59.新学期(3年生に進級)
9月になった。新学期である。学年が1つ進んで3年生になった。教室に入ると、もう俺とアライダたちとの婚約のことは知れ渡っているようで、
マルテが
「おめでとう、ツェーザル。ついに観念したか」
と言われた。
「そりゃそうだよな、いくら女嫌いのツェーザルでもあれだけ付きまとわれれば、諦めるよな」
なんかすごいことを言われた。
その点ベルンハルトは大人である。
「おめでとう、ツェーザル、お幸せに。俺も早く婚約者を見つけないと」
「ありがとう、お前も早く婚約者が決まることを祈っているよ」
ここは大人の会話である。
マルテのように「お前もあの3人娘と婚約したら」などと言おうものなら喧嘩である。ここは自重、自重である。
一方アライダたち女子はかなり僻みっぽく言われているようである。
「アライダは正妻だからいいけど、ほかの7人は側室でしょ。私だったら嫁にいかないわよ」
「でも、ツェーザル様は顔はいいし、お金持ちだし、側室でも一生安泰よ。そんなこと言っていると貴方売れ残るわよ」
言う方も言う方なら、返す方も返す方である。婚約のお祝いを言ったはずが完全に喧嘩である。
3年生に進級したので、また履修届を出さないといけない。しかし、今回はアライダ達婚約者がいる。相談して同じ科目を履修することにした。
しかし、運動系が不得意のツェーザルは選べる科目が少ない。結局、2年生で履修した科目の上級を履修することにした。すなわち、国語、数学、外国語、魔法理論、法律、貴族の常識、薬学、魔法陣、領地経営、商業取引の上級である。
アライダたちは魔法実技も受けるそうである。だいぶ誘われたが、旅に出て、魔獣が出たらアライダ達が倒してくれと言ったら残念がられた。
それを聞いていたマルテ達男子が
「お前、女子に守ってもらって、どうするのだ少しは鍛えたら」
と言われたので
「俺が魔獣に勝てると思うか。俺は生活魔法しか使えないのだぞ。生活魔法で魔獣が倒せると思うか」
「無理だろうな」
「それに俺は剣術は男子で最下位、体力は女子にも負けるのだぞ。おとなしく隅っこで隠れている方がいいと思わないか」
「そうだな、下手にしゃしゃり出てこられると邪魔になるな」
「だろう、俺は他人に迷惑はかけないのだ」
「自慢することじゃないだろう」
「いいのか、アライダ、こんな軟弱な男で」
「それが、ツェーザル様です。ツェーザル様の命は私たちが守ります」
「ありがとうアライダ頼りにしている」
「でも逃げ足は大事だから、乗馬は中級を受ける。アライダたちはどうする」
「もちろん受けます。ツェーザル様と同じ科目を履修するのは私たちの基本ですから」
このようにして2年の時と変わり映えのしない科目を履修することになった。
違うのは、今まではアライダ達とは教室では一定の距離を保って座っていたのだが、今はすぐ隣に座っていることである。
女子が隣に居ると、心がウキウキしてくる。これが婚約者だと思うとなお一層である。彼女たちも同様のようである。お互いに見つめ合って別の世界に浸っていたら、わざと先生が間に立って、咳払いをしていった。
「嫌味な先生、あの先生いまだに独身だから私たちがうらやましいのよ」
情報通のカーチャ男爵令嬢の言葉である。婚約者が8人もいると色々な情報が入ってくるようである。特に教師が独身かそうでないかは最大の関心事のようである。
そんなことを言っていたら、あてられた
「ツェーザル君、これの答えは」
俺をあてるなよ、嫌みを言ったのはカーチャだぞ、あてるならカーチャを当てるのが筋という物である。まさか「当てつけにあてないでください」とも言えずに、
「答えは、金貨3枚と銀貨2枚です」
「正解」
数学は、教師の言葉を聞いていなくても得意である。これぐらいの問題すぐにわかる。
学園でも甘い時間が過ぎていく、そして学院が終わると帰宅であるが、男爵邸は学院のすぐ近く徒歩5分である。隣はアライダ達の男爵邸、男爵邸の改造工事はまだ済んでいないが、これが終わると、もう新婚生活が始まったようなものである。行き帰りも一緒、帰ってからも何かにつけてアライダたちがやって来る。夕食は一緒に取ることが多くなった。
男爵邸帰っても、学院に行っても甘い時間が過ぎっていく。これを人は堕落と言うのだろうか。あまり難しいことは考えないことにした。




