35.ポーションの販売
王宮での発表があったので、新しいポーションの販売を開始することにした。このポーションには難聴になるという欠点もあることから、販売に当たっては、「このポーションを飲んで、難聴などの副作用が現れても文句は言いません」という誓約書を取って販売することになった。また商人に売る場合は、実際にポーションを飲む人の誓約書付きで売ることになった。
販売にかなりの制限を付けたにもかかわらず、このポーションの売れ行きは順調であった。最初にストックしてあったポーション2000本はすぐに使い果たした。現在工場は薬師を追加で雇って、フル操業である。俺も空魔石に魔力を充填して増産に答えている。
製造が追いつかないことから、取り扱っている商会は貴族の強引な注文に大変なようである。「製造には公爵家も関与している」と言ってやっと耐えているようである。最初はポーションの問題を指摘する苦情を心配していたが、今は注文を断るのに公爵家の名前を出している状況である。
当然一緒にポーションを製造した女学生に入るお金もすごいことになっている。なんせ、ポーション1本売れると1人当たり金貨0.46枚が入ってくるのである。もう受け取るお金は金貨900枚ぐらいになる。もうお金持ちなのだから俺を狙う必要もないと思うのであるが、アライダは相変わらず、
「ツェーザル様最高、一生ついて行きます」
と言っている。アンナとリズも同様のようである。
国内の貴族や平民に売るのは問題ないのであるが、問題は外国からの注文である。そう結核は何もこの国だけではないのである。当然外国からの注文も入る。これについてはトラブルを避けるため、取引のある外国の商会を通じて販売することにした。当然誓約書を取ることも同様である。したがって、販売に日数がかかる。急ぎの場合は直接アンナとリズの商会に注文が入ることもあった。これについては製品だけ先に渡して、後で委託した商会を通してもらうようにした。
このように大量の注文が入ると、闇でこのポーションを作る者が現れてきた。材料はダンジョンに生えている薬草である。アンナとリタの商会の冒険者の跡をつけて行けばどの薬草を採取しているかはわかる。あとはポーションにするだけである。ただ、一度に作れるポーションの数は薬師の魔力量にもよるので限られているが、しかし1本作れば金貨10枚である。
ただ知られていなかったが、このポーションを作るには安定した魔力を一定の割合で注ぐ必要があったのである。また魔力の波長も微妙にこの製品の品質に影響したのである。これは最初に製作したツェーザルもその後工房で製造した薬師も気が付かなかったのである。しかし、工房ではツェーザルが魔力棒を開発し、製造工程がすべてこの魔力棒に置き換わったことで解決されていたのである。そのため、気づかなかったのである。
しかし、闇で製造している者は、粗悪品でも出荷するようになった。そうしないと歩留まりが低すぎて、とても採算が合わないのである。そうアンナとリタの商会の商品に似せて。そうしたら、粗悪品を買った客からアンナとリタの商会に苦情が入ることになった。製品を投与した人からすべて誓約書を取っているので、「誓約書にない人には売ったことがない」と言ってこの苦情を退けた。そこで始めてこの客は偽物をつかまされたことを知った。
しかし、注文に製造が追いつかない状況は改善する必要がある。もう季節は夏である。結核は冬になると患者が急増する。そのため、アンナとリタの商会では工房を拡張し、さらに薬師と冒険者を雇って増産体制を整えることにした。
この影響をもろに受けたのが、ツェーザルである。空魔石に魔力充填する個数が増えたのである。一度、市販の魔石を購入してそれで対応してもらおうとしたのだが、うまくいかなかったのである。
このポーションにはツェーザルの魔力が不可欠そんな暗黙の了解が工房の薬師との間にできてしまった。
「やり過ぎた、俺のスローライフが遠のいて行く」悲嘆にくれるツェーザルであった。




