42.ガラス板の販売
お披露目のパーティーも終わったので、男爵邸に移ることにした。両親にそのことを言うと、
「護衛は何人になった」
「元冒険者の奴隷が9人になりました」
「念のため、公爵家の護衛を2人派遣する」
結局監視付きとなった。中々すんなり1人暮らしは認めてもらえそうにない。
ついでなので、アセビ商会のガラス板のことについて、相談した。
「男爵邸の1階は元商店だったので、そこでガラス板を作っています。ガラスの材料の購入と出来たガラス板の販売を公爵家の出入りの商会に頼んでもいいですか」
「また、何か始めたのか」
「はい、1階を遊ばせておくのはもったいないと思い、ガラス板の工房を作りました。職人はいなかったので、奴隷を購入して作らせています。最近製品が出来てきたので、これを売ってもらおうと思っています」
「わかった。近々男爵邸へ行くように言っておく」
「ありがとうございます」
次の日は、朝公爵邸を出て、学院に行って、帰りは男爵邸に帰った。すると護衛の騎士が2人来ていた。名前はヤンスとマンネである。公爵邸では堅物で通っている。父も面倒な人間を派遣してきた。こいつらは真面目なので、俺のことを逐一父に報告するに違いない。
奴隷たちを集めて、
「今日から俺はここに住むことにした。ここにいるヤンスとマンネは父が派遣した俺の護衛だ。この2人は強いので、元冒険者はこの2人に鍛えてもらうように」
それからマリーを呼んで
「俺にかかる費用とヤンスとマンネにかかる費用は男爵家の支出から払うので、工房からの支出には含めないようにしてほしい」
「食事は別にするのですか」
「そんなことはしない。便宜上分けるだけだ。後でかかった費用を男爵家から支払うことにする」
「そうすると、私たちが男爵邸で寝泊まりしているのはどうなるのですか」
「そうか、確かに従業員もそうだが、商会自体も男爵邸を間借りしている」
「それなら、アセビ商会は男爵邸の建物を借りているので、その賃貸料と男爵家の人間の生活に掛かる費用を相殺することにしてはどうですか」
「それならそうするか」
何かよくわからないが、とにかくアセビ商会は男爵家の建物を借りているので、その分で、男爵家の人間の費用を負担することになった。
ヤンネとマンネには1部屋づつ与えた。彼らは男爵邸の快適さに感動した。また、食事を奴隷と一緒に取るということにも驚いた。
次の日学院から帰ると、公爵家と取引がある商会の会長が来ていた。明かりの魔道具を取り扱っている商会である。アセビ商会のことなのでマリーを同席させた。
「ご無沙汰しております。ツェーザル様。おかげさまで明かりの魔道具の売れ行きは順調です。私どももずいぶん儲けさせていただいております」
「そうか。それはよかった」
「今回、公爵様からツェーザル様がガラス板の生産を始めたとお聞きしたのですが」
「男爵邸の1階が空いていたので、ガラス板の工房を作った。商会名はアセビ商会にした。商業ギルドにも登録したし、口座も作った。俺は忙しいので、工房の仕事はマリーに任せている」
「奴隷に、商会を任せているのですか」
「俺は秘密にしていることが多いので、奴隷なら秘密を洩らさないと考えた」
「確かに、秘密保持を命令すれば逆らえませんから」
「わかりました。実際の取引が始まりましたら、マリーさんと話をします。しかしそれは決められたことをするだけで、ツェーザル様と私どもで決まった内容を履行するだけです」
「それでいい。今回貴殿の商会からはガラスの材料を仕入れたい。材料の価格としてはこれくらいでいいか」
「妥当な金額ですね。それで結構です」
「次に、出来たガラス板の価格だが、明かりの魔道具と同様、売値の3割を販売手数料、税金を1割、残りをアセビ商会でいいか」
「今回公爵家は絡むのですか」
「絡まない」
「なら、販売手数料を4割にしてもらわないと、苦情が来た時に対応できません」
「わかった」
「これがガラス板だが、これだと販売価格はいくらぐらいだ」
「これはまた、平滑な、そうとう腕のいい職人さんを集めたようですね。これだと1個銀貨2枚ぐらいですかね。ただ、最初は銀貨3枚として売れ行きを見て金額を決めるのがいいでしょう」
「最初から銀貨2枚ではダメなのか」
「安いと転売されます。公爵家が絡めば、そのようなことはありませんが、男爵家では侮られます」
「わかった。販売価格については任せる。アセビ商会としては販売価格の5割を受け取る。それでいいのだな」
「はいそうです。それでは契約書を作ります」
そうやって、契約書を交わした。今回販売価格が銀貨2枚の場合、
材料代(ガラス材料) 銅貨5枚
出来たガラス板 銀貨1枚
である。
なお、魔道具を用いているので、1日にできるガラス板の枚数は、奴隷がガラス板に桟木をつける作業によって決まる。現在のところ、奴隷7人で1日500個ほどできている。つまり1日の売り上げが金貨50枚である。材料代を引くと金貨47枚と銀貨5枚である。マリーは横で聞いていて青くなった。
「材料の搬入と製品の受け取りはマジックバッグを貸し出すので、マジックバッグで行ってほしい。そうすると目立たなくていい。販売価格から材料代を引いた金額を商業ギルドの口座に入金してほしい。口座名はアセビ商会だ」
「わかりました。そのようにします」
「では、最初の納品だ。このマジックバッグにガラス板が500枚入っている」
「わかりました。ガラスの材料は明日マジックバッグに入れて持ってきます。そして商業ギルドの口座に金貨47枚と銀貨5枚を入金します。もし、ガラス板が銀貨2枚より高く売れた場合は追加の金額を商業ギルドの口座に入金します」
「そうしてくれ」
こうして商会長は帰っていった。こうしてアセビ商会も軌道に乗り始めたのである。なお、桟木代がガラス板1枚につき銅貨5枚かかるので1日の売り上げから材料代を引いた金額は金貨45枚である。思ったよりガラス板が高く売れそうなので、ツェーザルは気がよくなって
「おい、元冒険者、市場へ行って美味しい物を買ってこい」
と言って、その日は豪勢な食事にした。




