52.軍艦の視察(ライラント王国海軍の技術担当官とともに)
学院生活はとりとめもなく過ぎていった。そして学年末試験も終わった。成績は30位と少し落ちた。もっと落ちると思っていたが、国語、数学、外国語、第二外国語はスキルのこともあり満点であった。薬学、魔法陣、魔法理論、商業取引についても俺が色々やらかしているので最高点をもらえた。それ以外の科目は手を抜いたこともあって、平均点レベルである。その結果の順位である。妥当なところである。
そして、学年末休暇になったのだが、今回の休暇はすでに予定が入っている。なんでも、俺が作っている魔道エンジンを搭載した船が多数就航しており、その評価を行うとのことである。そのため、王国海軍省から担当官がブルヘンジュ市へ赴くので、それに同行するようにとの、依頼書が届いたのである。エンジンを改良する必要がある場合、船の状態を知る必要があることから、その試験の状況に立ち会うようとのことである。
「俺学生なんだけど」
と言ったのだが、
「男爵位を拝命しているのだから、貴族の義務である」
と言われた。
こういうところで、貴族の義務を持ち出されると弱い。
前回は商隊に同行ということで、行く先々で観光していたが、今回は仕事ということで、宿へ泊るだけで観光はない。そのため早い、馬車で4日である。この馬車は俺が作った揺れが少なくなる車輪がついているようで快適である。向かいに座っているのは、海軍省の技術担当官、伯爵家の次男だそうだ名前はアンゼルム。40過ぎのいかついおっさんである。そして、もう一人は、副官のアポロニア様、こちらは元平民とのこと。学院を優秀な成績で卒業した才媛とのこと。20代後半のきれいな人である。ただし、学院卒業後貴族の嫁になったので、子供が3人いるそうである。
「この馬車の改造もツェーザル君が考えたんだって。すごい物だね。揺れがほとんどない。馬車の旅と聞いて、副官のアポロニアだけを行かせようかと思ったのだけど、国王からお前も行けと言われてしまったのだよ。しかし、こんな快適ならば馬車の旅もありだな」
「アンゼルム様、私だけを行かせるなんて、ひどいですよ。ツェーザル君も行くのですから」
「そうだな、学生が行くのに海軍省の技術担当官が行かないわけにいかないな」
「今度、見に行く船の魔道エンジンとはどのような物かね」
「魔道エンジンは、魔石に蓄えた魔力でスクリューと言って船の下につけた羽根車を回すものです。それで、風がなくても船を動かすことが出来ます」
「小舟で作った時はうまくいきました。ただ、今回は軍艦に付けたというので、うまく動くのかは、正直言って私も不安です。一応軍艦の規模は長さ幅高さともに小舟の3倍と聞いたので、魔道エンジンの出力は小舟につけた物の30倍ぐらいの出力が出るものを作ったつもりですが、そうなると魔力の消費量が半端ないと思うので、そのあたりの経済性がどうなのか少し不安ではありますが」
「お金のことを言っていては強い軍艦は出来ないよ。そのあたりは気にしなくてよい」
「そうですか、それはありがとうございます」
「ところで、その魔道エンジンとはどのような物かね」
「魔力で軸を回転させています。私も偶然できたので、どのようなものと言われても説明が出来ません。ブルヘンジュ伯爵が鑑定士に鑑定させたが、よくわからないそうです。だから今は魔法陣の改良は出来ません。同じ物を作るだけです」
「それは残念だね。その魔法陣を私も見てみたいな」
「父からは、『国王から秘密厳守』と言われたとのことなので、見るのであれば直接国王陛下から見せてもらってください」
「私にも見せられないと」
「はい、王命ですから」
「そうか、それは残念だな、帰って国王陛下から見せてもらうことにしよう」
「そうしてください」
そのような旅をしてブルヘンジュ市に着いた。行くとそのまま伯爵邸に入った。行くと伯爵夫妻とアンネリースが出迎えてくれた。今回マルテは同行していない。これは仕事である。王都を出るときも内密と言うことでマルテにも伝えていない。しかし、伯爵夫人の目が前回よりも輝いて見えるのは気のせいであろうか。
伯爵様の歓迎のあいさつの後、次の日の日程の確認が行われた。朝一で伯爵邸を出て、魔道エンジンを取り付けている造船所へ行く、そして魔道エンジンの簡単な説明を受けた後、今度は軍艦の停泊している港へ行って、実際に魔道エンジンを付けた軍艦の効果を体験する。そのあと港に戻って、船の艦長や船員との懇談、問題点の洗い出し。このような日程となった。次の日の予定は、明日の状況を見て、また考えることになった。
夕食の席で、伯爵夫人が
「ツェーザル様は婚約者は決まったのですか」
「まだです。学院を卒業してから考えることにしています。」
前回と同様の答えをする。
「アンネリースは、どうかと思っているのですが」
「私は学院を卒業したら諸国を巡る旅に出る予定なので、そのあたりちょっと無理です」
「そうなの、残念ねえ」
その後もいろいろ言われたが、今回も固く固辞した。




