさっそうと救う王子様になれるのに、現実は全く反対、今もアライダ達が俺のボディーガードをしている。
次は校内に入って、講堂に行った。講堂では時間を決めて、持ち回りで劇や合唱、楽器の演奏が行われるらしい。俺たちが見に行った時は合唱をしていた。前世でも確か学校に行っているときは合唱コンクールとかあったと思う。
ただ、この世界には魔法がある。合唱といっても歌に魔力を乗せて歌うと、心にではなく体に響いてくる。まともに聞いていると変な気分になる。これは要注意である。
後、武術大会、今日は魔術部門とのこと。見に行こうと思ったが、これは人気なので観戦するには事前にチケットがいるとのこと、そんなもの購入していないので諦めた。
とにかく俺は、この3年間、およそ武術とは無縁であった。その付けがきているようである。
「なあ、アライダ、お前たちは武術大会の観戦にチケットがいることを知っていたのか」
「当たり前じゃないですか。ツェーザル様は知らなかったのですか」
「知らなかった。1年の時も2年の時も多少は見て回ったが、基本屋台で時間が過ぎるのをまった。学院祭は参加しさえすれば合格点をもらえると聞いていたから、そうしていた」
「なんともはや、後ろ向きと言うか、ツェーザル様らしいというか。若し武術大会を見たいのならだれかにチケットを譲ってもらいますが」
「いや、要らない。自分がみじめになるだけだから」
「そうですか」
「ツェーザル様は頭はいいのに、格闘系は全くダメなんですね」
「そうだな、期待しているぜ、アライダ」
「優男、金と力はなかりけり」
何となく前世の記憶がよみがえる。しかし、俺の場合、金はある。力(武術)がないだけである。一応一通り、見て回ったので元の教室に戻って次のメンバーと交代した。
なお、俺たちが学院祭を見て回っているとき来た客は朝食を食べてない生徒が2人来ただけとのこと、クイズに挑戦して全問正解なら食事代は”ただ”と言ったら、クイズに挑戦して、1人は全問正解したが、もう1人は1問間違ったとのこと。ちなみにクイズは4問とのこと。”ただ”になった生徒はまた昼飯を食いに来ると言っていたそうである。
残りのメンバーが学院祭を見に行っているときはお客さんは来なかった。
昼飯時になった。お客さんがいっぱい来た。そして全員がクイズに挑戦していく。3人に1人ぐらいは食事代が”ただ”になる。アライダ達の作った問題はやさしすぎたようである。
ちなみにタコ料理はあまり売れない。というか、ほとんど売れない。
2日目は朝からお客さんがきた。そしてクイズに挑戦していく。どうも、昨日来た生徒が、今日は朝食をここで食べるつもりで朝食を抜いてきたようである。
朝からてんてこ舞い。結局用意した料理が朝でなくなったので、早々にタコ料理以外完売の看板を掲げた。昼に来た生徒が怒っていたが、タコ料理ならあるというと
「タコは要らない」
と言って別の店に行ってしまった。
このようにしてツェーザル達の学院祭は終了した。中々タコ料理はこの国では受け入れられないようである。




