43.学友の男爵邸訪問
ツェーザルが男爵邸に移って、そこから通うようになると、その情報はすぐに肉食系女子7人の耳に入った。とにかくツェーザルがどんな生活をしているのか、男爵邸がどうなっているのか、興味深々である。
「ツェーザル様はもう男爵邸に住んでいるのですよね」
「そうだよ。先日からやっと両親の了解が得られて男爵邸に住んでいる。ただし、親の監視付きだけどな」
「一度男爵邸を見せてもらってもいいですか。私たちも、ツェーザル様の隣の私たちの男爵邸に住みたいと言ったのですが、女だけでは危険だと言って、許してもらえないのですよ」
「だろうな。俺も護衛に元冒険者の奴隷を9人購入したのだけど、結局公爵家の従士を2人付けられた」
「9人も護衛をつけてもだめだったのですか。それなら私たちの親がダメと言うのも当然ですよね。それで、放課後帰りによってもいいですか」
「いいよ」
これを聞いていたクラスの男子5人も放課後男爵邸を見に行くことになった。前回の期末休暇の時にブルヘンジュ市旅行に行ったメンバーである。
男爵邸を見学に来たメンバーはまず門をくぐって驚いた。敷地が広いのである。ただ、その広い敷地はまだほとんど手つかずで隅っこには野菜畑がある。
「ツェーザル、この庭、このままなのか」
「今のところ何かするつもりはない。メイドとして購入した奴隷には見苦しくないようにしろとだけ言ってある」
「そうなのか。なんかもったいないな。何か植えたら」
「そのうち何か考える」
続いて建物の外観を見て
「ここ、男爵邸だよな。商店じゃないよな」
「ちがうよ。ここは男爵邸だよ。でも、ここは以前は商店だったのだよ。だから、外観は商店に見える」
「いいのか。仮りにも貴族の邸宅だぞ」
「俺は将来商人になって、諸国を巡るのが夢だから問題ない。それに、1階はガラス工房にした」
すると、アンナとリズが食いついた。
「また、新しいものを作っているのですか」
「ガラス板を作っている。販売は公爵家と取引のある商会に委託している」
「そうなのですか。もう決まっているのですか」
少し残念そうである。
玄関を入って、商品の陳列棚を見るとガラス板がいっぱい並んでいる。
「ガラス板以外の物は作らないのですか」
「奴隷に作らせているので、難しいものは作れない」
すると商品を手にもって、
「こんなきれいなガラス板を奴隷が作れるのですか」
「その辺は秘密だ」
しばらくすると、マリーがやってきた。
「ご主人様、お帰りですか。そちらの皆さんは」
「こいつらは俺のクラスの連中だ。男爵邸を見たいというので連れてきた」
「そうですか。皆さんお初にお目にかかります。このガラス工房を任せられているマリーです」
「マリーさんは奴隷なんですよね」
「はい」
「ツェーザルから、いやらしいことをされたりしていませんよね」
「俺は、何もしていない。それにマリーには子供が3人いる」
「そうですか、子持ちですか。それはよかった」
肉食獣がほっとして、胸をなでおろしている。
「ガラス工房の中を見せてもらうことはできるのですか」
「それは出来ない。工房は俺の秘密だ」
「つまんないの」
「とにかく1階は工房、男爵邸は2階だ。2階に来てくれ」
2階にも玄関がある。そこを入るとリビング兼食堂、広い空間がある。
「広い。これが居間」
「そう、ここがリビング。奴隷が23人、公爵家の護衛が2人、そして俺、合計で26人がここに住んでいる。これぐらいないと入りきらない」
「ちょっと待って、奴隷と一緒に住んでいるの」
「そうだよ。俺1人で住むには広すぎる」
ソファーに座るとメイドがやって来た。
「そちらの皆さんは」
「俺の友達、男爵邸を案内することになった」
「お飲み物は」
「麦茶を出してくれ。学生なのでアルコールはダメだぞ」
「わかりました」
そう言って、メイドはキッチンに行った。そしてマジックバッグの中から食器を取り出して、テーブルに並べると、マジックバッグから出した麦茶を注ぎ始めた。この様子を見ていたマルテが
「食器棚も食材も何もないと思っていたら、すべてマジックバッグの中なのか。それに、ここは厨房も兼ねているのか」
「そうだ、すべてマジックバッグの中に入れてある。それに厨房とリビングが一緒だと、作った物がすぐに食べられる。便利だろう」
「それはそうだが、こんな造りは初めてだ」
「ツェーザル様、その細い管のようなものは何ですか」
「これは、水道と言って、ひねると水が出る。だからいつでも水が使える。鍋に入れて、横の魔道コンロにかけるとすぐにお湯が飲める。それに、使った食器は、軽く洗って、その横の箱の中に入れると、クリーンの魔法がかかるので、すぐにきれいになる。このキッチンは、俺が1人でも暮らせるようにかなり凝った造りにした」
「確かに便利ですね」
つぎはトイレを見てくれ。
「このトイレは水を流すと汚物がすぐに地下のタンクまで流れていく。だから臭いが残らない」
「つぎは洗面所。ここにも先ほどの水道が設置してあるので、蛇口をひねるとすぐに水が出る。また、これはクリーンの魔道具がセットしてあるので、洗濯物を入れるとすぐにきれいになる」
「ここが浴室。この赤い色のついた蛇口をひねるとお湯が出る。この青い色のついた蛇口をひねると水が出る」
この説明を聞いていた面々はそのうちに質問する気力が失せてしまった。とにかく便利なのである。開いた口がふさがらないと言った状況である。
「とにかくこの男爵邸は最初俺が1人で暮らすことを念頭に作ったので、魔道具を多用して、人の手間を省くように造ってある。その後、奴隷を購入したが、手間をかけなくてもいいという考え方は変わっていない。だから、メイドもすごく楽そうである」
このようにして、ツェーザルの男爵邸の説明は終了した。これを聞いた面々は自分たちもこの様な館に住みたいと思った。
「ツェーザル様、隣の私たちの館も同じように改造してくれませんか。お金は払いますので」
「してもいいが、時間がかかるぞ」
「かまいません」
「わかった。つぎの期末休暇の時にする。それまでにどのように改造したいか間取りとか図面とかを作っておいてくれ」
この安請け合いが後でとんでもないことになるのであるが、今はまだそれを知らないツェーザルであった。




