32.ポーションの生産と変わらない日々
新しいポーションの効果がはっきりした。そして、ポーションの商業ギルドへの登録も終わった。このポーションをどうするか。俺たちは学生なので、ポーション作りに専念するわけにはいかない。そこで、今回もアンナとリズの商会に丸投げすることにした。
みんなでアンナの商会に行った。リズの商会長にも来てもらった。こういう場合貴族は便利である。商会長を呼びつけてもすぐに来てくれる。
「このたび俺たち8人で新しいポーションを作った。このポーションの効果は、先日教会の施療院で行った結果では結核に効果があるそうである。商業ギルドへの登録も済ませた。これをお前たちの商会で生産してほしい」
「新しいポーションというと、もし苦情が来た時に対応できない。ポーションの製造に公爵家が関与してくれるのなら、製造自体はする」
すべて丸投げしようとしたら、難しいことを言う。後ろの女学生を見るが、何も言わない。
「わかったよ。父を説得する」
その後の話は、公爵家が関与するという条件付きで話が進められた。
決まったことはアンナとリズの商会で王都に工房を作る。その工房で薬師を雇って、生産に当たらせる。材料の入手は、冒険者を専属で雇って、ダンジョンで薬草の採取をさせる。他のダンジョンにもこのような薬草がないかの調査も並行して進める。
問題の販売価格であるが、上級ポーションというと物にもよるが平均的には金貨5から6枚ぐらいとのことである。全く新しいポーションなのでそれ以上の価格が妥当とのことであった。商会長からは「あまり安いと注文に製造が追いつかない」と言われたので、とりあえず、金貨10枚とすることになった。教会へは別途ツェーザルが作って届けることになった。
販売価格から、販売手数料を3割、税金を1割として、製品価格の6割から材料費と工場での経費を除いた残りが公爵家とこのポーションの登録者の取り分となった。
帰って父に相談すると、
「公爵家の関与については問題ない。公爵家としては公爵家の取り分は3割、ツェーザル達の取り分は7割でいい。ただし、ポーションの販売は今話が王宮にいっているのなら、その結果を見てからにするように」
と言われた。
そこで他の学生にも、父の了解が得られたことと販売は王宮の話が終わってからにすることを伝えた。
「まだ材料費と工場の経費が不明なので、実際の金額は確定しないが、何もしなくてもこのポーションが売れるたびに、お金が入ってくる」
と言うと他の女学生は大喜びであった。
その後、王都に商会が工房を構え、薬師と冒険者を雇って、生産が開始された。商会長の話では
「王宮で発表があると生産が追い付かないので、あらかじめ生産して在庫をかかえる必要がある」
とのことであった。
ここで、問題が発生した。薬師の有する魔力量ではポーションの生産が多くて1日3本ぐらいなのである。これについて、俺たち8人は再度呼ばれた。工房の薬師が
「このポーションは製造に大量の魔力を必要とします。私の魔力量では1日に3本が限度です」
すると、商会長が
「これでは多分注文に追い付かないと思います。ツェーザル様はこれをダンジョンで何本作ったのですか」
「あの時は確か午前に300本午後に300本計600本作った。俺は全然魔力量とかは気にならなかったぞ」
「ツェーザル様が製造に関与することはできませんか」
「いやだ、俺にそんな時間はない」
しばらく沈黙の時間が流れた。ツェーザルが
「俺が、あらかじめ空魔石に魔力を注入しておいて、その魔石の魔力を使って製造することはできないか。例えば、なべをかき回す棒のところに魔石をセットする。そして、その棒でかき回すときに魔力が流れるようにする。例えばこのような物」
そう言って、俺は近くにあった棒にマジックバッグから出した魔石をつけて、スイッチを押すとその棒の先端から魔力が流れるようにした。これを見ていたその場にいた全員があっけにとられた。すると薬師が
「それなら、製造できると思います」
試しに、この棒を使って新しいポーションを製造してみた。すると順調に製造できるようであった。一度に25本も製造できた。空になった魔石にその場で魔力を充填すると再度あっけにとられた。
その後、再度経費の試算がなされた。ポーションは月に500本作るとした。
材料費は冒険者を通年雇用としたため、冒険者の3人の費用月金貨6枚となった。新たに魔石を用いるため、その魔石に魔力を充填する費用を魔石1個に付き金貨10枚とした。魔石1個でポーションが25本製造できるので、1か月に魔石20個必要とする。この費用が月金貨200枚となる。それ以外の材料を金貨14枚とした。合計で金貨220枚
工場の経費は工房を構えるのに要した費用金貨1200枚を1年で元を取るとして月金貨100枚。それに薬師の経費が薬師3人で月金貨6枚となる。また、高価なものを製造するため、護衛と警備員を雇うことになった。この経費が月金貨10枚となる。また、工場で経理を行う人間を1人雇うことになった。この経費が月金貨3枚となる。それ以外の費用として金貨11枚を計上して、合計で金貨130枚となる。
ポーション500本の売り上げは金貨5000枚である。これから販売経費3割と税金1割と材料費を除くと金貨2650枚となった。公爵家は3割なので、金貨795枚、学生は7割なので金貨1855枚となった。8人で割ると金貨約230枚となる。
金貨230枚と聞いて他の女学生は卒倒してしまった。ちんちゃな男爵家の収入より多いとのことであった。
なお、冒険者の調査では同様の薬草は他のダンジョンにも見られるとのことであった。
ポーションの生産のことに気を取られていたら、学年末試験になった。もう7月である。今回は自重してということで魔力実技は魔力少な目で合格点をもらえた。ただし剣術は出席点で何とか合格と言ってもらえた。もう剣術はやらなくていいと思うとすごく気が楽になった。それ以外の科目は前回と同様にしたつもりであったが、魔法陣と薬学は最高点を与えると言われた。
総合順位は前回と同じ20位であった。また、ポーション組の女学生は薬学の点数が効いて軒並み順位を上げたとのことであった。
そして学年末休暇になった。
ミヒャエラ姉さんが学院を卒業した。卒業式と、その後のパーティーは滞りなく終わった。別段とりとめもなく淡々と日々が進んでいく。




