41.姉への贈り物と叙爵の披露パーティー
それからしばらくは男爵邸のことはほっておいた。アセビ工房についての作業は止まったままである。ガラスに桟木をつけていたら、陳列棚がいっぱいになったそうである。学院の帰りに男爵邸によったらマリーが、
「ガラスを並べる場所が無くなった。することがない」
「それなら、マジックバッグを渡すので、それに入れておけ、そのマジックバッグはマリーが管理して、お金も入れておけ。このマジックバッグに使用者制限をつけるので、マリーと俺以外は使えない」
そうして、使用者制限を付けたマジックバッグを渡した。
姉ミヒャエラはこの秋に結婚する。相手は伯爵家の長男である。式が近づいていることもあり、両親も忙しそうである。姉への贈り物を用意しないといけないと思い、ポーチ型のマジックバッグを贈ることにした。
執事に布を用意してもらって、朝から縫物である。色はあまり目立たない方がいいと思って紺色にした。大きさは前世の肩掛け式スマホ用のポーチぐらいの大きさにした。これだと小物入れぐらいの感覚である。両端に紐をつけて、ついでに入り口はチャックにした。チャックはこの世界にあるのだろうか。わからないが、とにかく前世のポーチのようにしたかったので、土魔法でチャックを作った。それを、ポーチの入り口に縫い付けた。
なんか俺すごく器用である。前世だと縫物なんてできなかったのに、これって転生者得点だろうか。よくわからない。魔法にしても魔力制御が随分うまくなったし、ずいぶん能力的にレベルアップしているみたいだ。
姉は俺がマジックバッグを作れることを知っているはずなので、ここは自重しなくてもいいと思い、容量は馬車5台分ぐらいにした。これだと姉が嫁にいっても自分の物は大概入れられるだろう。それに使用者制限をつけて姉以外は使えないようにした。
夕方できたポーチ型のマジックバッグを姉のところへ持っていった。
「姉さん結婚おめでとう。これ僕からの贈り物。ポーチ型のマジックバッグ。容量は馬車5台分ぐらい、使用者制限を付けてあるので、姉さん以外は使えない」
「ありがとう。これ、ツェーザルが作ったの」
「朝から作り始めて今できたところ。それから、容量は公爵家のマジックバッグより大きいから使うときは気をつけてね」
「公爵家のマジックバッグの容量はどれくらい」
「以前試したときは馬車に積める量の半分も入らなかった」
「このマジックバッグは公爵家のマジックバッグの10倍以上の容量があるということ」
「そうなるね。だから容量がばれないようにしてね」
「わかった」
「それから、このマジックバッグの入り口はどうやって開けるの」
「こうやって、引っ張ると入り口が空く。閉めるときは反対側に引っ張ると入り口が閉じる」
「へー。便利ね。これ、ツェーザルが考えたの」
「そう」
「また、新しいものを作ったのね。あなた、気をつけなさいよ。有能だと思われると周りから狙われるから。特に女子には気を付けるのよ」
「肝に銘じます」
それから数日して姉は嫁いでいった。
姉の結婚式が終わって両親も余裕が出たみたいで、俺達の叙爵に伴う披露パーティーの準備に取りかかった。披露パーティーはこの公爵邸で一緒に叙爵した8家合同で行うことになった。今日はその1回目の会合である。案内状は叙爵後の打ち合わせで、公爵家が原案を作って各家に見てもらって、その後発送した。ほとんどの人が出席するそうである。
式の次第は
まず、今回叙爵した8人が挨拶をする。その際家名とか新たに構えた男爵邸などの近況報告をする。
次に、来賓の挨拶をもらう。今回王家からは皇太后様が出席するとの返事をもらっているので、皇太后様にしてもらうことになった。来賓の挨拶を皇太后さまにお願いに行くのはツェーザルと公爵が行くことになった。
そのあとは自由に歓談。
きりのいいところでお開き
お客様への記念品は、今回叙爵の理由になった新しいポーションを送ってはどうかという意見が出た。しかし、結核にかかっていな人にとっては無用の長物ということで、ポション瓶の置物を王都の工房に依頼することになった。
式の準備も整い、皇太后様の了解ももらえて、今日はそのお披露目のパーティーである。朝からおめかしして、8人でお客さんを出迎えるべく並んだ。そうしたらアライダが
「なんか、私たちツェーザル様の妻たちのようね」
心臓に悪いことを言いやがる。それでなくても昼行燈全開で余裕が無いのに、なんかダメ押しのような言葉である。
「いいのよ、私たち7人を妻にしても。ただし、私が正妻ね。ツェーザル様は有能だから側室が6人いても問題ないと思うけど」
「俺は学院を卒業したら、商人になって、諸国を巡るのが夢なので、そういう話は今はしなでくれ」
しかし、今回は中々引かない。
「そう、だったら、私もツェーザル様に付いて行こうかな」
もう招待客の顔を見ている余裕がない。
そうしたら、
「今回叙爵した8人は壇上に集まって」
という声が聞こえた。
その後は式次第に沿って、今回叙爵した8人の挨拶である。しかし、声が上ずって、何を言っているのか自分でもわからない。頭の中はもう真っ白である。その後の皇太后さまの挨拶も覚えていない。招待客が帰った後、やっと自分を取り戻せた。
後で父や母からは
「ツェーザルはすごいと思っていたが、叙爵の披露パーティーの様子を見ると、まだ子供だなと思った」
とさんざん言われた。
「まあ、若いのだし、学生だから初々しくてよかった」
とも言われた。




