60.特別馬車の製作と投影機で旅行気分を味わう
結婚したら旅に出る。これは俺の決定事項である。アライダ達もついてくると言っている。そうなると今の馬車では狭い。少し大きめの馬車を3台注文した。1台は俺とアライダ達が乗る馬車で、もう1台は護衛が乗る馬車で、もう1台はバス、トイレ、キッチンがついている馬車である。これだと休憩時にトイレを探さなくてもいいし、食事の準備もできる。さらに、野営した時用に、バストイレ付きのミニハウスを庭に作ることにした。これば部材を工房に注文した。後は部材が出来てきたらて、組み立てて、マジックバッグの中に入れておくだけである。これは野営する時用である。
馬車を注文した後、面白いことを思いついた。1階のスペースはジオラマを作ることにしたが、あれから全然進んでいない。そこで、空いたスペースに馬車を止めて、馬車の窓から1階の空いたスペースの壁を白く塗って、そこに遠くの景色を投影することにした。
10cm真四角のガラス板はある。そこに風景を描けばいい。しかし、前世でもガラスに絵を描いたことはない。前世の様な便利な絵の具がこの世界にあるとも限らない。しかし、確か中世ヨーロッパではステンドグラスだっけ、ガラスに絵を描いていたはずである。
そこで、出入りの商人にガラスに絵を描いている工房がないか聞いてもらった。するとある工房を紹介された。工房に行って、作業を見せてもらおうとしたら、特殊な技術なので見せられないとのことであった。仕方がないので、ガラス板とあらかじめ紙に書いた風景画を渡して、ガラス板に絵を描いてもらうことにした。1枚に描くのに銀貨2枚とのことなのでガラス板3枚と銀貨6枚を渡した。出来たら持ってきてくれるそうである。
3日ほどしたら、工房の親方が男爵邸にやってきた。
「依頼のあった絵が描けました」
「どれ」
「………」
「うん、うまく書けている」
絵を描いたガラス板を手に取って、透かして見る。何とか光は透るようである。これなら白い壁に風景を投影できそうである。
「気に入ってもらったようでよかった。今回のガラス板はいつも使っているガラス板と違って、透明度も高く、それにまっ平なので絵を描きやすかった。出来れば仕入れ先を教えてほしい」
「仕入れ先は、〇〇商会だ」
このようにして遠くの風景を描いたガラス板を手に入れた。そして、明かりの魔道具と組み合わせて投影機を作った。一階の窓を閉めて暗くして、投影機のスイッチを入れて、白い壁に遠くの風景を映し出した。微妙にピントがずれているが、細かいことは気にしないことにした。こういうのは雰囲気が大事である。
どうせならと思い、今ある男爵家の馬車をここに持ってきた。そして、窓から壁に移した風景が一番よく見えるところに置いた。馬車に乗り込んでみると
「おお。絶景かな」
思わず声が出る。
そんなことをしていると、マリーとアライダ達がやってきた。
「ツェーザル様、何をしているのですか」
「ガラスに絵をかいてもらって、明かりの魔道具と組み合わせてその絵を壁に投影したのさ。これで、馬車に乗るとまるで旅行に行ったような気分になれる」
「たしかに、そうですが、楽しいのですか」
「お前たちも馬車に乗ってみろ、俺の気持ちが分かるから」
俺がそう言うとアライダ達も馬車に乗ってきた。
「確かに、少しはそんな雰囲気になりますね」
「だろう、いいもんだろ。おい、マリー、そのガラス板を違うガラス板に変えてみてくれ。絵を描いたガラス板は3枚あるから」
ガラス板が変わると、今度は畑の風景である。郊外の道を行く感じである。さらにガラス板を変えると、今度は町中の風景に切り替わる。今度は王都の中のつもりである。
「いいもんだろう。これから、この風景を描いたガラス板をいっぱい揃えて、いつでも旅行気分を味わうようにするつもりだ。早く学院を卒業して旅行に行きたいな」
「私たちも付いて行きますから」
「そうだな、みんなで知らない街を旅してみよう」
こうしてツェーザル様たちはまだ見ぬ異国に思いをはせるのであった。




