31.ポーションの効果
教会でポーションの臨床試験をしてから、しばらく時間が経った。俺はいつものように昼行燈全開である。もう空気になっている。時々、一緒にポーションを作った女学生が
「あのポーション効くといいね」
と言ってくる。思いが強いと昼行燈の効果が薄いようである。これは要改善である。
マルテ達男子学生はもうダンジョンに俺を誘わなくなった。誘っても途中でリタイアすると分かったからである。
相変わらず俺は剣術の授業ではお荷物である。しかし、お荷物でも参加しないと単位がもえらえない。単位がもらえないと卒業できない。剣術実技は参加点だけで単位をもらうつもりである。俺が公爵令息と分かってからは剣術実技の先生も何も言わなくなった。素振りをしているだけでもいいようである。剣術の相手がいないときは寄子の下級貴族の令息に無理やり付き合わせている。向こうは嫌がっているようであるが、俺も単位がかかっているので必死である。「少々の怪我でも姉に知られなければ問題ない」と言ってある。そう言わないと相手をしてくれない。
魔術実技の授業は、込める魔力を制限すれば他の学生と同じか少し弱いぐらいの魔術を行使できる。生活魔法というとほとんどすべての魔術が行使できるようで、
「ツェーザル様は不思議ですね、生活魔法と言うともう少し威力が小さいはずなのに、普通の魔法とあまり変わらない。それに火どころか水や土魔法までできる」
あかん。頑張り過ぎた。これからはもう少し込める魔力を少なくしよう。最近では魔力の制御もだいぶうまくなった。魔法の威力の加減もこれまでよりずいぶんうまくなった。もう微妙な調整もできる。俺って天才。
それから、薬学は臨床試験の結果はまだ出ていないが、新しいポーションを作ったということだけで単位がもらえるそうだ。これには一緒にポーションを作った女学生も大喜びである。「あの時ツェーザル様と一緒にポーションを作って大正解」と言っている。
また、魔法陣はまた新しい魔法陣(馬車の揺れを少なくする魔法陣)を作ったということで単位がもらえることになった。
このようにツェーザルは自分では空気になっているつもりであるが、傍から見るとかなり目立っているようである。
その様な本人に言わせると平穏な日々が続いていた時、薬学の先生が教室にやってきた。昼休みに新しいポーションを作った学生全員で部屋に来るようにとのことである。臨床試験の結果が出たようである。
薬学の先生の部屋へ行くと
「今日集まってもらったのは他でもない。あの新しいポーションの臨床試験の結果が出た。結果から言うと、あのポーションは非常によく効いたそうである。
あの時、ポーションを飲ませた10人の患者のうち、5人が病気が治って退院したそうである。また、残りの5人のうち、3人は病気が改善している。また、残りの2人についても、普通だったらもう死んでいるのにいまだに生きているそうである。それで、この患者に追加のポーションを飲ませたいとのことであるが、ポーションはまだあるか」
「ポーションはあの日600本作ったので、まだあります。追加はどれくらい必要ですか」
「10本もあればいいと思う。それから、このことは王宮にも連絡しようと思う。
諸君らも知っていると思うけど、あの患者の病気は結核だ。結核は不治の病と言われており、治癒魔法が効かない。また、これまでのポーションでは初期の患者には効いても、あれだけ病気が進むともうお手上げだ。もう死を待つだけである。それが、劇的に改善したのである。画期的なことだ」
隣の女学生たちは大喜びであるが、俺としては、「なんかことが大げさになったな、たぶんこれから、面倒なことが起きるのだろうな。俺のスローライフはどうなるのだろう」と思った。
その後、教会への追加の10本と王宮への報告用の100本を薬学の先生に預けて今日のところはお開きとなった。
学院の帰りに他の女学生とともに商業ギルドによって新しいポーションの登録をした。
公爵邸に帰って、父と母と姉に今日の結果を報告した。父からは
「ひょっとすると、今回新しいポーションを作った学生全員に爵位が与えられるかもしれない」
「爵位って、たかが、ポーション作っただけですよ」
「しかし、結核で苦しんでいる貴族は多い。その貴族の病気が治るのだよ。毎年何人の貴族が結核で亡くなっていると思う」
「そうですね、毎年多くの人が結核で亡くなっているのですね。領地とかももらえるのですかね」
「今回のポーションを作った学生は何人だ」
「私を入れると8人です」
「そうなると領地はなしで、法衣貴族になるだろう。たぶん男爵位かな」
「法衣貴族って」
「法衣貴族とは領地を持たない貴族だ。国から毎年給金が出る」
「何もしなくても給金が出るのですか」
「何もしなくてもいいわけではないが、1年1回会議に出るだけでいい」
「それなら、いいですけど」
「不服そうだな」
「そんなことありません。名誉なことです」
「あぶない。あぶない。俺の将来のスローライフのために、もう何もしないぞ」そう誓うツェーザルであった。




