69.イカのするめと室内遊技場の拡充
俺の男爵邸の1階が室内球戯場となると、クラスの男子が学院の帰りに寄ることが多くなった。学院が終わってから、ここでひと汗流して帰るようである。
この世界では、このような室内球戯場は珍しいようである。パーティーなどで利用するホールは多くあるが、卓球台やビリヤードそれに俺が考案した王国百景といった遊びが常設されているところは少ないようである。
別に減るものではないので、自由に使わせているが、競技が終わった後、お茶とお菓子を無心するのはやめてほしい。同じものを用意すると
「昨日と同じか、違うものはないのか」
と文句を言われる。
頭に来たので、メイドに言って、イカのするめを用意させた。イカのするめは、俺が前世の記憶をエラに伝授して、彼女の領地で作ってもらっている。日持ちするので、作ること自体は問題ないようであるが、姿がこの世界の人間が嫌うイカの姿そのままなので、エラの領地でも食べるのは肝試しの様な物らしい。
マルテとベルンハルトが、イカのするめを見てぎょっとしている。
「おい、ツェーザル、これは何だ」
「これか、これはイカのするめだ。美味しいぞ」
そう言って、俺がイカのするめを食べると、2人が驚いた顔をして
「お前、そんなもの食べても問題ないのか。後で呪いとかはないのか」
「ないぞ、俺はよく食べている。エラも食べる。俺の男爵邸の護衛やメイドにも食べさせている。最初は『ご主人様、どうかご勘弁を』と言っていたが、最近は『美味しい』と言っているぞ、特にマリーの子供は喜んで食べている」
「そうか、死にはしないのだな」
「当たり前だ、お前達も食べろ」
「いや、俺は遠慮しておく」
そのようにして、最初は食べなかったが、運動後の空腹は我慢できないようで、特に隣で俺が美味しそうに食べていると
「毒ではないなら、少し食べてみるか」
そう言って、恐る恐る食べだした。
「確かに味自体は悪くないな」
「だろう、食べると病みつきなるぞ。もうこれなしではいられ無くなる」
「いや、俺はこれくらいで十分だ」
そう言って、少し食べてやめにしたようである。
「それにしても、この遊技場はいいな。外は寒いが、ここは雨露を凌げる。冬に球技が出来るのだから最高だ、これからもちょくちょく来ていいか」
「来ること自体は問題ないが、運動後のお菓子に文句を言うのはやめてほしい。俺の男爵邸に来たのだから出された食べ物は文句を言わずに食べろ」
「あー、あー、わかった。努力する」
「それならいつでもどうぞ、歓迎する」
また、たまにアライダ達が友達の女子を連れてくるときもある。そして室内競技に歓声を上げている。そういう時は俺は2階の男爵邸から出ないようにしている。下手に顔を見せて面倒なことになると困る。この男爵邸では昼行燈は弱め、そうしないと俺の休まる時がない。
この世界の貴族の令嬢は、大抵が体を動かすことよりも、お茶会でだべったりする方が好きなようであるが、それでも体を動かしたいときもあるようで、そんな時はこの室内遊技場は最適とのことである。何より学院から徒歩5分これが一番気に入っている点らしい。
好評なので、何か次の遊具をと思っているのだが、次が思い浮かばない。前世の記憶をもとに平均台と鉄棒と雲梯を並べてみた。
何か飛び跳ねるようなものが作りたかったのだが、この世界にはゴムがない。そこで、魔獣の皮を縫い合わせて袋にして、中に空気を入れてボールのような物を多数作った。これを敷き詰めてその上に板を敷いた。
板の上に載って、飛び跳ねてみたが、反発力が弱い。もう1工夫必要である。そこで、反発力を補完するものとしてばねを併用することにした。魔獣で作ったボールの隙間にばねを仕込んでいった。すると反発力が改善された。前世のエアーマットの記憶からすると物足らないがこれで我慢することにした。
この飛び跳ねる床を一番気に入ったのはマリーの子供たちであった。いつもここにきて飛び跳ねて遊ぶようになった。
クラスの男子も、この飛び跳ねる床は気に入っているようで、宙返りをしている。器用である。運動音痴な俺にはできない。
平均台や鉄棒、雲梯も俺よりよほど器用にこなしている。どうせならと、平均台と鉄棒、そして、雲梯と飛び跳ねる床を5列ずつならべて5人で競争できるようにした。これにはマルテやベルンハルトたちクラスの男子には大うけした。
「ヨーイ、ドン」
掛け声とともに、平均台を渡り、鉄棒で前回り、雲梯を渡って、飛び跳ねる床で宙返り、まるで前世の体操競技を見ているようである。だれが一番早いかを競っている。着地が美しく決まると、見ている女子が歓声を上げる。
この遊具をそろえてからはマルテ達が毎日やってくるようになった。それに、これは見ていても飽きないようで、これを見に来る女子も多くなった。
うちの男爵邸が冬の間の遊び場になってしまった。すると、「この一連の遊具も販売したい」とアンナとリズが言ってきたので好きにさせた。




