5.学院生活
ツェーザルの学院生活が始まった。授業については問題ない。必須科目の国語、数学、外国語、魔法理論、ここまではスキルを使えば完璧である。法律、貴族の常識についても初級なのでついて行ける。魔法実技は、込める魔力の手加減さえ間違わなければ問題ない。あまり優秀と思われたくないので、込める魔力を少なくして、入学試験の時のように試験官をびっくりさせるようなことはしない。
あとは剣術実技であるが、これは初めてなので、中々骨が折れる。これまでさぼって来たのが悔やまれる。やっと付いて行っているというのが現状である。これについては貴族の男子は優秀である、幼い頃から剣術の家庭教師に師事してきただけはある。正直言ってクラスの男子では俺が一番弱い。でも初級、授業さえさぼらなければ合格点がもらえる。中級と上級は選択科目である。初級さえ終わればもう剣術はしなくてもいい。そう考えると気が楽である。
選択科目の薬学については、他の生徒は薬草の見分けに苦労しているようであるが、俺は鑑定を用いればすぐに薬草の見分けが出来る。それからポーションを作るのにも、有り余る魔力を込めれば初級中級上級ポーションだって瞬時にそれも大量にできてしまう。むろんそんなことはしない、誰かの目にでも止まれば将来の俺のスローライフが無くなる。
他の生徒は、魔力量が少ないようでポーションは大量に作れない。しかし俺の魔力量はほぼ無尽蔵である。ポーションを作るぐらいで苦労したりはしない。俺が問題にしているのは、この授業を取っているのが、女子が多いということだ。近く女子が来ようものなら緊張して手が止まる。すると女子が、「ツェーザル君て、ウブなんだあ」とか言って冷やかしてくる。「昼行燈の効果が切れているのでは」とひやひやしているのに、冷やかしなんかで近くに来ないでほしい。
選択科目の魔法陣についても、鑑定を使えば、ほぼ完ぺきに内容が分かる。それに前世の知識を応用すれば、講師の先生が分からないようなこともわかる。しかし、これも封印である。そんなことをしたら俺の将来のスローライフが無くなる。なんせ俺はヒーローに憧れて、挫折した人間。もう無駄なことはしない。
でも、一度LED電球もどきを作ったら、その明るさに驚かれた。この魔法陣は登録すべきと言われて、そのまま登録された。何でも新しい魔法陣を作ると報奨金がもらえるそうである。しかし、講師の先生も「この魔法陣の内容は分からない」と言っていた。そこで俺は「たまたまできただけ、俺も中身は分からない」と言ってごまかした。危ない危ない将来の俺のスローライフが無くなる。もう新しい魔法陣は作らないと誓った。結局新しい魔法陣を作ったというだけで、単位がもらえた。
選択科目の商業取引については、俺の将来の職業と思って真剣である。ただ、前世の記憶を加味していくと、内容は理解できるのだが、貴族に甘く平民に厳しいように思う。これは将来商人になった時に要注意である。貴族を怒らせると商売が一からひっくり返る。
最後の選択科目である地理だが、「この世界を見てみたい」と思っている俺には新鮮に映る。ただ、この世界はこれだけだろうかと思ってしまう。中世ヨーロッパでは新大陸はまだ発見されていなかったのだろうか。これは将来諸国を巡る時に確認だなと思った。
このような感じで、ツェーザルは自分では目立たないようにしているつもりであるが、成績がいいということで、少し目立ってきた。しかし、それが気が付くと忘れてしまっている。
それに、聞かれると、誰でも丁寧教えてくれる。教え方がうまいというのもクラスでの評価である。しかし、気が付くと忘れている。
友達は、下級貴族の男子が数人話をするだけで上級の貴族とは付き合おうとしない。また、女子は近くに来ると緊張して手が止まるようで、絶対に自分から話しかけるようなことはしない。
とにかく、ツェーザルはよく見ると顔はいいし、成績もいい、何事もそつなくこなす。それなのに、目立たない。不思議な子として認識され始めた。




