53.軍艦の視察(試乗)
次の日の朝早く伯爵邸を出て、予定通り先ず造船所に行った。前回は小船だったが、今回は軍艦、大きさが違う竜骨も大きさがかなり大きい。するとアンゼルム様が
「この竜骨は、かなり大きいな、こんな大きいもの要るのかね」
すると、伯爵が
「魔道エンジンをつけた船はスピードが出ます。具体的どれくらいかというとよくわからないのですが船にかかる力も大きくなると思います。それで竜骨を大きくしております。既存の軍艦は、あとで補強したのですが、そうすると船底が手狭になりました。それで新しく作る軍艦は竜骨を大きくしております」
「魔道エンジンとは、そのような物なのか」
「はい、かなりの高出力です」
「スクリューと舵もここで作った物はすぐに壊れてしまうので、ツェーザル君のところで、強化魔法をかけてもらっています」
「そうなのか、それほどの力がかかるのか」
今までに、届いた魔道エンジンはすべて軍艦に設置済みということで、魔道エンジンをつけてある軍艦を視察することになった。港に行くと軍艦が泊まっていた。大きさ長さが約40m幅が約10m、深さで4.5mぐらいの軍艦である。このあたりでは標準的な大きさだそうだ。しかし、俺は長さが50mぐらいの軍艦を想定して魔道エンジンを作ったので、これでは出力が大きすぎたのかもしれない。
「すいません。私の作った魔道エンジンはこれより、もう少し大きい軍艦を想定していたので、この魔道エンジンでは出力が大きすぎたのかもしれません」
「いや、別に出力が大きければ魔道エンジンを全開にしなければいいだけのこと。それは問題ない。戦闘時は負荷がかかり過ぎることがあるので、少し余裕がある方がいい。それはいいのだが、問題は、スピードが出るため、船の操船が難しいということだ。また、止まるためまでの距離も長くなる。また、スピードを出し過ぎると、船体がもつのかといった問題もある。そこで、既存の軍艦はすべて船体を補強した。そのため内部がかなり手狭になった。それで、これから作る軍艦は部材を太くしている」
実際に試乗することになった。伯爵の案内で、ブルヘンジュ1号艦と名付けられた軍艦に乗船した。全員が乗船すると、船員が錨を上げた。そして魔道エンジンを始動した。すると、静かに船は岸壁を離れた。
「風も無いのに船が動いた」
アンゼルム様とアポロニア様が感嘆の声を上げる。
そのまま船は港を出て行く。しだいに、岸が遠くなる。
「ずいぶん早いように思うが、はい、たぶん時速10ノット、時速18km~19kmくらい出ていると思います」
「時速10ノット。今までの帆船の2倍じゃないか。このスピードが風向きに関係なく出せるか」
「はい、今はこのスピードにとどめています。魔道エンジンはまだずいぶん余裕がありそうですが、これより早くすると操船が大変なのと、船が壊れないかといった問題があるので、このスピードにとどめています。ツェーザル君が昨年作った小船ですと、時速20ノット、時速37kmぐらいは出ます」
「時速20ノット、今までの船の4倍ではないか。こんな船で艦隊を作ったら、我国の海軍は無敵になるのではないか」
「はい、そこで今は、艦の強度を一回り強くして、それにこの魔道エンジンを搭載して、もう少し速度を出してみる予定です。先ほどの造船所でお見せした船が、その試験艦です。これで問題なければ、今後はこの艦を量産して、これからの我軍の主力艦にする予定です」
「一度、魔道エンジンを全開にすることはできませんか」
「艦が壊れる恐れがありますが、いいのですか」
「それなら、少しずつ速度を上げることはできませんか」
「徐々になら抵抗も少ないと思うので、やってみます」
伯爵はそういうと、船の艦長に、速度を上げるように命じた。すると、少しづつ船の速度が上がった。船自体は問題ないようである。
「今はどれくらいの速度だ」
「今は時速15ノット、時速約28kmです」
「これくらいなら船は問題ないようだが」
「そうですね、これくらいなら問題ないと思います。それで普段は時速10ノット、戦闘時は時速15ノットにする予定です」
「そうか。それにしても魔道エンジンとはすごいものだな。我軍の艦戦すべてに魔道エンジンが設置されれば我軍の海軍は無敵だな」
「そうですが、船の強度をどれくらいにしたらいいのかといった問題もありますので、もう少し時間がかかるかと思います」
こうして、魔道エンジンを搭載した軍艦の試乗は終わった。




