71.魔法理論と魔法陣
次に魔法理論、これは前世の物理化学に似ている。と言っても前世の世界に魔法があるはずもなく、入力と出力、その過程が一定の理論に従うという訳である。
前世のエネルギーに対応するのがこの世界では魔力である。だから前世のエネルギーに関する法則をここでは魔力に置き替えれば大抵は説明が付く。
しかし、これを教えるのは一苦労である。俺はこれを鑑定を駆使して理解できるが、鑑定を持っていないアライダ達にはどうしたらいいものか。
本当は基礎からじっくり教えるのがいいのであろうが、もう試験まじかである。短期決戦に勝つには丸暗記しかないと考えて、数学と同様、予想問題と模範解答を片っ端から作っていった。
まず魔法の入力、これはいくつかの条件を書き出して。それを入力の仕方で分類分け、そして入力側のパターンを作っていく。
そして、そのパターン化した分類に従って魔法法則を当てはめて、今度は出力側のパターンと連動させる。
この表を作るのに3日ほどかかった。そして、表をアライダ達に覚えてもらった。この分類表に出ていないパターンが出た時はあきらめである。全く新しい問題が出た時の数学と同じである。
本当はもっと時間をかけてこの分類表を完璧したかったが、アライダ達言わせると「表が複雑になっていくと覚えるのが大変なので、これくらいでいい」とのことである。
心配になったので、これまでどうしていたか聞いてみた。
「今まで魔法理論はどうしてきたのだ。よくこの状態で合格点がもらえたな」
「教師の先生の書いた問題を必死で思えてやっと合格点をもらっていたの」
「そうか、ほんとはもっと基本的なことから学習しないと、なぜ、この法則が必要かわからなかっただろう」
「はい、もうただ覚えるだけでした」
「時間がないから、今回は丸暗記で行くが、時間があればもう少し基本的なことから勉強し直した方がいいな」
「えー、学院を卒業したらもう勉強しなくていいでしょう」
「そうだな、それもそうか」
何故か、教える側の気力をそぐ回答が返ってくる。
最後に魔法陣、これは前世のプログラムに似ている。と言ってもプログラムと言うよりはサブルーチンを簡素化したと言った方がいいかもしれない。
この魔法陣は一種のICチップのようなものである。いくつもの作業工程を1つの箱に書き込んである。俺は鑑定を駆使して、このいくつもの作業工程を分解して理解していた。
しかし、この世界の人間は、これが出来ないようで、これまでの魔法陣をただ覚えるだけのようである。だから新しい魔法陣を生み出すのは難しいらしい。
俺が立て続けに新しい魔法陣を生み出したので、俺は魔法陣の天才と思われていたようであるが、俺は重ね掛けされた魔法陣をを分解して組み替えてきただけである。
さて、これをどのようにして教えるか。まず基本的な魔法陣を書き出した。それを、俺の工房で作っているガラスの上に書きだした。そして、これに上から光を当てる。すると下の紙に魔法陣が映る。
次に、違う命令を書いた魔法陣をガラスの上に書く。そして、先ほどのガラス板と重ねて上から光を当てる。すると2つの命令が書かれた魔法陣が、紙の上に映る。
このやり方で魔法陣を教えることにした。ただし、人数が多いので男爵邸の1階に置いてある投影機を持ってきて、壁に魔法陣を投影することにした。
「魔法陣の解き方を教える。まず、これは基本的な命令が書かれた魔法陣だ」
そう言って、水を出す魔法陣が書かれたガラス板を壁に投影する。
「この魔法陣は水を出す魔法陣だ」
次に、水を飛ばす魔法陣をこの魔法陣に重ねて投影する。
「先ほどの水を出す魔法陣に、水を飛ばす魔法陣を重ねると、俺たちがいつも使っている水魔法の攻撃用の魔法陣になる」
「へー、魔法陣って、幾つも命令が重ねてあったのですか」
「そうだ、だから複雑になっている」
「でもそんなこと授業では教えてくれませんでしたよ」
「それが不思議なのだ。たぶん先生も知らないではないかと思っている。だからこのことはここだけの秘密だ」
「ですね、こんなこと言ったら私たち、王宮に呼ばれますものね、そして下手すれば、隔離」
「ついでだから、この2つの魔法陣に爆発する魔法陣を重ねると水蒸気爆発と言って、強力な爆裂魔法となる」
「えっ、そんな魔法陣知りませんよ」
「だろうな、こんな強力な魔法陣、恐ろしくて使えない。たぶん、この前行ったダンジョンで出てきたゴーレムぐらい簡単に木っ端みじんにできる」
「その魔法陣って、ツェーザル様の剣と槍にはセットしてあるのですか」
「していない、恐ろしくてセットできない。でも旅行に行くときはセットした剣や槍も作ろうと思っている」
「そうですね、旅行に行けば強い魔獣に出会うかもしれませんものね」
このようにして魔法陣の講義も順調にこなして行くのであった。




