49.新学期(タコの定期購入)
期末休暇も終わり今日から新学期である。あれから俺はダンジョンで、訓練を行った。そしてやっと2階層へ行けるようになった。もうゴブリンやコボルトのスピードにも付いて行けるようになった。ただ、まだ結界は必要であるが。そして、少しは筋肉も付いたようである。体も少し引き締まったように思う。
たまに来るアライダたちが
「引き締まった体のツェーザル様も素敵」
と言っていた。
昼行燈の効果が薄れている。というか、これだけやらかすともうもう効かないようである。それで、この学期はとにかくおとなしくすることにした。趣味に生きるのである。ジオラマ造りとダンジョンがよい。これが今の俺の趣味である。あと学院も1年半、それが終われば俺は諸国巡りの旅に出る。それまでの我慢である。
春になって、気候が良くなってくると、とにかく眠い。特に興味のない授業は眠い。前世の記憶でも授業は眠かったように思う。ひたすら、昼行燈を効かして貝になって寝る。いい生活である。スローライフはこのように日々の生活の中にある物だと思う。
俺の1日のスケジュールは、朝遅く起きる。メイドの作った朝食を食べる。学院まで徒歩5分。学院に行くと誰にも気づかれずに椅子に座る。そして誰にも気づかれずに授業を受ける。昼食も誰にも気づかれずに1人裏庭で食べる。食堂に行くと肉食女子に見つかるに恐れがあるので、要注意である。だから誰もいない裏庭でマジックバッグに入れておいた弁当を1人で食べる。そして、誰にも気づかれずに教室に戻って授業を受ける。授業が終わると、誰にも気づかれずに男爵邸に帰る。これも徒歩5分である。後は夕食を食べて寝る。そして1日が終わる。優雅な生活である。空気になっていると言ってもいい。これも昼行燈の成果である。
今日も裏庭へ行ったのだが、1人の少女がいた。何をするでもなくただぼんやりして、ため息をついている。俺は昼食の弁当を食べだしたのだが、昼行燈を効かしていても匂いは分かるようで、少女のお腹の虫が鳴った。1人だけ食べるのは悪いような気がして昼行燈を弱めた。
すると少女が俺を認識できたようである。
「あれ、今まで誰もいなかったように思うのですが、私の音聞こえました」
と言って、顔を赤らめている。
「うん聞こえた。お腹が減っているのなら、これ食べるか」
そう言って、俺の弁当のおかずを見せた。これは以前釣ったタコの唐揚げである。誰も食べないが、マジックバッグに死蔵するのもよくないと思い、最近はあのタコを料理して弁当のおかずにしているのである。
「これは何ですか、とても変わった物のように思うのですが」
「これか、これはタコだ。誰も食べないので、俺が弁当のおかずにして食べている」
「そうなのですか。タコって言うとあのぐにゃぐにゃした生き物ですよね。気持ち悪くないのですか」
「俺は何とも思わない。それにとてもおいしいぞ」
「ほんとに何ともないのですか。」
「ないぞ、食べてみればわかる」
そう言って、タコを少し分けてあげた。少女は恐る恐るタコを食べて、目の色が変わった。
「おいしい」
「だろう。美味しいって言っているのに誰も食べないのだ」
「私はエラ・ハーフェン、男爵家の長女。Cクラスの2年生」
「俺は、ツェーザル・ネルデンベルク、公爵家の三男で、昨年男爵位を拝命した。Aクラスの2年生」
「あのポーションを作って叙爵したツェーザル様」
「そうだよ」
「そんな人がなぜ裏庭で1人で昼食を食べているのですか」
「食堂に行くと女子が話しかけて来るので、ここで昼食を食べている。それにタコ料理も食べたいからな。タコ料理を見せるとまた追い出されるから」
「追い出されたのですか」
「そうだ伯爵邸でも追い出されたし、公爵邸でも追い出された」
「それで、エラは何故、ここで、1人でいたのだ」
「私の領地、昨年は不作で、お金がないんです。それで昼食が食べられなくて」
「そうか、俺のタコ料理を食べてくれるのなら、明日から弁当を2人分作って来るがどうする」
「いいんですか。わたしお金ないですよ」
「いらないよ、ただしおかずにはタコ料理が入っているがな」
「いいです、今食べたらおいしかったから」
「そうか、タコ仲間がいてうれしい。そうだ、もしお前の領地でタコが取れるのなら、俺が定期的に買うがどうする」
「私の領地にも海はあるのでタコは取れると思いますが、ツェーザル様が食べる分だけだと、そんなに多くは要らないですよね。それに領地からここまでは遠いので腐ってしまいますから無理だと思います」
「そうか、タコは取れたらゆでて、マジックバッグを貸し出すので、それに入れて、送ってもらえればいい。金額はそちらで決めてもらえればいい。手数料込みでかまわないぞ。それにタコ以外の魚も買うぞ、余れば王都の商会に売ってもいいし、そうすればお前の昼食代ぐらいにはなるだろう」
「いいのですか」
「構わない、俺はいろいろな魔道具を作ってお金があるから、タコを買うぐらいのお金は十分ある」
「いいのなら、父に頼んでみます」
ということでツェーザルは、弁当のおかずにすることで、少なくなってきたタコを定期的に購入することができるようになったのである。マジックバッグは魚を王都の商会にも売るというので5つほど貸し出すことにした。




