4.入学式
今日は学院の入学式が行われる。本当は寮に入りたかったのだが、すねかじりの身では許してもらえず、姉と一緒に毎日馬車で通うことになった。姉と一緒に馬車から降りると、近くの生徒が話しかけてくる。
「おはようございます。ミヒャエラ様」
「おはよう」
公爵の人間は返事する時も片言でいいようである。
「そちらの僕は?」
「弟のツェーザル。今年入学したの。今日から一緒に通うことになったのよ」
「ミヒャエラ様に弟がいたのですか」
「人見知りで、滅多に家から出ないから、あまり知られていないようだけど、れっきとした公爵家の人間よ」
昼行燈をこれでもかというほど効かせているが、姉のオーラの前ではかすんでしまう。俺が周りから認識されてしまう。何とかせねば。俺の平穏な学園生活のためにも昼行燈のレベルアップが必要である。心は焦るが、妙案は浮かんでこない。やっと、校舎に入って解放された。
その後、「新入生は講堂に集まるように」と言われ講堂に行った。席順はとりあえず入学時の受験番号順とのこと。Aクラスのところに行った。俺は平民枠で受けているから、後ろ方に並んだ。すると平民の女の子が2人いた。番号を言うと俺が彼女たちの前だった。2人の女子は2人とも商家の娘とのこと。名前はアンナとリズとのこと。俺も家名は言わずにツェーザルとだけ名乗った。
講堂への入場はAクラスが一番最後だった。1クラスは50人で6クラスある。1学年は全体で300人とのこと。学校全体では3学年で900人とのこと。並ぶ場所が後ろの方というのは気楽である。でも昼行燈を全力で効かせないと、こう人が多いと気が気でない。
昼行燈に集中していたので、式の次第はほとんど聞いていない。校長の挨拶、来賓の挨拶、そんなのどうでもいい。脂汗が出てくる。青い顔をしているのが、わかるようで
「どうしたの、ツェーザル君、気分が悪いの」
「大丈夫、ちょっと緊張しただけ」
「そう」
そんな心配そうな顔をしないでよ。見つめられると昼行燈の効果が薄れる。
そうしていたら、姉が演壇に上がってきた。姉は生徒会長だったのだ。生徒会長の挨拶、いやな予感がする。
「皆さんご入学おめでとう。………」
あとの言葉は聞いていない。そんな余裕はない。その後、新入生代表の挨拶もあったようだが、聞いている余裕はなかった。このようにしてツェーザルの入学式は終わった。
その後教室に入った。担任の先生は子爵家の三女マリアナさんとのこと。順番に自己紹介をすることになった。俺の順番になった。
「俺はツェーザル、今は貴族ですが、学園を卒業したら、家を出る予定なので、気楽に接してください」
「家名は」
「将来は平民になるので、聞かないでほしい」
すると後ろのアンナから
「ツェーザル様って、貴族だったの」
「今は貴族だけど将来は平民だから、様は要らないよ」
「そうなの」
「それでいい」
その後、学院生活での注意事項や、履修する授業のカリュキラムの説明があった。学院生活では貴族も平民も平等とのことであった。入学手続きの時の思い出すと「ほんとかな」と思ってしまう。カリュキラムは、この学院では卒業に必要な必須科目の講義もあるが、それ以外は基本選択制で学生は将来の自分を見つめてそれに必要な講義を受講し、試験を受けて単位を取得する。ただし、単位数が足らないと進級出来ないそうである。
入学試験の科目、国語、数学、魔法理論、外国語、法律、貴族の常識、魔法実技、剣術実技は必須科目とのこと。ただし、必須科目は初級のみとのこと。選択科目は、薬学、魔法陣、領地経営、商業取引、地理、歴史、第二外国語、乗馬とのこと。これに2年3年になると、薬学の中級と上級、魔法陣の中級と上級、魔法理論の中級と上級、法律の中級と上級、魔法実技の中級と上級、剣術の中級と上級、領地経営の中級と上級が加わるとのことある。
俺は、選択科目については薬学と魔法陣、商業取引、地理を選択した。薬学を選択したのはクラスでは女子が多いようだ。反対に魔法陣は男子が多いようだ。貴族家を継ぐ予定の子は領地経営を選択したようだ。逆に家を継ぐ予定のない子は商業取引を選択したようだ。
このようにして、ツェーザルの学院生活が始まった。授業については問題ないと思われるが、問題は昼行燈の効果をいかに効かすかである。普通の学生は授業に集中して単位を取得するのであるが、ツェーザルの場合、とにかく授業に集中してはいけないのである。矛盾を抱えたツェーザルの学院生活の始まりである。




