67.屋外実習
秋になると屋外で魔獣を狩る実習がある。王都近郊の森に行って、テントを張って1泊2日の実習である。実習には騎士団や魔法士団からも護衛の要員が派遣されるので危険はない。
当日は学院を馬車で出て昼前に森に到着、テントを張って、薪を集め、持ってきた食材を調理して食べる。
本当は食材も現地調達にしたいところだが、そうすると森の奥深くへ入る必要があり危険ということで、食材は持ち込みとなっている。
その後、テントで1泊。次の日はグループで森に入って、魔獣を狩る練習、魔獣がでなければ単なるハイキングである。
クラスで最弱の俺のテントを張る場所は当然護衛騎士のすぐ横、森の奥になぞにテントを張ってもし護衛の騎士が来るのが遅れたら、俺の命はない。例年森の一番浅いところで、騎士団の横にテントを張るのは俺の特権である。
俺たちの作るポーションに救われた貴族は1人や2人ではない、たいてい親戚の誰かが救われている。だから、このような怠慢をはたらいても、とがめられたことはない。
例年と同じ騎士団の横にテントを張っていると、アライダ達がやってきたそして今年も俺の横にテントを張った。
「毎年ここにテントを張るのですね」
「そうだ、ここは俺の特等席だ。クラスで最弱の俺は魔獣と戦うなぞ論外だ。屋外実習は参加しさえすれば合格点がもらえる」
「そうですね、別に魔獣を倒さなくてもいいですものね」
「そうだ」
そんな話をしていると騎士の1人が話しかけてきた
「ツェーザル様ですよね」
「俺たちは生徒だから別に様は付けなくてもいいぞ」
「そんなわけにはいきません。公爵家の方ですから、それに俺の姉があのポーションで命が助かったんです。ツェーザル様は姉の命の恩人なんです」
「そうか、それはよかった。ポーションが役に立つと聞くと作った甲斐がある」
こんな感じである。その日は気分をよくして寝た。それでも一応自分の周りには結界を張った。
次の日は朝朝食をとると、午前中は魔獣を狩る練習である。当然俺は最後尾、ただ付いて行くだけである。俺がクラスで最弱、体力では女子にも負けることはクラスのみんなはよく知っている。だから俺が最後尾でも誰も文句を言わない。むしろ前に出ようものなら歩くスピードが遅れると文句が出る。
今回はアライダ達が俺の周りを固めて護衛している。俺はVIP待遇である。魔獣がいたとしても当然俺が行くまでに魔獣は倒されている。
昼前になって来たので、森の散策はやめて集合場所に戻った。出るのは一番遅く、帰ってくるは一番早い。狩った魔獣はゼロ、騎士団に就職を希望している生徒だと、ここで、好成績を出さないといけないのだろうが、俺は騎士団に就職する気はない。
集合場所で、アライダ達とおしゃべりしながらほかの生徒が戻ってくるのを待っている。俺が注意しなければならないことは、ただ1つ。俺の甘美の香りが暴走しないこと。これだけである。今も必死にこのスキルを抑えている。
俺は以前、雌猫にまとわりつかれたことがある。俺は雌猫の追跡を必死で振り切って逃げたことがある。
昼も近くなってくると、他の生徒もほとんどが戻ってきた。後は数名と思っていたら昼になっても戻らない生徒がいるとのこと。
どうするのかなと思っていると、騎士団と魔法士団で捜索に行くそうだ。俺たちは引き続きここで待機とのこと。今応援の騎士団と魔法士団を呼んでいるそうだ。
俺たちは捜索に加わらなくてもいいそうだ。何でも森の奥に行ったようで、今の生徒の実力ではかえって危険との判断である。
『集団行動はまとまりが大切、10分前行動、俺たちは機械の歯車、突出した実力は要らない。平気的な実力が求められる』前世の記憶がよみがえる。
「無理して強い魔獣を狩らなくてもいいのに。かえって、みんなに迷惑をかけているじゃない」
アライダ達が愚痴る。
ほかの生徒たちも
「何やっているのだか、あいつら、騎士団には入れてもらえないだろうな」
「だよな、騎士団に捜索されているんだから、名前は憶えられているし、集団の規則を守れないということで、試験も受けられないかもしれない」
なんとも、かわいそうな限りである。
その後、戻ってこなかった生徒たちが見つかったようである。森の奥で魔獣に襲われ怪我をしていたそうだ。騎士団が駆けつけるのが遅れたら死んでいたかもしれないそうだ。
見つかってよかった。結局王都に戻って来たのは夜になってからだった。
己の実力を知るのは大切なことだと思う。俺は弱いだから常に用心している。これでいいのだ。自分の行動原理を再認識するツェーザルであった。




