50.学院際
タコの定期購入のめどが立ったので、男爵邸ではタコ料理が頻繁に出るようになった。最初これにはメイドも護衛も顔を背けていたが、公爵家から派遣された護衛以外は奴隷である。ツェーザルの命令には絶対服従である。ご主人様が食べろと言えば食べざるを得ない。
最初はすごく嫌がっていたが、最近は慣れたようで、唐揚げにしたり、タコ焼きにしたり後は野菜と一緒に煮物にしたりして美味しくいただいている。ただし、公爵家から派遣された護衛は相変わらずタコ料理は食べない。すると食べる料理がないようであるが、こちらも意地になっているので、さらに1品を作るようなことはしない。
ほんとうは、醤油や酢があればもっとレパートリーが広がるのだが、いかんせんそのような物はない。とりあえずはこれで我慢と言ったところである。そして、出来たタコ料理は当然昼の弁当のおかずになるのである。マジックバッグに入れておけばアツアツの出来立てを食べることが出来る。
このタコ料理の弁当は最近は昼休みの日課になってきた。もう俺だけでなく王都の商会にもタコや魚を販売している関係上、昼食を我慢する必要はないはずであるが、タコのおいしさを分かったようでエラも俺と一緒に昼食を頂くようになった。すると、これに危機感を抱いたのが例の肉食7人組である。なぜかこの昼食を一緒に食べるようになった。そこで、俺はメイドに命じて彼女たちの弁当も作るようにしたのだが、おかずにタコが入っていると、それだけよけて食べている。
「しかし、お前たちも器用だな。タコだけよけて食べるのだから」
「ツェーザル様はよくこんな気持ちの悪い物を食べられますね」
「そんなことはないぞ、これはおいしいぞ、なあ、エラ」
「そうですね、私も最初は気持ち悪いと思っていましたが、食べてみると案外おいしくて、今では好きになりました。それに私が家族にタコは美味しいと伝えたところ、家族もタコを食べるようになって、家族の食糧事情も改善したと聞いています」
「だとよ、アライダ達もタコを食べろや」
「そのうちに」
「そうか」
「ところで、今度の学院際、ツェーザル様は何をするのですか」
「俺は、剣術は最下位、魔術も生活魔法、出来るのは料理くらいだな。だから去年と同じ屋台のおでん屋をしようと思っている」
「昨年、学院際でツェーザル様の店を探したのだが、見つからなかったのですが、どこにいたのですか」
「俺は、校舎裏にいた。あまり人の来ないところだ」
「今年は絶対に行きますからね」
「ああ、わかった。今年はタコ料理もメニューに加えようと思っているから。期待してくれ。最高のタコ料理をふるまうことにしようと思っている」
「タコ料理出すのですか」
「出す。去年は姉さんに止められて出せなかったから、今年はそのリベンジだ」
学院際の日になった。昨年と同じなので、準備に手間はかからなかった。屋台やイスやテーブルそれと食器や箸も残っている。俺のマジックバッグから出すだけである。今年は昨年と違うところ、それはメニューを一覧表にして張り出したことである。その中には堂々とタコ料理も載っている。
店を出していると、クラスの連中がやって来た。ベルンハルトが
「どうだ、流行っているか」
「まあまあだな、俺は流行らなくても、問題ない。学院際に参加したという単なる実績作りだ」
「そうか、それで問題のタコ料理はどれだ」
「タコ料理を食べてくれるのか」
「食べるというか。まあ食べるのだな」
「そうか、お前もタコのおいしさが分かったのか。同志だな」
「いや、そういう訳じゃないのだが」
すると後ろから
「はっきり言えよベルンハルト、剣術の試合で俺に負けたら、タコ料理食べると言ったじゃないか」
「わかったよ。おい、ツェーザル様、タコ料理2人前だ」
「おまえ、2人前も食べるのか」
「いや、俺は1人前だ、その1人前は後ろのマルテが食べる」
「えー。なんでだよ、俺はお前との試合に勝ったぞ」
「つべこべ言わずに食え、金は俺が払うから。他にも食いたいやつがいたら言え、俺のおごりだ」
そうしたら、誰も名乗りを上げない。
するとベルンハルトが切れて
「タコ料理7人前だ」
「ありがとうございます。タコ料理7人前」
それを聞いて、いつものベルンハルト狙いの令嬢たちが慌てた。
「ベルンハルト様、そのタコ料理って私達も食べるのですか」
「そうだ、ツェーザルに言わせると美味しいらしいからな」
その後、タコ料理を7人に配ったのだが、マルテは食べていたが、令嬢は無理やり飲み込んでいた。ツェーザルのタコ料理は罰ゲームに使われたようである。
その後、アライダ達もやってきたが、タコ料理は見ただけで違うものを注文していた。結局タコ料理を本当に味わって食べていたのはエラだけであった。




