29.ダンジョン
学院祭が終わって、また平穏な日々が戻ってきた。俺は昼行燈全開で空気になっている。校内では将来を見据えて、領地経営に有用な科目に全力を注ぐ者、あるいは騎士を目指して剣術や馬術に全力を注ぐ者、あるいは商人や薬師などの科目に必死になる者、あるいは、そんな有能な人物を捕まえるべく必死に色目を使う者などさまざまである。
ツェーザルの場合、多分今稼働している工場の収益だけで十分暮らしていけるだろう。だからすごく気が楽である。このまま空気になって、学院を卒業したら、勝手気ままに旅をする。俺、人生勝ち組。うーん、いい響き。密かにほくそ笑むツェーザルであった。
そんな中、またうざいのがやってきた。マルテが
「今度の週末ダンジョンに行こう」
「いやだ」
「なぜだ、冒険者登録したのに、クエスト受けないと、資格はく奪されるぞ」
「クエストなら、薬草採取で十分だろう」
「あんなのつまんない」
「どうしてだ、薬草採取も大事なクエストだぞ。だって、薬草がなければポーションが作れない」
「俺、薬草の見分け方がよくわからない。すべて雑草に見える」
「俺は、剣術は男子で最下位、体力は女子にも負けるのだぞ。ダンジョンに行って、何をするというのだ」
不毛な言い合いをしていたらマルテが
「今度の週末ダンジョンに行くもの集まれ」
とかってに言い出した。
そうしたら、ベルンハルトも行くと言い出した。そうなると彼を狙う女子も行くと言い出した。
俺が逃げようとするとベルンハルトが
「ツェーザルは言い出しっぺなんだから参加ね」
こうして俺は強制参加となった。俺が抜けるとマジックバッグが無くなるので、荷物が重いとのこと。どうも最初からそれが目当てであったみたいである。うまく乗せられた。休みの日の朝一番にダンジョンの前で待ち合わせとなった。男子5人、女子10人、女子の比率が高いのはベルンハルトとツェーザルが参加しているからである。
父に週末にダンジョンに行く事を伝えた。すると
「ツェーザルはスキルは生活魔法だったな。攻撃系のスキルは持っていないよな」
「持っていません」
「剣術は出来るのか」
「出来ません」
「それで、ダンジョンへ行って何をするのだ」
「成り行きと言うか、ベルンハルトが行くと言うので、強制参加になりました」
「そうか。行くのは決定事項か。それなら護衛を2人連れて行け」
「わかりました」
よかった。父も俺が戦えないことを知っているようだ。休みの日にダンジョンの前に行った。護衛と一緒ということで公爵家の馬車で送ってもらった。歩いて行けば、体を鍛えられるって、ツェーザルはそんなことはしない。とにかく、体力は女子より劣っていても構わないと思っているのである。はなから鍛える気などないのである。
ダンジョンの前に行くと、みんながそろっていた。
「ツェーザル、馬車で来てどうするのだ。歩いてこないと鍛錬にならないじゃないか」
「俺は、参加するだけだ。体を鍛える気はない」
「まあいい、それでマジックバッグは持ってきたのだろうな」
「持ってきた。入れる物があれば出してもらえれば入れるぞ」
すると、このやり取りを聞いていたベルンハルトが
「マジックバッグって、そんな貴重なもの持ってきたのか」
「そうだ、このマジックバッグは俺専用だ。お前のところにもあるだろう」
「うちにもあるが、公爵家で3つしかないので、俺は使わしてもらえない」
「そうか、それは大変だな」
他人事である。
その後、受付で名前を書いてダンジョンに入った。当然俺は一番後である。誰かの前に入れば、体力のない俺はお邪魔虫になる。階段を下りて行くと広い平原に出た。よくわからない。階段の下が平原になっていて、空まである。どうも途中で、異空間に転移していたようである。そうと考えないと辻褄が合わない。しかし、異世界なのだから辻褄などどうでもいいのかな、深く考えないことにしよう。
しばらく進むと、草が生えていた。草かなと思ったら、カビだった。鑑定してみると「カビ放線菌」よくわからないが、とにかく変わった物がある。「これでポーションを作ったら新しいポーションが出来るのでは、そして、ポーションを作れば、みんなに付いて行かなくてもいい」と思った。そこで、
