30.ポーションの臨床試験
次の日学院に行って、昼休みに、昨日一緒にポーション作りをした女子と一緒に薬学の先生のところに行った。
「昨日、ダンジョンに行ったら、新しい薬草が生えていたので、みんなで一緒にポーションにしてみました。何に効くかは分かりませんが、一度見てもらえますか。そして、もし新しいポーションなら一緒に作ったみんなの名前で登録したいのですが」
「どれどれ、変わった色をしているね」
「はいなんか、不思議な色です。香りもなんか今までのポーションとは違っています」
「わかった、これは、少し預からせてくれ」
「どうするのですか」
「まず、学院の鑑定のできる先生に見てもらって、毒でなければ、教会の施療院に持って行って、知っているシスターに助からないような患者で試してみる」
今、いきなり、ものすごいことを言ったような気がした。しかし、考えてみれば、学生が作ったような薬である。これを飲んで病気を治そうとする者がいるとは思わない。若し貴族に使おうものなら、後でどんな仕返しがあるかわからない。そう考えれば、教会の施療院にいるような人間なら、貧しいからたとえ死んだとしても何も言わないだろう。
放課後帰ろうとしたら、先ほどの薬学の先生に呼び止められた。
「学院の鑑定のできる先生に診てもらったら、『毒ではない。しかし、まったく新しい物なので、何に効くかはわからない』とのことであった」
「これから教会に行くので、君達も一緒に来てほしい。君達も一度教会の施療院を見ておいた方がいいだろう」
何となく面倒ごとのような気もしたが、ポーションを作ったのは俺達だし、効果を調べる事を依頼したのも俺たちなので、付いて行くことにした。姉に「これから教会へ行く」と言うと、姉も付いて行くことになった。
ポーションを一緒に作った他の女子学生も一緒に行くことになった。教会へ行くと、先生が、
「うちの学院の学生が新しいポーションを作ったのですが、試してみてもらえますか。それから、これはいつもの私が作ったポーションです」
「これはこれは、いつもいつもありがとうございます」
その後、先生は患者がいる部屋に案内された。俺たちも付いて行った。みると、もう駄目だと思うような気力ない患者がベッドの上に横たわっている。あまりの惨状に目をそむけたくなる。
前世の記憶ではあれはたぶん結核だと思う。結核は抗生物質が発見されるまでは不治の病と言われていたはずである。体力があれば、かかっても発病することはないが、幼児や他の病気で弱っている人間の場合、この菌に侵されると病気を発病し、死に至るはずである。
シスターが、患者の体を起こして、
「これは新しく作られたポーションです。あなたに神のご加護があればこの病にも効くはずです。気を強く持ってください。病に打ち勝って家に帰る。その強い思いがあれば、神はあなたの願いをかなえてくれるはずです」
そう言って、俺たちが作ったポーションを飲ませていく。
「こんな末期的な患者に飲ませてどこまで効くのかな」と思うが、しかし、今はもう神にすがるしか術のない患者に希望を与えるだけでも大事なことのような気がした。
それから、先生を含めた俺たちは教会の執務室に案内された。そこで、教会の司祭と話をすることになった。
「これはこれは学院の先生にはいつもポーションを届けてくださってありがとうございます。今日は新しいポーションとかで、ありがとうございます」
「今回のポーションはいつも私が作る物とは違って、学生が作った物なので、どれくらい効くかは未知数なんです」
「それは、構いません。もう神に召されるのを待つだけの患者に希望を与えるだけでも大事なこと。こんなことを言っては作ってくださった学生さんに失礼ですが、効かなくても神もお許しになるでしょう」
「そう言ってもらえると助かります」
薬学の先生は定期的にポーションを作って教会に届けていたようである。そのため、俺たちの新しいポーションもすんなり受け入れてもらえたようである。しかし、あんな患者を見てしまうと、金もうけとか言っていた俺達が恥ずかしくなる。
帰りの道で、しんみりした気持ちいるとアライダが
「でも、お金も大事。私たち下級貴族はお金がないと、何も出来ない。それこそ食べる物からパーティーで着るドレスだって買えない。
今回作ったあの新しいポーションの効果が確かめられて、効く病気があれば私たちはそんな思いをしなくてもよくなる。
それに私たちは悪いことをしているわけではない。死んでいく患者の命を救っているのだから、恥ずべきことではないわ。むしろ誇っていいことよ」
確かにそうである。今までの不治の病を救うことが出来たら画期的なことである。物事は肯定的に考えることにした。
公爵邸に帰って、父に報告すると、
「新しいポーションが効くといいね」
と言われた。
姉は
「ツェーザルが作ったのだから、絶対に効くはずよ」
と言っている。




