76.学院祭準備
物価の上昇で社会は暗いけど、学院の方はいつもの日常が過ぎていく。春は学院祭の季節である。昨年までは俺だけで屋台を出していたが、今年はみんなで一緒に店を出すことになった。
9人もいるので屋台でなく、店にしてそこで料理を出すことにした。
「どんな料理にします」
「エラの領地から魚を仕入れて魚をメインした料理にしよう」
「タコも出すのですか」
「当然。ただしタコ料理は単価をすごく下げてもいい」
「わかりました。多分売れないと思うけどタコ料理もメニューに加えましょう」
今回は9人でするということで、教室をあてがわれた。屋台のおでんと違って、教室となるとじっくり座って食べるものが好まれるはずである。料理のメニューをどうする。思案のしどころである。
1年の時は、昆布だしの効いた野菜の煮物、その中にところてんや豆腐を入れた。それに、わかめのお吸い物(タコ抜き)とそばであった。
2年の時はこれに、タコのお吸い物を加えた。
今年はタコ料理のレパートリーを増やすことにした。タコ料理と言えば前世のタコと里芋の煮っころがしが思い出される。
魚料理はエバとエバのメイドに任せた。エバは領地にいる時も料理はしていたようである。
しかし、この世界では里芋を見たことがない。確か里いもは暖かい地方原産だったと思う。ここライラント王国は北国なので栽培されていないのかもしれない。
そこで、里芋の代わりにジャガイモを使うことにした。今日は朝から男爵邸の厨房でタコ料理に専念である。ここは俺の家、追い出されることなく堂々と料理している。
ただアライダ達は俺から少し離れて恐る恐る俺の料理を見ている。
「お前たちも見ているだけでなく、何か作れよ」
「私たちは料理を作ったことがないので。料理は厨房の料理人に任せています」
「使えないな。暇なら、何が面白いことでも考えろよ」
「面白いと言っても」
「例えばな、クイズを出して、全問正解なら料理の代金が”ただ”になるとか。代わりに全問不正解なら俺のタコ料理を完食するとか」
「それ、いいですね。是非やりましょう」
結局案を出したのは俺だった。それからアライダ達はクイズの問題作りに専念することになった。
なお、タコとジャガイモの料理は、少し葉物野菜を入れて彩りを整えることにした。
今年のメニューは、昆布だしの効いた野菜とトコロテンと豆腐の煮物、わかめのお吸い物(タコ抜き)、そば、魚の塩焼き、魚の煮物、タコのお吸い物、タコとジャガイモの炒め物、するめ、となった。
アライダ達がメニューを見て
「何で、するめなんてあるのですか」
「何でって、あるのだから出せばいいじゃないか。するめは美味しいぞ」
「まあ、メニューに加えるだけならいいですが」
ということでメニューも了解を得た。料理も作った。茶碗と箸は1年の時に作った物がまだ残っている。
アライダ達が箸を見て
「去年も思ったのですが、この箸なんか使いずらいのですが」
「そんなことないぞ、こうやって、便利だろう」
そう言って、俺は箸で野菜やタコをつまんでみた。また、魚を身と骨に分けてみた。
「それにしても、ツェーザル様は器用ですね。2本の棒を指で操作して野菜をつまんだりできるのですから。もっと重たい物もつまめるのですか」
「そうだな、重い物なら卵ぐらいだったらつまめるぞ。細かい物だったら、豆もつまめるぞ。お前らもできると思うぞ、やってみたら」
「そうだ、クイズ以外にも、この箸で卵つかみ競争や豆つかみ競争もしてみたら、どうかしら」
「そうだな、それも面白いな」
こうして、ツェーザルの店ではクイズ以外に箸で物をつかむ競争が追加になった。