「俺は、ここに残る。これは新しい薬草みたいだ。これでポーションを作ったら新しいポーションが出来るかもしれない」
「そんなことしたら、マジックバッグに入れた物はどうするのだ」
「今ここで出すから、各自持って行け。俺は先にはいかない。ここでポーションを作ったら帰る」
そうしたら、ベルンハルトが
「ツェーザルが残るというなら、それでいいのではないか。俺は俺の荷物は自分で持っているのだし。ツェーザルのマジックバッグを期待するお前たちの方が悪いと思う」
さすが学年1位、ベルンハルトの言葉は効くようである。銘銘が俺がマジックバッグから出した荷物を持ってくれた。
そうしたら、女子が
「ツェーザル様、これが新しい薬草で、これを用いると新しいポーションが出来るというのは本当ですか」
「ああ、新しい薬草なのは間違いない。これを用いれば新しいポーションが出来るのも間違いない。唯、何に効くかは分からない」
「でも、新しいポーション作ったら、それ登録されると私たちにも金が入るのですよね」
「効く病気があればの話だ。何の病気にも効かなかったら、お金は入ってこないぞ」
「でも、やってみる価値はありそうですね」
「お前たちも一緒にするか」
「はい、やります」
ということで、ベルンハスト狙いの女子3人を除いて、女子7人はここに残って、俺と一緒にポーション作りをすることになった。残りの男子はブウブウ言いながら先へ進んでいった。公爵家の護衛2人もここに残った。
その後、先ほどの草の様なカビを採取して、俺がマジックバッグから出した道具を用いて女子7人と一緒にポーション作りをした。みんなで一緒というとことで、材料採取もすぐできる。そして材料の加工もすぐである。俺は鍋に入れた材料をただかき回すだけ、ただ注ぐ魔力は半端ない。一度にポーションを100本ほど作った。時間が余ったので、再度作った。それでも時間が余ったので、再度作った。計300本作って昼にした。
「昼食はおれが用意する」と言ってマジックバッグから死蔵していたタコのお吸い物を出したら、アンナとリズが騒ぎ出した。
「それ、ブルヘンジュ伯爵領へ行ったときのタコ料理ですよね」
「そうだが、これ美味しいぞ」
「それを食べるのはツェーザル様だけにしてください。私は食べません」
「そんな事言わずに、これ美味しいぞ。それにこれを釣ったのリズだぞ。釣った本人が食わないでどうするのだ」
「だって、捨てようとしたら、ツェーザル様が捨てるなと言ったから」
他の女子の顔を見てみるが、横を向いている。ついでに護衛も我関せずといった顔をしている。
「わかったよ、これは俺だけの料理とする」
そう言って、もう一つ土鍋を出してほし肉のスープを作った。
「これなら食べられるだろう。タコは入っていない。ほし肉だ」
中々タコ料理は売れそうもない。今度は貧民街に行って、無料スープと言って、内容は言わずに振舞うか。しかし、ばれた時は怖いしな。このタコ料理を消化するのは難しそうである。
午後も同様にしてポーション作りをした。結局ポーションは600本作った。作ったポーションはすべて俺のマジックバッグに収納した。明日学院の先生に見てもらうことになった。夕方になったので、帰ろうとしたら、先に行った面々が帰って来た。そして、一緒にダンジョンを出た。
いつも「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」をお読みいただいてありがとうございます。
「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」を投稿しました。3299文字で完結の短編です。よろしくお願いします。
「転生者とバグでない異世界人の物語」と「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」も引き続きよろしくお願いします。




